緊急フォーラム124、『一般通常人とは何か』報告
【
当フォーラムアナウンスページより】
(前略)
東京地検は 2015年1月22日、嫌疑不十分のためいずれも不起訴とする処分を発表した。(それに先立ち)検察審査会が(起訴相当等という)議決書を提出するまでにいたる経緯はフォーラム120のアナウンスに詳しい。
この検察審査会とほぼ同じ結論を出していた失敗学会フォーラムでは、2014年12月6日の年次大会でその意見を確認した(『福島原発事故の法的責任を検証する(PDF)』-吉岡律夫)。
(後略)
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上記不起訴処分を受け、失敗学会では以下イベントを行ったのでその報告を行う。
日 時:2015年2月7日(土) 13:00-17:00
場 所:東京大学本郷キャンパス工学部2号館7階73C2室
資料代:一般 2,000円、失敗学会員 1,000円
参加者:ゲストスピーカ 添田孝史
飯野謙次, 吉岡律夫, 古川元晴, 淵上正朗 (会員4名)
後藤政志,筒井哲郎,笠原直人,郷津光,大崎要一郎,近堂靖洋
(一般 6名)

今回のフォーラム124は、関西から「
原発と大津波 警告を葬った人々 (岩波新書)」著者、添田孝史氏をお招きして執り行われた。まずは、書名と同じ演題、添田さんの講演を拝聴した。
緻密な調査結果と時間軸を提示された説明には、新たな知見、知らなかった背景など、学ぶことが多かった。興味がある方は是非同氏の新書を手にとっていただきたい。ここでは、その中から「小括」としたスライドの指摘を、補足情報を交えて紹介しよう。
- 津波地震(地震動が弱くても大きな津波を生じさせる)は、政府公式報告書で繰り返し予測されていた。
土木学会、中央防災会議がそれをつぶした。前者には電事連1が介入した。後者にも介入したのではないかと推測される。
1997年3月、七省庁手引き
2002年2月、土木学会原子力土木委員会津波評価部会2
地震津波を消す
2002年3月、地震調査研究推進本部「長期評価」
2006年1月、中央防災会議
地震津波を消す
- 2006年、耐震指針が改定されバックチェックが開始された。規制当局に3年は長いと言われた2009年の最終報告提出予定を、東電は社内で2016年に先送りしていた。予定を過ぎても提出されない報告を看過していた規制当局の責任は大きい。
- 電事連: 電気事業連合会。日本の電力会社10社からなる任意団体。ウィキペディア(2015-02-28)によると、福島第一原子力発電所事故が発生し、公的資金での財政支援が行なわれた2011年、東京電力から連合会宛に年会費として18億円が支払われていた。納入された会費の具体的使途は開示されていない。
- 土木学会原子力土木委員会津波評価部会: 当時の委員30人中、電力会社関係者が 17人。
この後、古川元晴さんが今回の不起訴処分理由書に関しての様々な問題点を指摘し、吉岡律夫さんが失敗学フォーラムとの比較を行い、淵上正朗さんが本当に技術的に事故の回避はできなかったのか、海外の事例を交えながら解説された。
淵上さんによる解説を受け、吉岡さんがわれわれ(失敗学会)が考えなければならないと指摘した「事故前に何をすれば事故を回避できたか?」という観点に付き、失敗学会では今後も勉強会を継続する。
これはとりもなおさず、失敗が発生したら「たら、れば、もし」という成功への道も考えることこそが残されたものの使命であるという失敗学の教えの実践である。