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「ノンテクニカルスキルの向上で事故防止」旭硝子、南川忠男氏講演を聞いての感想


吉岡律夫

 2014年7月10日に開催された安全工学シンポジウム2014で、掲題の講演を拝聴しました。内容の一部は、以前、失敗学会フォーラムでも紹介されたもので、ノンテクニカルスキルが楽しくゲームをしながら学べ、かつ実践の効果も示されて、説得力のあるものでした。会場には200名位の受講者がおり、大盛況で何よりでした。失敗学会の知人も何名か来場していました。
 私は1998年以来、システム安全に関する研究を続けており、最近になって、やっと南川さんの活動の素晴らしさというか、位置づけが理論的に理解できるようになりました。
 欧米で最も高名な安全工学者である英国のJ.リーズン教授と、米国MITのN.レブソン教授は、彼らの代表的な著書で全く同じことを言っています[Ref.1と2]。即ち、事故の根本原因は、結局は安全文化の問題であり「安全文化とは用心深さの文化である」と述べています。設計・運転・規制に関わる組織と、それを構成する個人は、十分に用心深いのか?が検証されなければなりません。
 即ち、製品やシステムの安全は,それを生み出す組織の安全度に依存しており、最終的には組織を構成する個人の安全度にかかっています。安全を守るのは、表面的には安全装置とみなされていますが、最後は人間(個人)に掛かっています。

 英国では、安全に従事する個人のコンピテンシー(資質あるいは行動特性)に関する指針)が出されており、技術的なものと人間行動に関するものが合計で約140のコンピテンシーとして規定されています[Ref.3]。
 これらのコンピテンシーは、図の「人間の氷山モデル」に示すように、知識や技能に加えて、人格や性格に係わる分野も含んだ広範なものです。
 この内、知識や技能に関わるものは、教育で習得が可能で、どの企業でも何らかの形で実施しているはずです。しかし、人格や性格に係わる分野まで踏み込んだ教育や訓練をしている企業は非常に少ないでしょう。ここがしっかりしていれば、知識や技能は進んで身に付ける様になっていきますが、逆に知識や技能だけを幾ら詰め込んでも、いつかは大事故になる危険性があります。
 ノンテクニカル・スキルとは、人間の氷山モデルにおける根底部分ですが、今まで、ここは先天的なもので、改善できるとは考えていませんでした。ここを教育・訓練で改善するという南川さんの活動は革命的といって良いほどのものです。今後、広まっていくことを期待しています。



[Ref.1] J.リーズン「保守事故」日科技連、2005年
[Ref.2] N.レブソン「セーフウェア」翔泳社、2007年
[Ref.3] IEE/HSE,「Safety, Competency And Commitment ― Competency Guidelines for Safety-Related System Practitioners」、1999年




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