第4回失敗学会年次大会が無事終了した.報告は別途掲載する予定だが,
この大会で特に印象に残ったのが,畑村会長も,私も強調した『注意力に頼っていては失敗はなくならない』
という言葉だった.これに加えて思うのが,『人ベースで事を決めてはいけない』ということだ.
最近ニュースを賑わしているのが,耐震データ偽造問題であるが,
これも人ベースで事を決めた失敗のつけだろう.「○○の計算だから問題なかろう」と
『誰が』を基準にしてしまった.世の意見は,その偽装を行った人間を責める動向だが,
問題はもっと根深く,日本で特にその傾向が強い『人を見て物事を決める』やり方への警鐘に思えてならない.
系統立った手法があるにも拘わらず,ついつい楽な人ベースに頼ったわけだが,
私たちも似たようなことを日ごろやってないだろうか.ISOの書類作成は付け足しで,
実際には人ベースで先に事を決めてはいないか.今になって知識を持った人達が退職して居なくなったら,
事業がうまく動かないのじゃないかと慌てだしているのも,
長年に亘って本当の文書化を怠って来た技術のしっぺ返しといえよう.
失敗学会法人会員でもあるプラックス社は,
先にも紹介した講座
『生産性設計』を受講している.この講座は,
設計・企画から製造,保守,廃棄にいたるまで,系統的に考える手法を教えているが,
注意力・人・慣習ベースで考える傾向の強い日本のやり方から脱却する1つの方法と言えよう.先ごろ,
この講座もその半分を終了し,前期最終発表会が行われた.日本でも系統的手法を学んで合理化を進めようする組織が増えている.