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「失敗学講演の旅」
第1回:新潟製紙業を見る(北越製紙新潟工場)
第44回全国紙パルプ安全衛生大会が新潟市,ホテルオークラ新潟
と新潟グランドホテルで9月8日から10日の3日間執り行われた.その中日,9日に私は
「失敗知識の活用」と題して1つの分科会で講演を行った.分科会には,全国から集まった製紙業
管理職ら約100名が集まって講演に聞き入っていた.最近は,失敗学の紹介とともに,如何に
失敗知識を活用するか,その考え方の基礎を紹介している.
紙パルプ経営者懇談会によるこの大会は,毎年行われている.今年は台風15号の
影響で参加者の集まりが心配されたが,それが南方にそれたため,予定通りに大会が進行した.
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講演後,北越製紙新潟工場を見学させていただいた.1907年創業の同社は
新潟工場,長岡工場のほか関東にも進出.本社を東京都中央区日本橋に構える.
北越製紙,新潟工場と説明を受けて見学に出た.あいにくの曇り空だったが,
台風がそれたおかげでこのように工場を見学できるのだから文句は言えない.最初に連続蒸解釜
に登った.晴れていれば佐渡島も見えるというそこからは,新潟港や海岸線に沿ってそこから
勢力を伸ばしたかのように工場地帯が広がる.
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港から陸揚げされた木材チップの製紙工程への入り口が蒸解釜だ.
そこで木材は紙になっていくパルプ成分と,発電燃料となる樹脂成分とに分かれていく.
紙に変わらない原料部分を燃料に,同工場で使用しているエネルギーの65%をまかなっているという.
いわば木材と水と空気中の酸素を消費して,紙と水蒸気と多少の排ガスを吐き出している
有機体のようなもの.新潟という海の幸と自然に恵まれた土地柄だろうか,環境保全に
特に留意している北越製紙では,古紙の再生にも力を入れている.
最終工程では,いくつものローラーをぐるぐるめぐってきた連続紙がカッターで
正確に切断され,積み重なっていく.製紙工程は製鉄に良く似ていると思った.そびえる蒸解釜は
高炉を思わせるし,ローラーをめぐる連続紙は圧延工程に似ている.中で起こっている現象は違う
ものの,産業の基幹を担うこの2業種の対比は面白い (いいの・けんじ).
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1971年3月 |
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