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テスラ、オートパイロットで死亡事故

2016-07-01
 電気自動車で高級車市場に新規参入したテスラモーターズだが、モデルSはその中でも最速の高性能モデルである。高速道路での運転ストレス解消を謳ったオートパイロット機能を搭載しているが、2016年5月7日、米国フロリダ州、ウィリストン(Williston, Florida) の高速道路で、進行方向に直角に進行する大型トレーラーに激突した。モデルSはトレーラーの横腹にフロントガラスがぶつかり、上半分はもぎ取られた。そのまま走行を続けた車は、2つのフェンスを突き破り、電信柱に衝突してようやくとまった。運転していた40歳の運転手は死亡。トレーラー運転手は無傷。

   この記事を最初に見たときは、トレーラーが高速道路を直角に進行するとはどういうことか疑問に思ったが、左折しようとしていたとあったので、状況がわかった。Google Earth で Williston, Florida の高速道路を探してみると、どうやら27号線のようである(未確認)。片側2車線の高速道には信号のない出入り口がところどころにあり、右側通行のアメリカでは、左折して高速道路から出るには、反対側車線を横切らなければならない。以下は想像図である。



 これも Google Earth で確認できるが、27号線の南向きは速度制限が毎時 65マイル、時速にして104km/h である。しかし実際、制限速度を守って走る車は少なく、毎時65マイルであれば毎時85マイルで走るのも珍しくない。高性能車ともなれば、100で走っているのではないかと目を疑いたくなることもある。毎時100マイルは 160km/h である。
 モデルSの運転手がどれだけスピードを出していたかが気になるが、ブレーキ痕もないだろうから National Highway Traffic and Safety Administration (NHTSA, 米国運輸省幹線道路交通安全局) の調査も難航するだろう。

 この事故は自動運転の盲点をついているのではないだろうか。運転に集中している人間がこの状況に出くわしたらどうしていただろう。
 おそらく、多少の無理をして目の前を横切ろうとするトレーラーを遠くから認め、ブレーキに軽く足をかけて減速するだろう。そして、トレーラーに近づくにつれ、ブレーキの効きを強くするはずだ。トレーラーも、ずーっと反対車線の車が途切れるのを待つことができなかったのかも知れない。ときには、相手運転手の技量を信じて無理をしなければならないこともある。
 テスラ社は、道路標識を前方車と誤認してブレーキを誤作動させることのないよう、この様な状況で自動ブレーキがかからなかったとコメントを出している。いよいよ近づけばそうかも知れないが、問題は、はるか遠くから前を横切ろうとするトレーラーを認識できる人間に対して、高性能画像やレーダー、AIをいくら駆使しても機械にはそれが認識できないことだ。
 自動運転は、すばらしい技術であることに違いはない。しかし、あらゆる状況を想定した十分なテストをしないうちに、その機能を市場に投入したのは疑問が呈されるだろう。
【飯野謙次】
参考資料
  • Jordan Golson, Tesla driver killed in crash with Autopilot active, NHTSA investigating, THE VERGE, June 20, 2016,
    [www.theverge.com/2016/6/30/12072408/tesla-autopilot-car-crash-death-autonomous-model-s]
  • theguardian, Tesla driver dies in first fatal crash while using autopilot mode,
    [www.theguardian.com/technology/2016/jun/30/tesla-autopilot-death-self-driving-car-elon-musk, viewed 2016-06-30]
  • Tesla Motors Homepage, [www.teslamotors.com, viewed 2016-06-30]
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