失敗事例

事例名称 杜撰な管理体制により危険性物質放出を引き起こした列車脱線事故
代表図
事例発生日付 2000年05月27日
事例発生地 アメリカ ルイジアナ州 ユーニス
事例発生場所 ユーニスカントリークラブ付近
事例概要 A鉄道のB型列車がアメリカ ルイジアナ州ユーニス付近を走行中に脱線事故を起こした。脱線した車両には危険性物質を積みこんでいたものもあり、事故により爆発、発火をおこし、事故周辺地域に危険性物質を放出する結果となった。事故周辺地域の3500人もの人々が避難を余儀なくされた。事故、危険性物質放出による被害者はなかった。なお、被害総額は3500万ドルを超える。
事象 アメリカ ルイジアナ州ユーニス付近を走行中のA鉄道のB型列車が脱線事故を起こした。列車は113両編成で、そのうち33車両が脱線。脱線した33車両のうち15車両に危険性物質、2車両に危険性残留物が積み込まれていた。脱線事故はそれにとどまらず、爆発、火災を起こし、事故周辺エリア一帯に危険性物質を放出。事故現場周辺の3500人もの人々が避難した。脱線事故、放出された危険性物質による怪我人などの被害者はなかった。なお、被害総額は3500万ドルを超える。
経過 2000年5月27日11:48(中央部時間)ごろ、113両編成を成してルイジアナ州ユーニス付近を走行中のA鉄道のB型列車の33車両が脱線事故を起こした。事故車両のうち15車両に危険性物質、2車両に危険性残留物が積み込まれていた。この事故で爆発、火災が発生、事故周辺エリア一帯に危険性物質を放出するという事態をもたらした。事故現場から北に1マイル、南に0.5マイル、西に2.5マイルの住人など3500人が一時避難。現場付近はユーニスのビジネスエリアでもあるという。この事故で問題となった危険性物質はタンク貨車で輸送されていた。脱線事故とそれに付随して起こった爆発・火災はいわゆる玉突き状態になった事故車両を手の施しようがない程にまで破壊した。幸い、脱線と危険性物質の放出による怪我人等の被害者はなかった。なお、この事故の被害総額は3500万ドルを越えると言われている。
原因 国家運輸安全委員会はB型列車の脱線事故は列車の接合棒の欠陥によるものと断定した。A鉄道の検査頻度には問題はなかったが、そのやり方に問題があったという。同社は軌道検測に移動検測車を使用しており、検査担当者が接合棒等をじっくり検査していたわけでなかったため、ひびが入ったり、壊れたりしている接合棒のほんのわずかな部分しか発見できなかった。本来なら交換されて当然の欠陥を持つ接合棒を、そのまま使用するにいたったのはそのためである。列車乗務員からアルコールや薬物反応は検出されず、事故当時の乗務員の状態はもちろん、天候、列車の運転操作、機械の状態、事故付近の信号システムのいずれも脱線事故を引き起こす要因にはなり得ない。緊急事態の連絡を受けた側の対応も敏速で、その後の処理にも効率的にあたった。この脱線事故はA鉄道のおよそ効果の期待できるものではない軌道検測方法と不十分で杜撰な管理体制が引き起こしたものだと言える。
対処 事故後、列車のエンジニアがA鉄道の通信指令部(テキサス州スプリング)に連絡。事故の目撃者からの緊急連絡を受けたセントランドリパリッシュの911はユーニス警察署、ルイジアナ州警察、州警察危険物課、郡保安事務所に連絡。人々の避難誘導などの対応に敏速で、けが人はなかった。
対策 事故後、国家運輸安全委員会は連邦鉄道管理局(Federal Railroad Administration)、A鉄道、米国鉄道協会(Association of American Railroads)にそれぞれ安全対策勧告を発令した。
知識化 事故列車には危険性物質が積まれていた。このようにまさかの時のことを考えるのは当然のことで、それに加え二次災害を起こす可能性があるかどうか、それに対処できるだけの事前の対策を準備しておくことが必要。
背景 事故の5ヶ月前には128ヶ所にのぼる接合棒の交換がされていたが、事故後、検査担当者はさらに403ヶ所の欠陥を発見。通常の検査方法では発見されず、そのまま使われ続けていたことになる。
後日談 事故後発表された報告書に、積み込まれていた危険性物質についての記載があった。それによるとチアペンタノールの残留物、アクリルアミド、ジクロロプロパン、ジシクロペンタジエン、モウルテンフェノール、ペンタン、トルエンジイソシアネート、クロロメタン、ヘキサン、腐食性液体などが貨物車両に積み込まれていたという。
よもやま話 1995年から事故が起きた年の前年1999年までに、接合棒部分が原因の脱線事故が48件起きていたことが連邦鉄道管理局に報告されている。
データベース登録の
動機
危険物を取り扱う人や会社の意識の薄さが近年目立つ。「まさか」は起こりうるのであり、各々の役割・責任を再認識してほしいと思ったから。
シナリオ
主シナリオ 組織運営不良、管理不良、機能不全、ハード不良、機械・装置、精度、位置合わせ、組織運営不良、運営の硬直化、報告制度不備、破損、大規模破損、脱線、不良現象、化学現象、発火
情報源 http://www.ntsb.gov/Publictn/2002/RAR0203.htm
http://www.ntsb.bov/Pressrel/2002/020402b.htm
死者数 0
負傷者数 0
物的被害 A鉄道車両  事故付近の橋
被害金額 3500万ドル
分野 機械
データ作成者 ジュンコイノウエ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)