失敗事例

事例名称 化学薬品工場の火災で有毒ガスが流出
代表図
事例発生日付 1995年04月10日
事例発生地 アメリカ、ジョージア州サバンナ
事例発生場所 A社
事例概要 ジョージア州サバンナにあるA社の産業用液体化学薬品を扱っている倉庫で爆発と火災が発生、有毒の硫化水素が流出した。工場は、1995年1月から当事故をを引き起こした可燃性のCST(硫酸塩テレビン油)の取り扱いを始めたが、可燃性物資を扱うための装置修正計画が完成されていなかった。
事象 ジョージア州サバンナ郊外に位置する、産業用液体化学薬品を大量に保存している倉庫とその運搬施設があるA社で午後11時30分頃、爆発を伴う火災が発生。炎とともに厚く黒い煙が上がり、工場付近のタウンホームの住民が即座に避難を強いられた。火災により工場は破壊され、完全な消火まで丸3日を要した。
経過 有毒ガスの流出により、工場から1.5マイル以内の住人約2000人が避難し、約300人が病院の救急治療室に運ばれた。付近の住人は引き続く硫化水素の発生により30日以上の避難を強いられた。工場は、鍵付きのゲートとフェンスで完全に囲まれていて、事故当日は、夕方5:50pmに最後の従業員が工場を出てから爆発と火災が発生するまで、工場内には誰もいなかった。コンクリートの壁で覆われた6個の大きな貯蔵タンクがおいてある場所の火災による損傷が最もひどく、火はそこから出火した模様。火災によりそのコンクリートの壁の一部が破壊され、そこから放たれた汚染物質がサバンナ川に流れ出し、川に生息している魚が死亡した。
原因 当事故は、1995年1月7日から工場に保存され始めたCSTがかかわっている。1995年以前は、不可燃性の液体のみ扱う許可がおりている。事故当時、工場は可燃性物資を保存するための修正計画が完全に終了していなかった。火災が発生した当日、契約社員が可燃性液体のCST入っている貯蔵タンクに密封された発砲装置の取り付けを行っていた。これによりCSTの気化物質が空気中に漏れるのを抑え、蒸気制御システムに直接送り込むことができる。蒸気制御システムは、PVCパイプ使用することによって、CSTタンクに接続されている2個の50ガロンドラムに入っている活性炭素でCST気化物質をつかまえて、CSTのガスと臭気を制御する設計になっている。A社の修正計画によると、CST貯蔵タンクは個々に、PVCパイプの接続部分にガス制御装置が装備されているべきであるが、ガス制御装置はまだ設置されていなかった。さらに事故当時、パイプ上に固定されるべき火災保護装置も完成されていなかった。事故の原因となった6個の貯蔵タンクのうち、CSTは3つの貯蔵タンクに保存されており(容量237,000ガロン2個、容量422,0001個)、不完全な蒸気制御システムに接続されていた。残りの3つのタンクには、火の遅延反応剤である水硫化ナトリウム溶液などが保存されており、配合禁忌の化学物質が密閉された同じ場所に保存されていた。これらの6個のタンクと関連するパイプが爆発と火災により損傷し、密閉された場所に内容物が流出。水硫化ナトリウムと化学反応を起こして、強い悪臭のある有毒の硫化水素が発生した。
対策 事故後、環境保護庁より下記の対策を施すよう忠告されている
-専門家による施設設計の見直し。
-活性炭素を使用している設備の温度上昇形成、漏出反応などの可能性を見極める試験。
-可燃性物質の貯蔵タンクと通気システムを起こりうる火災や爆発から防ぐ。
-配合禁忌の化学物質を同じ場所に保存しない。
知識化 危険物資の取り扱いにおいて、安全対策を怠ってはいけない。
背景 可燃性物質を扱うための設備変更が完全に行われていなかったことから、当事故は明らかに予見できた。
データベース登録の
動機
こちらも危険物資の取り扱いの規定を守らず事故を起こした事例であるため。
シナリオ
主シナリオ 調査・検討の不足、事前検討不足、危険物取扱い対策、不注意、注意・用心不足、取り扱い不適、不良現象、化学現象、物質間反応、爆発、有毒ガス、漏洩、汚染、手順、試験
情報源 http://www.epa.gov/swercepp/pubs/pdtirept.pdf
http://www.augustachronicle.com/stories/092401/met_114-5459.000.shtml
死者数 0
負傷者数 300
物的被害 50万ガロンのテレビン油
被害金額 $2300万の清掃費
全経済損失 $180万ドルの賠償金、地方消防署に寄付を強いられた新しい設備費用32万ドル
分野 機械
データ作成者 ユリエローディ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)