失敗事例

事例名称 逃し管の亀裂によるリアクター冷却水の漏出
代表図
事例発生日付 1994年12月10日
事例発生地 カナダ、トロント
事例発生場所 A原子力発電所 Pickering 2
事例概要 冷却器からの逃し管に亀裂が入り、冷却水がリアクターの建物内に漏れ出した。
事象 リアクターが自動的に遮断したところ、第一冷却システムに過剰圧力がかかり、逃し管に亀裂が入った。
経過 リアクターの炉心にある冷却システムの排水弁が開かれ、冷却水がコンデンサー (冷却システムの排水タンク) に移された。リアクターの自動遮断後に冷却システム内の圧力が増加したため、コンデンサーの排水圧力弁が開いた。逃し管が激しく振動したため、圧力弁への逃し管の 1 つに亀裂が入り、リアクターのある建物内に 185 トンの冷却水が流れ出した。
原因 すべての CANDU リアクターには同種の炉心冷却システム及びコンデンサー過剰圧力防止装置が設計・使用されているが、リアクターの炉心冷却システムに使用されている排水弁の遮水壁に欠陥があった。また、コンデンサーの逃し弁およびパイプの材質 (銅) などの設計にも欠陥があった。
対処 過熱と熔融を防ぐために、緊急冷却水注入システムが炉心に 140 トンの水を数時間に渡って流し込んだ。作業員が手動ですべての炉心冷却システムにある逃し弁を閉じて、1.5 時間後に水漏れを止めた。約 200 人の作業員が建物に漏れ出した冷却水の清掃作業に当たった。
対策 Atomic Energy Control Board が調査団を設けて、事故原因の調査と現状の監査に当たった。AECB は事故後に設計の修正を行ったリアクタとbleed condenser piping arrangements が異なり、同様の事故が発生する危険性のないリアクタを除く、カナダにあるすべての発電所について、設計の修正を行うように指示した。
知識化 25 年間に渡って 1000 トン以上の重金属が飲料水源である湖に流れ出している。CN$7500000 を費やして配水管や排水弁の入れ替えを行ってきたが、それ以前に欠陥のある CANDU リアクタをすべて停止するべきだった。
背景 重水と天然ウラニウムを燃料に使用する CANDU リアクタには設計的に欠陥があり逃がし弁やパイプの亀裂による事故が顕著であり、1983 年から 1997 年までに A社の Pickering 原子力発電所だけでも 12 件の大事故が発生し、放射能汚染の原因となっている。
後日談 同事故から数ヶ月後に Bruce 5 リアクタで同様の事故が発生した。 Pickering 2 リアクタは 1996 年 2 月 14 日に運転を再開した。A社は 1997 年 8 月 13 日に、1998 年中に古い 7 つのリアクターを閉鎖すると告知した。
当事者ヒアリング Donald Mackay 博士 「重金属は浄化されない。有害で魚類などに蓄積されてしまう。」
シナリオ
主シナリオ 無知、知識不足、誤判断、誤った理解、概念立案ミス、調査・検討の不足、仮想演習不足、調査・検討の不足、事前検討不足、審査・見直し不足、計画・設計、計画不良、破損、破壊・損傷、割れ発生・成長、水の浸入、腐食、二次災害、損壊、漏洩、汚染、延性、応力腐食、過負荷、想定外負荷、流体、流体振動、手順、試験、二次災害、損壊、漏洩、汚染
情報源 http://www.cnp.ca/media/oh-closures-aug-97.html
http://www.energyprobe.org/energyprobe/index.cfm?DSP=content&ContentID=1880
http://www.ecology.at/nni/site.php?site=Pickering
http://www.ccnr.org/Gentilly_Safety.html#tubes
http://www.antenna.nl/wise/366/3597.html
http://www.antenna.nl/wise/436/4306.html
http://www.ncf.carleton.ca/~cz725/cnf_sectionA.htm
http://www.energyprobe.org/energyprobe/images/moles_slides/index.htm
死者数 0
負傷者数 0
物的被害 リアクタが一時閉鎖された。
被害金額 $105000000
分野 機械
データ作成者 ケイコオオクシ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)