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第68回失敗学懇談会、愛知 岐阜 (Part 1)


日時:2008年 5月15日(金) 9:00~5月16日(土)16:30
参加者:児玉 仁,大澤 勲,永濱 健,三田 薫,平 和昭,飯野 謙次,
          福本 喜枝,藤井 信彰,佐々 正光,浅井 香葉,渡邊 信五
          [15日のみ]宮崎 敬,本多 茂
          [16日のみ]北村 兼一,木田一郎
5月15日(金)
 9:00 名古屋駅太閤通口銀の時計集合、バス乗車
 9:45 トヨタ会館ミュージアム見学
          新車展示
          トランペット演奏ロボット
          未来ビーィクル i-Unit
11:10 工場見学バスツアー
          組立工場
          溶接工場
14:30 中部電力電力資料館
          越美幹線超大束径6導体ジャンパ装置
          タービンローター
          真空管コンピュータ UNIVAC120
          電力王、福澤桃介紹介ビデオ
          電力の鬼、松永安左エ門紹介ビデオ
17:30 ルートイン各務原到着
18:00 飯野謙次講演『交通の利、交通の罪』
19:00 懇親会

5月16日(土)
10:30 かがみがはら航空宇宙科学博物館集合
          実機展示:YS-11、陸軍乙式一型偵察機、
                    短距離離着陸実験機飛鳥など
          『飛ぶ』にチャレンジの歴史展示
          ヘリコプターフライトシミュレータ体験
12:30 産業技術記念館
           機織技術の歴史と自動織機実機展示
           自動車工業:材料から生産まで
           大型蒸気機関実物大模型
           テクノランドで遊ぶ
15:00 アサヒビール名古屋工場
           ビール製造、仕込から缶詰まで
           試飲は3杯まで
16:30 解散
17:00 第2懇親会


 名古屋駅には、金の時計と銀の時計がある。 『金の斧銀の斧』の話ではないが、金時計と聞くとなにやらぎらついた金(かね)の亡者を連想し、銀時計と聞くと、 いぶし銀から連想される(良い意味で)渋い印象を受ける。
 今回の集合場所は太閤通口側の銀の時計。集合時間の数分前にちょうど間に合う『のぞみ』を選んだものだから、 初めて参加された方に御心配をかけてしまった。ここのところ、参加表明と実際の参加がぴったり合って、 すこぶる調子がいい。あの人どうしたのだろうと気を揉むこともなく、さっと出発ができる。 遅れる人がいてもさっさと出発してしまおうと思うのだが、機械ではない人間はついつい『もう少ししたら』 と待ってしまう。もっとも、不慣れな名古屋駅での待ち合わせだから、ネットで目立ちそうな目印を見つけて集合場所に決めた。 自然、ポピュラーな待ち合わせ場所となり、大勢の人々の中からそれらしい集団を見つけることになってしまう。

 筆者が学生のころには、渋谷駅前でよく待ち合わせをした。それまで一度も合ったことのない女子大学生との合コンともなると、 人でごった返す交番付近をうろうろと徘徊しながら人数の合致する同じ年代の女子グループを見つけて、 『○○さんですか』と聞いて回らなければならなかった。気恥ずかしいながらもそれなりに楽しい時間ではあったが、 苦労の末にやっと探していたグループにめぐり合えると喜びもひとしお大きかった。 やがて、慣れてくると待ち合わせのときに着ていく服をあらかじめ伝えておくなり (合コンは勝負服と決まっていたので何を着ていくかわかっていた)、『ハチ公の尻尾の先ね』などと、わかりやすい場所の指定をするようになった。 今は携帯電話の普及により、このような工夫をしなくて良くなってきた。世の中が便利になる反面、人の創造性が蝕まれていく。

 『失敗学会』のプラカードを持った大澤大阪分科会長がなぜか最後に現れ、我ら一行13名がそろい、 チャーターしたマイクロバスへと向かった。このプラカードが翌日、失敗学会のプロモーションに一役かうことになる。
 社会人になってからというもの、気さくな人たちとの見学会というものからは遠ざかっていたように思う。 仕事のお客さんと一緒だったり、偉い先生といっしょだったり、社会見学と言っても気の抜けないような状況が多かった。 失敗学会の見学会は、この春の懇談会、失敗体験ネットワーク、あるいは大阪分科会の見学会など実に心の底から『楽しい』 と感じる。まるでお弁当を用意してもらってほとんど考えることもなく、 引率の先生に言われるがままに右に、左にと移動していた小学生時代を思い出す。日ごろのストレスが発散されにくい向きには、 絶好のイベントと言ってといいだろう。

図・写真は会員のみ  最初の目的地はトヨタ会館。ここでミュージアム見学とその後、工場見学の予定だ。 入り口を入って目を惹くのは案内のページに登場しているパートナーロボットだ。 デモの時間まで、しばらく展示場で時間をつぶすことになったが、いざ演奏となると大勢の人が集まってくる。 無機質なロボット顔の奏者が、いかにも硬そうな口までペットを持ち上げると高らかにトランペットの音が鳴り響いた。
 人口唇を有しているらしいけど、『つば抜きはやらなくてもいいのかな』とは誰かの言。思わず笑ってしまった。 ハンカチを持たずに済むペット奏者も他にはいないだろう。もっとも、一曲終わるごとに、つば抜き弁を開けて『フーフー』やったら、 より人間に近づいてかわい気が増すのではないかとちょっと思った。
 その見事な演奏を一部収録したので、下画像左下の三角のプレイボタンを押してみてください(Windows Media Player, ActiveX controlなど、 ややこしいものの設定ができていないと視聴できないこともあります。ごめんなさい、質問は受け付けません。 また、失敗学会会員パスワードが無ければ動画は再生されません)。



 もうひとつのデモは未来型ビーィクル、i-Unitだ。ただし、このままでは、日本の歩道に多く見られる段差はクリアできそうにないし、 フラット・レイアップ状態の駆動に使われているボールねじに埃やごみが噛んで実用まではまだ時間がありそうだ。 トヨタのホームページでパーソナルモビリティ支援装置を見ると、 今では様々な開発が進んでいる様子がわかって面白い。リンクをたどるとビデオもあるので、見てみるのもいいだろう。



 この手の乗り物の走りはアップル社のセグウェイだろう。世の中にそのコードネーム“ジンジャー”がもれ始めたのは、 もう10年も前のことになる。前身の車椅子型ビーィクル(今では iBOT と呼ばれるもの)が階段を上れることから、 1930年代から40年代に大活躍したアメリカの映画スター、フレッド・アステアをもじってフレッド・アップステアズ (上の階のフレッド)と呼んでいた。そして次のセグウェイのコードネームは、 フレッド・アステアとよく競演したジンジャー・ロジャーズの名前を取ってジンジャーとした。 なんとも茶目っ気のある命名だが、当時のIT業界では様々な憶測がなされ噂が飛び交った。

図・写真は会員のみ  このトヨタ会館には、新車展示エリアも設置されている。i-Unitのデモで活躍されたお嬢さんは、 新車の説明もこなす人だった。コンバーチブルもカッコいいが、後部座席に大人が座ることはできない。 あくまでも2人のための車だ。それと対照的なのが大型レクサス。新型のLS600が展示してあったが、 その値段がなんと1千5百万円を越えていた。ウヒャーと驚いていたら、 アメリカの友人が1億円を越える Bugatti Veyron の写真を送ってきてくれた。 何でも、Veyron 特別仕様のミシュラン製タイヤが1本250万円もするらしい。上には上があるもんだ。 これまでに200台が生産、販売されているという。
図・写真は会員のみ


図・写真は会員のみ  さて、我々庶民は現実に戻らなければならない。
 ひとしきり、新車を見てため息をついた後、他の展示を見て回った。 車体を透明にしてハイブリッドカーの説明をする展示、 安全性の追及のため実際に正面衝突させた自動車の展示など、 説得力十分な迫力あるものばかり。童心に帰ってボタンを押すとLEDが点灯するだけでも嬉しい。 面白かったのは小さな工場の模型。作業員がラインで作業をしているとトラブルが生じ、 ロープを引っ張るとアンドンの表示が変わって作業長に知らせ、同時にラインを一時止めるというしくみを、 木製人形に実際にロープを引かせて見せていた。
 子供のころによく乗った路線バスは、今のようなショッキングピンクの押しボタンで次の停留所での下車を知らせるのではなく、 同じようなロープを引いて運転手に知らせる方式だった。どちらが先に世に出たのだろう。
図・写真は会員のみ  図・写真は会員のみ


 そして最後に館内の売店に行ってみた。永濱さんが売り子さんから聞き出したところによると、 ボンカレーのようなレトルトパックの『トヨタ博物館カレー』がお勧めらしい。 しばらく箱を眺めたものの、その日も翌日もカレーを温めて食べる機会はなさそうとの思いにグッと我慢した。

 やがて、工場見学バスツアーの集合時間になった。ここからは撮影禁止。 無料のコインロッカーにカメラ・携帯等人質においていかなければならなかった。 大型バスに他の団体さんも乗り合わせていざ出発。まずは組立工場を見学、 今は英語にもなったカンバン方式、先ほどの“ロープを引いて”の実物も見れた。
 ジャスト・イン・タイム生産は、いじめとよく言われる。 実際、市場の需要に応じて生産を調整するのだから、どこかに部品のバッファがなければ、 必要な時に必要な部品が無いという状態ができるに決まっている。 この日もジャストインタイムがいじめではないとの説明がなされた。 今までも様々なところで説明を聞いてきたが、納得できていない。
 入り口から鉄鉱石と石炭、石油を注ぎ、出口からは自動車が出てくるような巨大工場が実現しない限り、 ジャストインタイムもその効用を謳えないだろう。それでもタンカーは原料をバッチでしか運んで来ないのだ。

[ 飯野謙次 ]


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