失敗事例

事例名称 化学原料貯蔵庫の火災
代表図
事例発生日付 1992年07月21日
事例発生地 英国 Bradford, Low Moor
事例発生場所 Allied Colloids 社内の原料貯蔵庫
事例概要 原料貯蔵庫内にあった AZDN (おそらくアジ化ナトリウム)の樽が熱で破裂し、袋入りの SPS(おそらく結晶性樹脂) から発火した。
事象 原料貯蔵庫には 酸化及び発火性物質が 2 部屋に貯蔵され、内 1 部屋には氷結に弱い物質を貯蔵するために蒸気暖房装置が設置されていた。蒸気暖房装置はパイプ内に蒸気を通して暖房する仕組。倉庫の湿気を除去するために蒸気暖房装置を運用したところ、複数の AZDN の樽が熱で破裂し、白粉が床に散らばってしまう。当面の危険は無いと判断され、白粉を除去する前に AZDN のデータを提示して真空掃除機製造元に適合性を問い合わせるが、返信を待っている間に AZDN 樽の下部に貯蔵されていた袋入りの SPS から発火。原料貯蔵庫が全焼する。
経過 事故当日の午前中、倉庫の湿気を除去するために蒸気暖房装置を運用した。原料貯蔵庫内の高位置に貯蔵されてあった AZDN の樽の内、2 ~ 3 樽が熱っされて破裂し、白粉が床に散らばってしまう。通りかかった作業員は白粉を煙と間違えて警笛を鳴らすが、粉であると判明。掃除する前に AZDN のデータを提示して真空掃除機製造元まで掃除機の使用が適しているかを問い合わせる。樽の破裂から返信を待っている (50 分) 間に AZDN 樽の下部に貯蔵されていた袋入りの SPS から 300mm の火柱が上がり、数秒後に炎が貯蔵庫全体に回った。
原因 書類上で誤って分類されていたため、AZDN、SPS 及び他の酸化物質が同一の部屋に貯蔵されていた。蒸気暖房装置の動作不良、又は操作員の操作ミスによって倉庫全体が暖房された。貯蔵庫及び倉庫の火災探知及び防火システムが不適切であった。樽の破裂を発見した時点で警察及び消防局に連絡すべきだった。SPS や他の酸化物質が零れていたため、AZDN の樽が破裂して白粉と混ざり、恐らくは破裂した樽の栓や一部が SPS の袋や床に落下した際の衝撃で発火した。
対処 火災となってから消防局に連絡し、同日に鎮火。防火バリケードは清掃中の発火を恐れて 18 日間設置されたままだった。
知識化 酸化及び発火性物質は適切に貯蔵する。事故が起きた場合には、些細なものでも通報する。
シナリオ
主シナリオ 無知、知識不足、過去情報不足、教育・訓練不足、不注意、注意・用心不足、取り扱い不適、環境変化への対応不良、使用環境変化、組織運営不良、構成員不良、構成員経験不足、誤対応行為、連絡不備、不良現象、化学現象、発火、不良現象、化学現象、物質間反応、爆発、不良現象、機械現象、材料的要因、二次災害、損壊、漏洩、汚染、破損、劣化、熱、発熱、機能不全、ハード不良、機械的連鎖反応
情報源 http://www.hse.gov.uk/hid/land/comah/level3/5a591cb.htm
死者数 0
負傷者数 0
物的被害 倉庫は全焼
社会への影響 消火に使用された有害物質を含んだ水が Aire 川及び Calder 川に流れ込んだため、環境が汚染された。
分野 機械
データ作成者 ケイコオオクシ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)