2007年最初の見学会は、宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)の筑波宇宙センター。
失敗体験ネットワーク初の試みとしてメンバー以外にも見学会を公開した。
2007年1月27日の第11回会合での合意を早くも実行に移した形である。見学会当日まで2週間を切ってからの慌しい募集にも関わらず、
メンバー以外からもメンバーとほぼ同数の参加申込みがあった。
「筑波宇宙センター」へ
参加者21名のうち14名は、つくばエキスプレスの「つくば」駅からタクシー3台に分乗して現地へ。
今回の見学のアレンジをしてくれたメンバーの吉岡さんが、自作のプラカードを持って終始引率してくれた。
(写真は同センター「広報・情報棟」入口前の吉岡さん)
「筑波宇宙センター」展示室
「広報・情報棟」でビデオを観てから、シャトルバスで展示室へ移動。
同センターは敷地面積約53万平方メートル。ビル間はシャトルバスで運んでくれる手厚いサービス。
展示室はロケットコーナー,人工衛星コーナー,国際宇宙ステーションコーナーから構成されている。
ロケットコーナーには、これまでに打ち上げられた代表的なロケットの模型(実物の20分の1サイズ)
とLE-7エンジン,LE-5エンジンそれぞれの実物が展示されている。LE-7エンジンを使えば、
東京-大阪間は1分という一般の見学者が驚く説明にも、今回の見学者はほとんど反応なし。
人工衛星コーナーにはJAXAが開発した歴代の人工衛星の実物大試験機が展示されている。
技術試験衛星「きく」,電離層観測衛星「うめ」,実験用静止通信衛星「さくら」,実験用中継放送衛星「ゆり」,
測地実験衛星「あじさい」,地球資源衛星「ふよう」,環境観測技術衛星「みどり」・・・、
日本の人工衛星開発の歴史を垣間見ることができる。中には見上げるほどの大きなもの(「みどりⅡ」)もある。
静止気象衛星「ひまわり」は、スペア実物(写真)が展示されており、手を触れることができる。
1977年の初回打ち上げの際には万が一の失敗に備えてスペアが用意されたが、打ち上げに成功したためスペアの実物がこうして残っている。
国際宇宙ステーションコーナーには、世界15ヶ国が建設に携わっている国際宇宙ステーションでJAXAが担当している実験棟
「きぼう」の実物大模型や太陽電池動作模型が展示されている。様々な計器が搭載されている船内実験室(実物大)の中に入ることができた。
「宇宙ステーション試験棟」
試験棟にはこれから宇宙に打ちあがる、ロボットアーム(写真),船外実験プラットフォーム,
そして船内実験室のモックアップがあり、実際に各種試験が行われている。船内実験室の実物は既にアメリカに向けて搬送されており、
搬送の様子(特別な車両を使って時速4kmでゆっくり陸送した後、輸送船に積み込み)を伝える写真パネルが展示されている。
ロボットアームと船外実験プラットフォームは今後順次アメリカに向けて搬送されるそうで、今回見学できたのは、貴重なタイミングであった。
H-Ⅱロケット8号機エンジン残骸
一般の見学者とは別れ、厚生棟へ。今回の見学会のメイン(目的)は、1999年11月15日に種子島宇宙センターからの打ち上げに失敗した、
H-Ⅱロケット8号機の第1段LE-7エンジン。2000年1月に小笠原の沖水深約3,000メートルの海底から引き揚げられたノズルスカート,メイン噴射器,
液体水素ターボポンプ等が展示されている。
海底調査と引き揚げ時の写真,疲労破壊で羽根が欠損したインデューサー破断面の評価が、パネルで展示されている(写真の右側)。
この後開発されたエンジン(LE-7A)では、きちんと対策が施されたとの説明があった。
エンジンの現物が説明資料と共に保存されている点は評価できる。インデューサーの実物がなく、写真のみであったのが残念である。
尚このエンジンの残骸は通常のツアー見学の対象外であるが、年2回の一般公開では見学することができる。次回の一般公開は4月21日(土)に
「科学技術週間特別公開」として予定されている。
懇親会と第13回会合
「つくば」駅近くの「つくば樓外樓」に移動し、遅い昼食にありつく。「失敗体験ネットワークに参加されない方はいますか?」
との上原事務局長の巧妙な問い掛けもあって、8名の方がメンバーに加わることとなった。中華料理に舌鼓を打ちながら(写真)、参加者相互の親睦を深めた。
第13回会合では、3つの議題を消化した。まず次回(5月)の見学会の予定を確認。「ANAグループ安全教育センター」を見学する候補日を決定した。
続いて石山さんから「三菱重工長崎造船所史料館」の見学報告、そして最後に中田代表から「安全体験研修(仮称)」の準備状況報告があった。
今回の見学会の詳細は4月14日(土)に開催される
第48回「失敗学懇談会 in 東京」で、
「三菱重工長崎造船所史料館」見学の詳細は同じく6月に開催される「失敗学懇談会 in 東京」で報告される予定である。
番外情報
「広報・情報棟」には「宇宙グッズ販売店」がある。キーホルダー,ペンなどのグッズを差し置いて、見学者の一番人気は宇宙食。
筆者は宇宙食の甘味を購入。
ツアー見学のコースは、平日と土日で異なっている。無重量環境試験棟,宇宙飛行士養成等は今回見学できななった。
訪問の際には事前確認を。