失敗事例

事例名称 アームに浸入した水が凍結して鋼がふくれた
代表図
事例発生場所 建設工事現場
事例概要 冬季に建設工事現場で小形エクスカベータを稼動させていた。エクスカベータのアーム先端部に亀裂と膨らみが発見された。雨水が溶接不完全部の隙間から浸入し、アーム先端部に溜まった水が凍結し、体積膨張によって亀裂が生じた。先端部に水抜き穴を設けて、水が溜まらない構造にした
事象 冬季に建設工事現場で小形エクスカベータを稼動させていたところ、図2のように、小形エクスカベータのアーム先端部が膨らみ、亀裂が生じた。
経過 冬季に小形エクスカベータを建設工事現場に持ち込み稼動していた。夜間の冷え込みの厳しかった翌朝、エクスカベータを点検していたところ、アーム先端部に亀裂とふくらみを発見した。
原因 ボックス構造のアームに雨水が浸入し、溜まった水が凍結し体積膨張した。その結果、アーム先端部が膨らみ、亀裂が生じた。雨水は、溶接不完全部の隙間から浸入した。
対処 雨水浸入部の溶接を完全にした。
対策 先端部に水抜き穴を設け、万一水が浸入しても溜まらない構造に変更した。
知識化 水は水蒸気になると1670倍、氷になると9%体積膨張する。だから、密閉すると暖めても冷やしても容器が壊される。この場合も、水抜き穴(ドレイン)を設置したり水がたまらない構造にするのは効果的である。
背景 荷重をかけていなくても亀裂がはいることがある。「応力腐食割れ」である。残留応力として引張が生じている部材に水分がたまり、材質が特に腐食に敏感のものだと亀裂が容易に生じる。
よもやま話 イギリスのキャンベラ爆撃機の一機が駐機中にクラックを発生させた。クラックは翼によるモーメントの疲労で生じたものに対して垂直方向であった。翼をとめる部材は、図3のように、熱処理による引張残留応力が表面にでていたうえに、材質が敏感で、さらに結露が生じて応力腐食割れに至った。
シナリオ
主シナリオ 不注意、理解不足、生産組織の理解不足、組織運営不良、運営の硬直化、品管制度不備、環境変化への対応不良、使用環境変化、自然的条件変化、天候変化、不良現象、機械現象、継手、溶接継手、残留応力、流体、流体浸入、構造の問題、材料的要因、物質名リスト、水分、応力腐食、割れ発生・成長
情報源 創造設計エンジンDB
マルチメディアファイル 図2.雨水が浸入したアームの詳細
図3.キャンベラ爆撃機の翼をとめる部材に生じた応力腐食割れ
分野 機械
データ作成者 張田吉昭 (有限会社フローネット)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)