失敗事例

事例名称 キングス橋の崩壊
代表図
事例発生日付 1962年07月
事例発生地 オーストラリア、メルボルン
事例発生場所 高速道路の橋
事例概要 オーストラリア、メルボルンにあったキングス橋は、25のスパンからなる長さ約530mの橋で、1961年4月に開通したが、翌年1962年7月に45トントラックが橋上を通過した際、第二スパンの4つのガーダー全てがカバープレートの端のところで割れ、橋が崩れた。低気温、溶接の欠陥、不適当な材料の成分などが要因であった。交通量が少ない時間であったため、死者は無かった。
事象 キングス橋は長さ約530mで、25のスパンからなっており、各スパンには4つの鉄鋼製メインガーダーが平行に並んでいる。短い片持梁のガーダーが縦型橋脚から伸びており、メインガーダーを支えている。このメインガーダーの断面は「I」型をしており、鉄板に「I」の上下のフランジ部分が溶接によりとりつけられ、さらに下の部分にカバープレートを溶接で取り付けられていた。そのカバープレートの端の部分溶接箇所からひび割れが生じ、第二スパンのメインガーダー全ての同じ部分に亀裂が生じた。低気温の中、45トントラックが通過した際に橋が崩れた。幸いにも交通量が少なかったため、死者はなし。
経過 キングス橋は長さ約530mで、25のスパンからなっており、各スパンには4つの鉄鋼製メインガーダーが平行に並んでいる。短い片持梁のガーダー縦型橋脚から伸びており、メインガーダーを支えている。このメインガーダーの断面は「I」型をしており、高さが1.5m、幅約40cm、長さ約30mと、サイズが大きすぎるため熱間圧延加工できず、鉄板に「I」の上下のフランジ部分が溶接によりとりつけられた。さらにウェブのサポートとして1.4m毎に縦型のプレートを取り付けた。そして、スパンの中心部分にストレスを集中させないために、メインガーダーの下の部分にカバープレートを溶接で取り付けた。カバープレートはメインガーダーの両端から4.6mのところで終わっており、その部分は角を丸めてストレスの集中を避けた。しかし、ウェブ作成直後から横溶接の端の熱影響部分からひび割れが始まり、深さ3mmのひび割れが76mm全体に及んだ。清掃用に使った酸性の液体がそこから浸透し、腐食が生じた。さらに低温のため、鉄成分が延性を失い、脆性破壊が生じた。
原因 断面図が「I」の鉄鋼は両端の曲げモーメントはほぼ「0」で、中心部分では最大になるため、このタイプの橋には適していなかった。これを補うために取り付けられたカバープレートであるが、カバープレートのエッジ部分の溶接に割れ目が生じていた。これは早期から生じていたものであった。溶接部分が酸性の液で清掃された際に酸が割れ目から入り込み、腐食が生じた。また、低温度によりガーダー成分が延性を失ったこと、そしてカバープレートのエッジに接触する部分に応力が集中したことも要因である。
対処 橋は閉鎖され、横溶接がフランジから削りとられ、検査を行った。86箇所の溶接部分(51%)からひび割れが発見された。
知識化 製品材料の性質をよく理解する必要がある。過去の失敗例から学び、あらゆる事故の可能性を調べることが大事である。また、問題点は他の要素で補うよりも、根本から解決するべきである。
背景 1940年代から50年代にかけて、造船、貯蔵タンク、橋などでの分野で溶接の問題が多々生じており、過去の事例から溶接の問題点を学ぶべきであった。そうすれば、問題の生じやすい溶接加工をできるだけ避けた設計をしていた可能性があり、このような事故につながらなかったかもしれない。
データベース登録の
動機
鉄鋼が重ねられた、一見非常に頑丈な橋が、1年ほどで崩れてしまった理由を伝えたかった。
シナリオ
主シナリオ 無知、知識不足、計画・設計、計画不良、不良現象、機械現象、継手、溶接部位、溶接継手、破損、劣化、脆性、低温脆性、割れ発生・成長、水の浸入、腐食、身体的被害、負傷
情報源 http://mae.carleton.ca/Courses/86412
死者数 0
負傷者数 1
マルチメディアファイル 図2.溶接構造と亀裂発生
備考 負傷者の数は定かではないが、トラックの運転手がなんらかの怪我をした可能性があるので、負傷者1とした。
分野 機械
データ作成者 タカミハマダニ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)