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アメリカ機械学会大会報告

 アメリカ機械学会(ASME)の大会が、 8月15日より18日まで執り行われた。世界には機械工学に関する国際会議が数多く行われるが、 この“設計工学技術・工学におけるコンピュータ国際会議 [International Design Engineering Technical Conferences and Computers in Engineering Conference (IDETC/CIE)] が例年、最も多くの参加者を集める。今回はASME の各分科会が以下会議を行った。
  • 第36回設計自動化会議(DAC)
  • 第34回機構及びロボット工学会議(MR)
  • 第30回工学におけるコンピュータ会議(CIE)
  • 第22回設計論国際会議(DTM)
  • 第15回生産性設計とライフサイクル会議(DFMLC)
  • 第12回未来車両とタイヤ技術国際会議(AVTT)
  • 第7回設計と設計教育国際シンポジウム(DEC)
  • 第4回マイクロ・ナノシステム国際会議(MNS)
  • 機械振動と騒音特別会議(MNS)
 セッション総数が166、著者数は1,600名余り。ただし複数著者のものもあるので、 論文数は700本程度だろう。とても大きな国際会議なのである。

 開催地のモントリオールは、 当時ルーマニアのナディア・コマネチ(Nadia Elena Comaneci)が、 段違い平行棒と平均台で10点満点を出した夏季オリンピックでなじみが深い。 その歴史を紐解くと、 1535年、フランス人探検家のジャック・カルティエ(Jacques Cartier)がモントリオールを訪れ、 先住民の言葉から土地に「カナダ」の名前を付けた。 17世紀にはフランス、18世紀にはイギリスによる植民地化にさらされ、近代化が進み繁栄したものの、 カナダが国として独立したのは1931年のウエストミンスター憲章による。
 住民の大半がフランス語を話し、アメリカというよりもヨーロッパの色が濃い。 街にもオープンスタイルのレストランやカフェが多い。

 会合が開催された Fairmont Queen Elizabeth Hotel は1泊2万5000円もするので、 筆者は例によって歩ける距離の安宿、La Tour Centre Ville を見つけて通った。 安いもののリビングとベッドルームが別になっており、キッチンまであってすこぶる快適であった。 会合でバッタリ会った故石井浩介スタンフォード大教授の弟子、 Sun Kim君(現慶應特別研究助教)も同じホテルに泊まっていたのは愉快だった。
 開催時期が日本のお盆休みと重なっていたこともあり、日本人参加者も多く、 おなじみの大阪大学藤田喜久雄教授、スタンフォード大学福田収一客員教授、 ミズーリ大学Shun Takai 教授に加え、あるセッションに顔を出してみると、 日本機会学会メカライフ編集委員会でお会いした東京大学柳沢秀吉助教授が座長を務めておられ(上写真)、 「ここは飯田橋?」の錯覚を起こしてしまった。
 また、今回初めてお会いした芝浦工業大学の大倉典子教授の発表を聴き、 感性工学について学んだ。大倉教授には、失敗学フォーラムでお話をいただけるようお願いしたので、会員の皆様は楽しみにされますよう。
 その他、スタンフォードの学生時代を共にすごした台湾で活躍中の黄金沺(Chintien Huang)教授、 徐業良(Yehliang Hsu)教授、韓国のYongse Kim教授とも顔を合わせ、 本会合が年に一度の機械工学者国際大会、特に設計工学に関する集まりであることがはっきりしてきた。 どこぞのお達者クラブにならぬよう、気をつけねばなるまい。
 来年は、8月29、30、31日の3日間、 ワシントンDCでの開催が決まっている。 失敗学に関する論文を集めてみんなで東海岸旅行と夢は膨らむ。

 さて今回の筆者発表は、東京大学教授中尾政之副会長と共著の“Service Information for Product Quality”。 ビデオライブラリにアップしたので、発表を視聴してもよいだろう。
 プログラム発表で18日朝が割り当てられ、同日朝6時のフライトでモントリオール空港を出発予定だったため、 急遽ビデオでの発表となった。後日、部門長の Shun Takai 教授にいい発表だったとの御連絡をいただいた。 工学者はお世辞を言わないと信じて鵜呑みにしている。
 本発表で問題提起していることは、以下の文言にまとめてみた。今後、失敗学を産業界に役立てるため、 私達が進む方向の1つだと思う。

一般に修理や保守を行う組織は、設計・製造を行った組織と別である。 このため、保守業者が利益を最大にしようとすると、設計・製造業者と無関係に自分で保守作業を済ませることを考える。 御巣鷹山事故や、 パロマ湯沸し器の一酸化炭素中毒も、保守がよく設計・製造業者に連絡を取らなかったために発生した大事故といえよう。 設計者があらかじめ提示した保守手順のどこにもない作業や、想定されなかった故障については、 保守業者は設計・製造業者に確認を取る仕組みが望ましい。それも法規で縛るのではなく、 保守情報公開データベースの運用を目指していく。
(飯野謙次)



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