事例名称 |
ムース・ジャウ原油タンクの爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1980年12月 |
事例発生地 |
カナダ、サスカチュワン州 |
事例発生場所 |
ムース・ジャウ原油タンク |
事例概要 |
1953年に製造された原油タンクは、製造当初はガソリンが貯蔵されていたが1979年ごろから原油に使用されるようになり、その約1年後1980年12月、気温が前日の摂氏-1.8度から-27度に急激に低下した早朝、タンクが破裂、爆発した。急激な温度変化により鋼板の延性が失われたこと、溶接に問題があったこと、タンクの貯蔵物がガソリンから原油に変わり、タンクにかかる応力が変化したことなどが原因と見られている。 |
事象 |
1953年に製造された原油タンクは、製造当初はガソリンが貯蔵されていた。1979年ごろから原油に使用されるようになり、その約1年後1980年12月の早朝、気温は前日の摂氏-1.8度から-27度に急激に低下していた。タンクが破裂し、火災が生じ、周辺約4区画を全焼し、爆発によりタンク外輪をタンク周囲の溝の外側に飛ばしてしまった。 |
経過 |
1953年に製造されたこの円筒形貯蔵タンクは当初ガソリンを貯蔵していたが、1979年頃から原油タンクの貯蔵に使用されていた。1980年12月早朝、タンクが破裂し、火災、爆発が生じた(図2)。そのときタンクには約1560万リットルの原油が保存されていた。周辺4区画が全焼し、爆発によってタンクの外輪がタンク周辺に作られていた溝の外側へ飛ばされた。 |
原因 |
このタンクが使用されてから最悪の気温の低下が起こり、鋼板が延性を失った。これを防ぐには鉄の炭素:マンガンの率が3であることが望ましいが、このタンクが製造された頃にはその情報が普及していなかった様子で、このタンクの炭素:マンガンの率は2であった。またこれには人員用入り口としてマンホールが溶接により取り付けられていた。特にこの周辺の溶接に問題があり、脆性破壊が生じたと思われている。また、貯蔵物がガソリンから原油に変えられ、タンク外壁にかかる応力が約25%変化したことも、要因のひとつである。 |
知識化 |
用途の変更という小さな要因も大きな事故の原因を招くこともある。また、急激な天候の変化など、最悪事態を考慮して設計を行う必要がある。また、小さな問題が複合して大きな災害を及ぼす可能性がある。 |
背景 |
気温の急激な変化は予知できなくとも、綿密な点検で溶接箇所からのひび割れ等は事前に発見できた可能性がある。 |
後日談 |
2001年4月、アメリカ環境保護庁は、液体貯蔵タンクの所有者に対し、突然の破壊を予防するよう勧告する安全警告を発した。これは過去二年間に液体肥料貯蔵タンク数基が破裂し、財物破損と環境汚染をもたらしたためで、破裂したタンクはどれも溶接に欠陥があった。 |
データベース登録の 動機 |
頑丈な鋼板で作られた貯蔵タンクの破裂事故が相次ぎ、環境汚染が問題になっているため。 |
シナリオ |
主シナリオ
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無知、知識不足、不注意、注意・用心不足、保守時の不注意、計画・設計、計画不良、誤判断、誤認知、調査・検討の不足、仮想演習不足、環境変化への対応不良、使用環境変化、自然的条件変化、天候変化、不良現象、化学現象、発火、不良現象、化学現象、物質間反応、爆発、不良現象、機械現象、材料的要因、ガソリン、原油、破損、劣化、脆性、低温脆性、破損、破壊・損傷、延性、破損、破壊・損傷、割れ発生・成長、破損、破壊・損傷、材料強度不足、過負荷、想定外負荷、手順、試験
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情報源 |
http://www.mae.carleton.ca/Courses/86412/
http://www.jicosh.gr.jp/Japanese/library/highlight/nsc/01_04/news5.htm
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
原油貯蔵タンク、その周辺の建築物 |
被害金額 |
$850万ドル |
全経済損失 |
4区画にも及ぶ周辺の土地が焼けてしまった。 |
マルチメディアファイル |
図2.ムース・ジャウ原油タンク
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備考 |
被害金額には周辺の清掃も含まれるが、この金額を超えている可能性もある。 |
分野 |
機械
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データ作成者 |
タカミハマダニ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)
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