失敗事例

事例名称 原油パイプの原油漏れ事故
代表図
事例発生日付 1996年02月
事例発生地 カナダ、Saskatchewan
事例発生場所 無人ポンプ場
事例概要 カナダで冬の早朝に原油パイプが応力腐食により破裂して、原油が漏れた。しかし、漏れは2時間以内に発見され、原油も雪の上に漏れたため75%が回収された。
事象 冬の早朝、A社の原油パイプが破裂して、原油が漏れた。流量や圧力に異常があったためにすぐに漏れを探し、圧力の異常から2時間以内に漏れの地点が発見され、雪や氷上に流出した原油を75%まで回収することができた。
経過 無人ポンプ場で直径 864mm の原油パイプの圧力の低下及び流量率の増加が起こった。その20分後、アルベルタとウィスカンソンの間で漏れが検知され、縦の鍛接に平行に約 1.76m にも及ぶ破裂が見つかった。約 800m^3 の原油が流出したが、雪や氷の上であったため 75% が回収され、その近辺の生態系に被害を及ばずにすんだ。
原因 縦の鍛接に平行するほぼ中性の応力腐食による破損から腐食が広がった。応力腐食の要因はパイプ表面の温度などの環境、引張応力、パイプを作る鉄材である。
対処 漏れの可能性があると判明した時点で、漏れが予測される地点の上下のバルブをしめ、すぐに専門家を呼んで漏れの発生場所を探した。2時間以内に漏れ発生地点が判明。漏れ出した原油を回収した。圧力の低下が測定されてから約20時間後には、再度パイプに原油を流すことができるようになった。
対策 現在では総合的な応力腐食の監視および管理プログラムが利用されており、この監視活動のデータは今後のより効果的な腐食検知にも役立つようになっている。
知識化 低温下での溶接加工された鋼材は応力腐食や脆性破壊の可能性が高くなる。常に問題が起きた場合の対処を準備し、敏速な対応を行うと、被害を最小に食い止めることができる。
背景 カナダでは40年以上も前に取り付けられた原油やガスのパイプが大量に使用されており、1977年から1996年の間には約22件のパイプの腐食に関する主要問題が発生している。このような問題が起こるのはある程度予測されていたが、長距離にも渡るパイプのどの部分に漏れが発生するかというのは、予知ができなかった。しかし、流量チェックなどによる異常の検知が行われ、異常事態の処置も準備されていたようである。
後日談 新型のパイプには「スマート・ピッグ」というものがつけられており、応力腐食は他の欠陥などを検知できるようになっている。
データベース登録の
動機
腐食による問題が多くあげられているが、これもその1つであり、またこの事故の場合には対処が早かったため、また雪の上に油が流れたという状況に助けられ、事故の被害を最小に食い止めたことを知らせたかったから。
シナリオ
主シナリオ 環境変化への対応不良、使用環境変化、自然的条件変化、経時変化、使用、保守・修理、破損、劣化、脆性、低温脆性、製作、ハード製作、製造工程、鍛接、破損、破壊・損傷、延性、応力腐食、破損、破壊・損傷、割れ発生・成長、破損、破壊・損傷、材料強度不足、破断、原油、二次災害、損壊、漏洩
情報源 http://www.mae.carleton.ca/Courses/86412/
http://www.cctechnologies.com/staff/delanty/
http://www.cctechnologies.com/labs/failureanalyses/index.htm
死者数 0
負傷者数 0
物的被害 原油が漏れた。パイプが破損した。
社会への影響 原油が漏れたのは雪や氷の上であったため、原油を75%回収することができ、環境に影響を及ぼさずにすんだ。
分野 機械
データ作成者 ケイコオオクシ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)