事例名称 |
高速道路で重心の高いSUVが転倒 |
代表図 |
|
事例発生日付 |
1991年08月02日 |
事例発生地 |
アメリカ、インディアナ州ラッシュ郡 |
事例発生場所 |
2車線の高速道路上 |
事例概要 |
女性二人がF社のブロンコ車で走行中に、他の車と衝突し車が転倒、二人は車外へ放り出され脳などに障害を負った。事故の原因を巡って、F社と当事者の間で裁判になった。 |
事象 |
女性二人がF社のブロンコ車で高速道路を走行中、他の車と衝突した後、ガードレールを避けようとしたところ車が転倒し、二人は車外へ放り出され脳などに永久的な障害を負った。 |
経過 |
義理の姉妹であるPさんとRさんは、高速道路上で1986年型のF社製ブロンコIIスポーツタイプを運転中に他の車と衝突、その後ガードレールを避けようとしたところ車が転倒、回転した(図1)。二人は車外へ放り出され、Pさんは脳障害を負い、Rさんは脚と顔を負傷した。 |
原因 |
事故で負傷した二人は、ブロンコ車のホイールベース間隔が狭く重心が高いため、重量が分配されにくいことを主張してF社を告訴したが、これに対し被告側は、ブロンコは安定した車に設計されていて、耐衝撃性のすべての基準を満たしている。事故は不幸だが運転者が車のコントロールを失ったからであり、この種の車ではどれも同じ経緯を示すはずだと反論した。 |
対策 |
F社は、SUV型の車が横転しやすい事実を認識していて、ブロンコ車の設計において、車の横幅を増長する、重心を下げるために小さめのタイヤを導入するなどの案が出されていたが、燃費が悪くなる、小さなタイヤは人気がないなどの理由で、対策が見つからないままブロンコ車の生産に踏み切っていた。 |
知識化 |
危険を伴う可能性があるときは、メーカー側は消費者に十分認識させることが重要。また、訴訟が起こった場合も安全性に関して合理的な主張ができるよう留意しながら製品を開発すること、及び訴訟対策として検討の経過をきっちりと記録しておくことが重要。 |
背景 |
SUV車の転倒事故はその人気とともに増加していて、カーブを曲がる際にSUV型は普通車より注意を必要とすることは、すでに消費者の間で認識されていたことから、当事故は予見できた可能性が高い。 |
後日談 |
1995年10月31日、当事故における裁判で、F社はブロンコIIに欠陥があることを認知していたとし、陪審員は6240万ドルを裁定する。そして1996年7月、州の民事訴訟では最高額の1380万ドルをF社が女性二人に支払う評決が出される。F社はこれを上訴するが、最高裁はF社が安全性より利益を追求したとし、これを退けた。 |
よもやま話 |
当事故における最高裁の判決が出される一週間前、同じくブロンコ車の転倒事故で四肢麻痺の障害を負った被害者の裁判で、陪審は被害者にも50 %の過失があったとし、原告が要求していた約半分の賠償金を裁定した。 |
データベース登録の 動機 |
F社側と被害者側の言い分はいずれも理に叶っている。それぞれ50%の原因を追求した事例の紹介。 |
シナリオ |
主シナリオ
|
調査・検討の不足、仮想演習不足、安全対策不足、調査・検討の不足、事前検討不足、審査・見直し不足、不安定、崩壊、構造の問題、試験
|
|
情報源 |
http://www.usatoday.com/money/consumer/autos/mauto700.htm
http://www.jsonline.com/wheels/peak/rollover21699.asp
|
死者数 |
0 |
負傷者数 |
2 |
全経済損失 |
1380万ドルの賠償金 |
社会への影響 |
人気とともに増加しているSUV車の転倒事故の原因を巡る裁判は、全米及び世界的に注目されていた。 |
マルチメディアファイル |
図2.F社ブロンコIIの転倒事故
|
分野 |
機械
|
データ作成者 |
ユリエローディ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)
|