特定非営利活動法人失敗学会 |
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Part 1 はこちら>> 第68回失敗学懇談会、愛知 岐阜 (Part 2)組立工場でひとしきり感心した後、熟練工と対決というお遊びコーナーに案内された。 様々な基本スキルをビデオの熟練工と用意ドンでスピードを競うものだ。最初にやったゲームは、 垂直な壁から水平に出ている杭の回りを、矢印の順番と向きに合わせて縄をくるくる回すゲーム。 ビデオの用意ドンがよくわからず、完敗して悔しい思いをした。 筆者が初戦で勝ったと思えたのは、5 x 5位の格子に配列された深さ2センチほどの穴にはまっている高さ、 直径共に4センチほどの円柱を全てひっくり返すまでの時間を競うゲーム。ほとんどたこ焼きの要領だった。 大阪出身者はすべからくいい点を取れる。たこピンを持たせればそれこそ向かうところ敵なしだ。 大阪出身者は大抵たこ焼きプレートを持っているという。ほぼ正しい観測だと思う。何を隠そう、 筆者も独身時代、アメリカに渡って台所用品をそろえた時に1枚買った。 東京では、銀だこが一時期大いにはやった。 しかし、銀だこの店舗数を見てみると全国311店舗のうち、東が229、西がわずか82店舗である (どちらとも言いにくい愛知は2分した)。東京都に45店舗あり、そのうち23区内に31。一方の大阪府には5、 市内にはわずか2店舗である。いくら東京の方が人口が多く、銀だこの発祥が築地と言ってもこれは偏っている。 これに対して、マクドナルドとなると東京都に521軒、大阪府に308軒とバランスが取れている。 銀だこの特徴は、食べた時に外皮がカリッとしている食感であろう。 見ると仕上げに油で揚げてこれを実現しているようだ。しかしこの製法の難点は、たこ焼が冷めた時だ。 大阪のたこ焼きは冷めてもおいしい。 逆に大阪の老舗が東京に進出して失敗している例もある。 大阪ではめったに足を踏み入れることのできない高級料亭というイメージだったのだが、 意を決して東京で入ってみると、それ行けドンドンの大衆化を果たしており、変わらないのは最後の伝票の数字だけだった。 話をツアーに戻そう。 初日のトヨタ訪問の最後は溶接工場見学。溶接工場なのに自動化率が96%と、なんともすごい数字だ。 ラインの両側に55台の溶接・検査ロボットが並び、ラインが1ノッチ動くと全員いっせいにスポット溶接に取り掛かる。 さながらSF映画のワンシーンのようだ。 トヨタ会館に別れを告げ、昼食を取った後、 中部電力電力資料館に向かった。電力資料館については、 先の失敗学講演の旅にあるので、ここでは詳しくは書かない。 前にも書いたかもしれないが、ひとつだけ改めて再認識したことを記録させていただくと、 『実物を残す』ということの何物にも変えがたい価値である。 大阪分科会長の大澤さんは、下部一連の写真最後、水銀整流器をご覧になって、 『いやあ、こいつの実物を見るとは思わなかった』とひとしきり感動しておられた。 こうやってせっせと訪問記を残し、写真を撮ってウェブに掲載するのも、 会員の方も、こんなことがあったと懐かしく思い出して下さるに違いないと思うから。 また遠方の縁者に元気でやっているよと伝えることもできよう。だから、写真も何点かは公開しなければならないか。 再びマイクロバスに乗り込み、日帰りの方を途中の駅で降ろし、バスは一路各務原(かがみがはら)の宿泊地に向かった。 多少、遅れを取り戻すことはできたものの、到着したら予定の講演まで15分しかなかった。 食事前の大浴場はあきらめて、会議場集合。 この日の講演を担当した筆者の演題は、『交通の利、交通の罪』。 ここのところ、人の輸送に関する事例を取り上げることが多かったためこの演題を選んだ。 筆者は比較的、出張など交通機関を利用することが多く、とりわけサンフランシスコ・成田間を年に10回前後行き来することがあり、 自分が事故に遭遇する確率は確実に人より多いと思われるが、それがどれくらい多いのか、まじめに概算してみようと思ったのである。 まず、平均的日本人が自動車、鉄道、航空機をどの程度に利用するか比較してみた。すると、これら3つの手段を使った移動距離の比は、 おおよそ 5 : 2 : 1 となった。 次に自分の移動である。ここのところ自分の出張や旅行まで、あらゆる予定をデータベースで管理しており、 終わっても削除しないものだから、行動記録が残っていてすこぶる便利である。 それを元に、自分がおおよそ何を使ってどれだけ移動したかが割り出せる。下の表は2008年の記録。 思ったとおり、圧倒的に飛行機による移動距離が大きくなり、平均に対して比は逆になった。 しかし単位距離に対するコストは飛行機の移動が断然有利だ。そして総移動距離は13万キロ弱、地球を3周以上していたことになる。
そして必要なのが事故のデータ。下の図は、近年の航空機、鉄道、自動車事故の件数、死傷者数の推移を示している。 ただし航空機事故では、1985年の御巣鷹山事故で520名の方が亡くなっており、 この年の死者数は530名とこの図には収まらなかった。航空機事故を語るにこの事故を外してはいけない。 これら図を見て気づくのは、大規模事故は例外に、全般的に事故や死傷者が減っていることだろう。 ただし自動車事故死の定義は、『事故発生から24時間』なので、自動車事故による死者がここ15年で大きく減っていると言っても、 それは医療技術の発達に負うところが大きい。ここ数年はしかし、飲酒運転、違法駐車の取締強化のおかげで、事故件数、負傷者数も減っている。 こうして各交通手段を使った日本人の総移動量、自分の2008年移動量、それぞれの交通手段による事故件数と死傷者数が得られた。 これらをもとに筆者が2008年にそれぞれの交通手段によって、事故に遭遇し、死傷していた確率が算出される。注意しなければいけないのは、 得られた数値は確率の概算値であること。事故に遭遇するまでの平均移動距離を移動したからといって事故遭遇確率が100%になるわけではない。 下の表中、確率はパーセントで書いてあることにも注意。すなわち筆者が2008年に自動車事故で負傷した確率は、0.1パーセント、千に一つであった。 自家用車を所有している人は、年間に大体1万キロ走行するという。その場合、1年間に事故に合う確率は1パーセント程度となる。 それでも10年も乗っていれば、それが10パーセント程度となり、事故遭遇確率としては無視できなくなる。 自動車を運転する方にはくれぐれも注意して欲しい。 筆者にとって、有意な確率は先ほどの自動車事故に遭遇する0.1%だけであった。 航空機や電車の事故に遭遇する確率は無視できるほど小さい。少しは乗り物に乗るときの気が晴れて良かったと思う。 もっとも、飛行機や電車では気をつけて乗っても事故防止にはほとんど役に立たない。 せいぜい飛行機では、常にベルト着用を心がけることだろう。 一つ読者に注意していただきたいのは、自動車事故による死傷者の内、 3分の1は歩行者や自転車が巻き込まれて死傷していることである。歩いている時は安全ということは決してない。 せめてこの日の講演を聞き、この記事を読まれた方は事故に合わないよう願う。随分身勝手な願いと思われるだろうが、 何事も小さなことの積み重ねである。
[ 飯野謙次 ]
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