特定非営利活動法人失敗学会 |
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Part 2 はこちら>> 第68回失敗学懇談会、愛知 岐阜 (Part 3)1日目の締めくくりは懇親会。ホテルの1階のレストランで談笑した。 初めてお会いする方もいると、多少の緊張をもって会が始まる。 一次会終了と共に、さらに物足りなくて街の散策に出かける人、 大浴場に出かける人と三々五々散っていった。 時代はずいぶん変わった。個人の意思が尊重されるようになり、 常に集団で行動しようという団体さんはずいぶん減った。みんなで共に行動は、せいぜい一次会までで、 その後、自由な時間となる。このためにも、なるべくシングル部屋でただし大浴場があるホテルを探すようになった。 このホテルでも、大浴場は深夜過ぎまで入場可となっていたので、私達のようなグループには大変ありがたかった。 世の変遷と共に人の好みも変わり、それをうまく追って行かないと競争に負ける。 世人の多様なニーズにすべて対応しようとするとコストが合わないが、どこに線を引いて、より多くのお客様を惹きつけるかが、 経営者の目にかかっている。そしてその線は、常に動いていなければならない。以前、老舗旅館と交渉してチェックアウトタイムを午後1時にしていただいたことがある。 “老舗”に胡坐をかかないその姿勢に、ここは生き残るだろうと思った。 各務原市は名古屋の北30キロ弱、岐阜の東約10キロメートルに位置する岐阜県の都市。 航空自衛隊の岐阜基地と、陸上自衛隊の岐阜分屯地がある。 宿泊したルートイン各務原から、本イベント2日目最初の目的地、かがみがはら航空宇宙科学博物館までは直線距離にして2キロほどだが、 航空自衛隊岐阜基地の広大な敷地を迂回するため、歩くと7キロメートルもあった。 通常の行き方は、ホテルから1キロ足らずの名鉄各務原線六軒駅に出て、西隣の各務原市役所前駅まで電車に乗り、 駅前からのバスで目的地に到着するのだが、散々悩んだ末に徒歩行程の地図を用意して配った。 筆者も入れて、4、5人がこのハイキングに挑戦した。歩いてみると75分。朝のいい運動だった。 写真は、幹線から細い道に入り、残り2キロの地点から後ろを振り返った絵である。 遅れないよう少し早めに出たことと、歩く行程を90分と見積もっていたので、 博物館の前でバス組を待つことになった。博物館前の広場には、プロペラ機が数機展示してあり、 ここまでは無料で見ることができる。雨ざらしのため、塗装がところどころ痛んで艶がなくなっていたのが残念だが、 YS-11 の実物を見るとやはり、心を動かされる。 大人800円のところを割引券にて少しばかり安く入場できた。 入り口すぐのところには、美しい複葉機が暖色系の照明に照らされて鎮座していた。 各務原飛行場で誕生した第1号機サルムソン2A-2型の復元機である。 この展示室は、後で見ると“ウエルカムハウス”と命名されている。 インターネットのおかげで、大事な情報をメモしそびれても後から調べ上げることができるようになり、 すこぶる便利になった。少年時代の社会見学では、後から訪問記を提出しなければならなかったため、 お寺を訪問してお坊さんの説明なんか聞こうものなら、やたらメモを取るのに忙しかった。 目はお坊さんと自分のメモ帳の間を行ったり来たりで、せっかく見に行った美術品を鑑賞する暇などなかったと思う。 ただし、後から情報を引っ張り出して訪問記を書くとその分、時間が余計にかかる。 先に下調べをするのも良いが、実物を見ていないので実感が湧かない。どんなにきれいな3次元映像をもってしても、 本物を見たときのインパクトにはかなわない。 次に展示場に足を進めた。そこは大きな倉庫に照明を入れ、ジェット機、プロペラ機、ヘリコプター、 ロケット(こればかりはさすがに模型)が、床に置かれたり天井から吊るされたり、所狭しと並んでいた。 ボランティアの案内人に尋ねてみると、徐々に展示機の台数が増え、そのたびに段々今のような過密状態になっていったらしい。 実際に使用された機体も数多くあったが、試験機、実験機も多々あった。 これは、例えば鉄道博物館や自動車展示館などではお目にかかれない。華やかに日の目を見たスタープレーヤーだけではなく、 技術の進歩に必要だったステップを実感させる見事な展示だと思う。 この飛鳥の他、様々な試験飛行機、ヘリコプター、ブルーインパルス、垂直離着陸機、グライダー、エンジンのカットモデル、さらにはロケット模型から、火星探査機まで、 ありとあらゆる『飛行』に関する展示物で楽しませていただいた。機体内部に入れる展示やコックピットを覗けるものまであったのは実に楽しかった。 筆者は少しの時間をミュージアムショップ「ブルーウイングス」、いわゆるみやげ物屋で過ごした。 アルミダイカスト製の模型が1万円から2万円台で並んでいる中、1台だけ20万円を越える値札がついていた。 一桁違っているのだろうと売り子さんに確かめてみた 「あのお、これだけ値段がえらく高いんですけど間違いないですか」 値札の貼り違いを見つけたと思った僕は、少しく声に自慢げな響きがあったと思う。 すると、売り子さんはにこやかに告げた、 「ええ、これだけは高いんですよ。間違いないです」 「どうして、これだけそんなにするんですか」 「このアルミ製モデルは、本物のジャンボ機を材料に作ったんですよ」 今度は、売り子さんがやや自慢げになった。 「へええ、すごいですねえ」と感嘆はしたものの、なんとなく釈然としない。 削り出したとは思えないし、そうか、一旦溶かしてからダイカストで打ったんだ。 しばらく、ショップの他のお土産を眺めた後、先ほどの売り子さんを捕まえて尋ねてみた、 「これまでに、さっきのジャンボのアルミでできたモデルを買った人はいますか」 「いえ、この店に3年間置いてありますが、買った人はいませんね」 さすがに誇らしげなトーンは消えていた。 飛行機モデルに限らず衣料でも、店頭のショーウィンドーにひどく派手な商品を飾ることがある。 売れ筋を置くこともあるが、通行人の注意をひきつけて、店舗に足を踏み入れてもらうために、 売れそうもないけど目を惹く商品を置くことも多い。 ジャンボの機体のアルミを使ったモデルも趣向としては面白いが、 見てもそのポイントがわからないのであれば、値段だけの価値はないだろう。 ルイ・ヴィトンは、一目見てヴィトンとわかることに値打ちがある。それがブランドというもの。 目を凝らしてみてもヴィトンとわからないのであれば、誰も買わない。
[ 飯野謙次 ]
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