概要:
高度に科学技術が発達した現代社会は、その恩恵に大きく支えられる一方で、危険発生のメカニズムが十分に解明されていない巨大な「未知の危険」の上に築かれた「危険社会」でもあります。原発は正にそのような地震、津波等の「未知の危険」の上に築かれた人類史上類例を見ない危険な装置であり、今次の原発過酷事故はそのような危険への適切な対応に失敗した結果として惹起された「人災」であることが明らかにされています。
刑法学界においては、このような「未知の危険」に対応し得る法理論として「危惧感説」が早くから提唱されていましたが、既に起きたことがある「既知の危険」の限度で刑事責任を問えばよいとする法理論が刑法学界を圧倒的に支配し続け、そのことが事業者等の「未知の危険」に対する無責任体制を容認し、事故後において誰も責任を問われない結果をもたらしているように理解できるのです。
そこで、今次の原発過酷事故に関し国及び東電に課されていた責任を、刑事責任の面から「危惧感説」に依って考究し、「危惧感説」こそが「危険社会」に適切に対応し得る法理論であることを論じます。
講師プロフィール:
1941年 神奈川県生まれ
1964年 司法試験合格
1965年 東京大学法学部卒業
1967~2001年 検事任官し、法務省刑事局総務課長・官房総務審議官、内閣法制局参事官、最高裁判所司法研修所上席教官、京都地検検事正等歴任
2001~2011年 公証人
2011~ 弁護士
【本郷事務局追加参考資料:刑事告訴にまつわる動向】
2012年6月11日 「福島原発告訴団」に加わった福島県民1,324人が業務上過失致死傷と公害犯罪処罰法違反の疑いで東京電力の幹部や経産省の役人など33人を刑事告訴・告発。その後、全国から合わせて14,716人の大告訴団となった。
2013年9月9日 福島地検がこれを東京地検に「移送」。東京地検は全員を不起訴とした。検察審査会への申立ては東京でしかできなくなった。
2013年10月16日と11月22日に、5,740人が東京検察審査会に申し立て。検察の処分妥当性審査中。
2013年9月3日 「福島原発告訴団」が、東京電力と広瀬直己社長等同社幹部ら32人を、(汚染水の流出について)公害罪法違反の疑いで福島県警に告発状を提出。
2013年12月18日 告発申立人6,042人分を追加、県警に2度目の告発状を提出。
以上、
「福島原発告訴団ホームページ」より