事例名称 |
F-111航空機の翼が完全離脱した |
代表図 |
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事例発生日付 |
1969年12月 |
事例発生地 |
アメリカ、ネバダ州 |
事例発生場所 |
ネリス空軍基地 |
事例概要 |
ネリス空軍基地で行われた爆撃の模擬走行時に、米国の航空爆撃機 F-111の翼が飛行中に完全に離れ、操縦士が死亡する事故が起きた。原因は、航空機の翼に適用された鋼素材のひび割れによる。 |
事象 |
ネリス空軍基地で行われた爆撃航程の模擬走行時に、米国の航空爆撃機F-111の翼が飛行中に完全にとれてしまい、試験走行を行っていた操縦士が死亡する事故が起きた。F-111は、可変後退翼(variable-sweep wing、低速のときは翼は胴体に直角に広げているが、高速になると翼を胴体に近づけるように後方に動かす)が特徴付ける多目的戦術用戦闘爆撃機で、海水直上面を超音速で飛行できるなど、低速と超音速の飛行で安定性が改善された。この航空機は1964年後半に飛行を開始し、1967年に作戦用となった。 |
経過 |
F-111の機体は、その翼及び、その取付箇所(wing-pivot fitting)に使用されている高度な強さを持つD6AC鋼の利点が利用されている。この構成要素は、熱処理により4000時間の飛行寿命と10年間の使用を目標に設計された。しかし、米国空軍は、6年以上に渡る実物大の静止試験プログラムにおいて、主翼軸部品の故障を含む幾つもの失敗に直面した。その結果、応力を減ずる手段として、ホウ素で補強する複合材(composit doubler)の先進技術を初めて導入するなどの対策が施され、これにより1万時間以上の安全な飛行が保証されると信じられた。しかし、1969年12月、ネリス空軍基地で行われた爆撃航程の模擬走行時で、機体を急上昇させたときに完全に翼が離脱する事故が起きた。この航空機は事故当時、約100時間しか飛行していなかった。 |
原因 |
最も可能性の高い故障の原因は、F-111航空機の主翼軸部品を支えている主翼ボックス(WCTB)の製造において鍛造物を冷却する間に起こった“冷却割れ”が要因していて、航空機の疲労が伴って事故につながった。高度な硬さを持つD6AC鋼は、主翼軸部品、WCTB、主胴体枠、縦梁と脚の材料に指定されていた。 |
対策 |
事後、米国空軍は、特別委員会を設け、事故の原因、及び対策を究明した。そして、この構成要素は、熱処理の過程で破壊しやすい弱点があったことが判明、その後熱処理方法が改善され、D6ACの強靭さを向上させた。 |
知識化 |
失敗は、構成要素の基本的レベルから徹底的に追求しないと大きな事故につながる可能性が残っている。 |
背景 |
当事故発生以前に、起こりうる故障に関してはすでに修正がF-111に施されていたので、それ以上の故障の予見可能性は不明であった。 |
後日談 |
F-111の故障は、老化に対してきっちり責任をもたなければならないという、航空機設計を導いた重要な事故となり、現在広く適用されている構造設計の故障許容概念となった。そして、部材同士の接合が改善され、老化による損傷があっても機体が継続的に安全に飛行できる有効性が実証された。 |
データベース登録の 動機 |
わずかなひび割れから航空機の翼が完全にとれてしまう結果となった事例の紹介。 |
シナリオ |
主シナリオ
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調査・検討の不足、事前検討不足、審査・見直し不足、不良現象、機械現象、材料的要因、D6AC鋼、製作、ハード製作、製造工程、冷却、製作、ハード製作、製造工程、品質不良、破損、破壊・損傷、割れ発生・成長、破損、劣化、脆性、破損、破壊・損傷、材料強度不足、破損、破壊・損傷、物質疲労、不良現象、機械現象、振動、繰返し応力、手順、試験
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情報源 |
http://www.osha-slc.gov/media/oshnews/apr97/osha97147.html
http://www.globalsecurity.org/military/systems/aircraft/f-111-history.htm
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死者数 |
1 |
負傷者数 |
0 |
備考 |
死者数:乗組員が死亡したという情報のみ。人数は不明。 |
分野 |
機械
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データ作成者 |
ユリエローディ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)
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