失敗事例

事例名称 油注入中にディーゼル油タンクが脆性破壊し油が流出
代表図
事例発生日付 1988年01月
事例発生地 アメリカ、ペンシルバニア州
事例発生場所 フローレフ貨物列車駅ディーゼル油タンク
事例概要 ペンシルバニア州フローレフ貨物列車駅のディーゼル油タンクが破裂し、大量のディーゼル油がその地域に流出した。
事象 ペンシルバニア州フローレフ貨物列車駅のディーゼル油タンクが、充填中、満タン直前に破裂した。タンクは直径36mで、そのときの油の温度は摂氏8度、周囲の気温はー3度であった。約1100万リットルの油が流出し、周囲の溝や下水に入り、飲料水にも影響した。このタンクは1930年代から40年代にオハイオ州に設立され、1986年に分解され、ペンシルバニアに運ばれ、再度組み立てられたものである。各鋼板は従来と同じ形状に組み立てられた。
経過 このタンクは1930年代から40年代にオハイオ州に設立され、1986年に元来の溶接跡にそって酸素アセチレン切断で分解され、ペンシルバニアに運ばれ、再度溶接により組み立てられた。その後1988年1月にタンクに充填中、満タン直前にタンクが破裂した。
原因 ペンシルバニアの冬は厳しく、急激な気温の低下があり、鋼板が延性を失う温度(DBTT)よりも下がってしまった。また溶接加工後、大型保存タンクは応力の緩和が難しく、残留溶接応力が増加した可能性がある。また、溶接加工が十分に浸透していないと、その周辺の金属が延性を失い、残留溶接応力により脆性破壊が生じる。このような要因が存在するところに、大量な油の負荷が加わり、破裂したものとみられている。
知識化 製品がどのような条件下で使用されるかを考慮した上で材料の成分を見極める必要がある。通常の条件下では頑丈なものでも、北部の厳しい冬や南部の暑い夏、その他異なる状況下では、材料の性質が著しく変化する場合がある。
背景 溶接箇所の検査、腐食等が存在していないかなどの徹底した検査と保守を行っていれば、この事故は予見できた可能性がある。
後日談 2001年4月、アメリカ環境保護庁は、液体貯蔵タンクの所有者に対し、突然の破壊を予防するよう勧告する安全警告を発した。これは過去二年間に液体肥料貯蔵タンク数基が破裂し、財物破損と環境汚染をもたらしたためで、破裂したタンクはどれも溶接に欠陥があった。
データベース登録の
動機
頑丈な鋼板で作られた貯蔵タンクの破裂事故が相次ぎ、環境汚染が問題になっているため。
シナリオ
主シナリオ 調査・検討の不足、環境調査不足、安全対策不足、不注意、注意・用心不足、保守時の不注意、調査・検討の不足、事前検討不足、予期せぬ使用環境、低温脆性、延性、溶接部位、溶込み不良、破裂、ディーゼル油、汚染、過負荷、建設
情報源 http://www.mae.carleton.ca/Courses/86412/
http://www.jicosh.gr.jp/Japanese/library/highlight/nsc/01_04/news5.htm
死者数 0
負傷者数 0
社会への影響 タンク周辺の溝や下水に油が流れ込み、そこから水路に入り、上水道にまで影響を及ぼし、大きな環境問題となった。
分野 機械
データ作成者 タカミハマダニ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)