事例名称 |
SUVが後部車軸の故障で横転 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1991年08月03日 |
事例発生地 |
米国アラバマ州 |
事例発生場所 |
路上 |
事例概要 |
SUV の後部車軸が故障して横転した。 |
事象 |
G製の SUV、Blazer を運転中に後部車軸が故障して横転した。 |
経過 |
A氏が妻を助手席に乗せて、G社製の SUV、Blazer を運転中に、後部車軸が故障して横転した。運転席のドアの掛け金に欠陥があったため、ドアが開き、体が車外にはじき出され、永久的に下半身が麻痺してしまった。 |
原因 |
ドアは「タイプ 3」という種類で、掛け金に欠陥があった。G社はテストの結果、欠陥に気付いており、$9150000000 をかけて同車種をリコールし、ドアの掛け金を交換することを検討したが、消費者には欠陥を伏せたまま、$1300000 をかけて生産済の掛け金を廃棄処分したのみであった。 |
対策 |
欠陥部品であることが判明した後、経費節約のためにリコールを行わず車がディーラーにメンテナンスなどで預けられた場合のみに欠陥部品を交換し、訴訟が起こりかけても賠償金を払ってこの事実を8年間隠した。 |
知識化 |
経費節約のために安全性を無視すると、より大きな被害を招く可能性がある。経費の節約は重要ではあるが、その影で何が犠牲になっているかを十分に調べた上、重要性の優先順位を検討する必要がある。 |
背景 |
この部品が欠陥品であることは明らかであった。社内の文書にも記されており、衝撃試験の結果からも明らかであった。1989年にG社は欠陥部品のリコールを考えた。しかし、一台あたりの部品にかかる費用が$3.09、人件費$10、7千万個の交換が必要となるためトータルで部品に2億1600万ドル、人件費に7億ドルかかるため、費用節約のためにリコールは実施せず、「サイレント・リコール」を行った。これは、車の所有者には知らせず、ディーラーのみに知らせ、車が他の理由でディーラーに修理やメンテナンスされる際に、ひそかに欠陥部品を取り替えるというものである。従って、ディーラーに車を修理やメンテナンスに出さなければ、欠陥部品が交換されない状態である。欠陥品であることが明らかになった時点でリコールを行っていれば、A氏は下半身麻痺にならなかったであろう。 |
後日談 |
A氏と妻は G社に勝訴し、G社は彼らに5000万ドルの賠償金を支払った。また裁判所は、G社に1億ドルの罰金の支払いを命じた。 |
よもやま話 |
アメリカの法律では、車の販売後8年以上すぎると、政府はその欠陥車を強制的にリコールをさせることができない。G社はそれをよく理解しており、8年間訴訟が起きてもこの問題を隠すようにしていた。この問題が8年後に浮上したことに関して、G社はウォールストリート・ジャーナル誌に「これは偶然である」と述べている。 |
データベース登録の 動機 |
不況時代には経費節減という言葉が頻繁に使われ、重要度を増しているが、経費を削減するために、人の命を軽く見た大会社の失敗を知らせたかった。また、知らずにこの車を買っていたら、我々が犠牲者になっていた可能性もあるため。 |
シナリオ |
主シナリオ
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調査・検討の不足、事前検討不足、安全対策不足、企画不良、戦略・企画不良、価値観不良、異文化、規範の違い、構造の問題、試験
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情報源 |
http://www.maryalice.com/cases/gm_latch.html
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死者数 |
112 |
負傷者数 |
2 |
物的被害 |
車が破損し、乗員の 1 人が下半身付随となった。 |
全経済損失 |
$150,000,000 |
社会への影響 |
アメリカ市民にこのようなリスクをもたらした会社に対し、裏切られたような気持ちになったG社ユーザーも少なくない。 |
備考 |
事件以外の死者数と負傷者を合わせて 112 名とあり、正確な人数は不明。 |
分野 |
機械
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データ作成者 |
ケイコオオクシ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)
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