事例名称 |
天候不良、認知不良によるチャーター便A社製B-III機の墜落 |
代表図 |
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事例発生日付 |
2001年03月29日 |
事例発生地 |
米国コロラド州アスペン・ピトキン郡空港周辺 |
事例発生場所 |
山の斜面 |
事例概要 |
2001年3月29日午後7時1分、米国カリフォルニア州ロサンジェルス発コロラド州アスペン行きのチャーター便A社製B-III機が、雪による視界不良および操縦ミスでアスペン・ピトキン郡空港の着陸に失敗。滑走路より約732メートル離れた山の急斜面に衝突し、乗客15名および乗員3名、計18名全員が死亡した。同空港の騒音規制のため、事故機は午後6時58分までに着陸しなければ代替空港のライフルまで行かねばならず、アスペン・ピトキン郡空港への着陸チャンスは事故時の一度しかなかった。米国国家運輸安全委員会は、フライト前のミーティングおよび天候確認の徹底を勧告。 |
事象 |
2001年3月29日午後7時1分、ロサンジェルス発アスペン行きのチャーター便A社製B-III機が着陸に失敗し、山の急斜面に衝突して乗客・乗員全員が死亡した。視界不良のため、機長および副操縦士が滑走路の正確な位置を把握できていなかったことが事故の原因。 |
経過 |
2001年3月29日午後5時11分、乗客の到着が遅れたため予定より41分遅れて事故機はロサンジェルス、トム・ブラッドレー空港を離陸した。到着予定のアスペン・ピトキン郡空港は騒音規制を設けているため、同機は午後6時58分までに着陸しなければ代替空港のライフルまで行かなければならなかった。午後6時44分、アスペン・ピトキン郡空港上空に到着したが、他にも着陸許可を待っている飛行機が何機かあった。また、雪が降っていて視界不良のため、着陸許可がでても着陸できずゴー・アラウンドをする飛行機もあった。6時46分に機長が「よく見えないけれど見えるか」と聞いたのに対し、副操縦士が「あまりよくわからない。川以外は見えない」と答えている。6時59分、機長は着陸ギアおよびフラップを要請し、10400フィートから降下し始める。7時0分22秒、機長は管制官から着陸許可をもらう。午後7時0分49秒、管制官が「滑走路が見えるか」と聞いたのに対し、機長が「見える」と答えたのに続き、副操縦士が「右に見える」と答える。が、実際には滑走路は事故機の左側に見えているはずであった。7時1分42秒、高度600フィートの時点においても、機長の「滑走路はどこだ」という問いに対して副操縦士は「滑走路は右だ」と答えている。7時1分47秒、事故機は突然左に旋回し、エンジンを全開。7時1分58秒、40度左翼を下にしながら山の斜面に激突。 |
原因 |
日没後および天候不良(雪)のため、視界が良くなかった。機長および副操縦士が機体の現在位置を把握しておらず、機体から見ると滑走路は左側に見えるはずなのだが、衝突71秒前まで右側だと信じていたところに大きなミスがある。また、アスペン・ピトキン郡空港の騒音規制のため、同機の着陸チャンスは1回しかなかったことも、機長の心理的プレッシャーにつながっていた。機長は着陸態勢に入る前に「1回目のアプローチが成功しなかった場合は、代替空港のライフルに行く。2回目は、夜遅くなるのでチャンスはない」と、他乗員および客室乗務員に声をかけていた。いずれにしても、山に衝突する74秒前の時点でさえ、機長は滑走路を把握できていなかったのだから、他の飛行機のように着陸をあきらめるべきであった。 |
対処 |
アスペン・ピトキン郡空港のオペレーション・ルームでは、事故機墜落直後、墜落を知らせるアラームがなりひびき、すぐに救援隊、消防隊、警察、ボランティアが現場にかけつけた。火災が発生したが、消防隊が到着してから10分後に消滅した。 |
対策 |
国家運輸安全委員会は、直接の事故原因は滑走路の位置を把握していなかったにもかかわらず、着陸体勢入った機長の操縦ミスにあるとしているが、連邦航空局に対し、乗員に視界不良の旨を明確に伝えていなかったとも指摘。フライト前のミーティングの徹底も勧告。 |
知識化 |
無理をすると事故につながる。あきらめる勇気も必要。事故機はチャーター便なので、機長の代替空港へは行きたくない、という気持ちも強かったように思える。着陸体勢に入ってからも、自分自身の目で滑走路を確認できていない状態であったにもかかわらず、無理やり着陸しようとしたことに事故原因があるように思われる。現に、事故機の前に着陸許可が下りた飛行機は、着陸をあきらめた。 |
背景 |
B社所有のA社製B-III機は、 米国カリフォルニア州バーバンク市にあるC社によって運営されている。事故機の機長(44歳)は1990年1月にB-IIIの資格を取得、事故当時の健康状態も良好であった。一方、副操縦士(38歳)は2001年2月に同機種の資格を取得、健康状態も同様に良好であった。事故機のメンテナンス記録も特に問題はない。 |
後日談 |
シリーズはビジネスジェット機市場で最も大きく最も優雅な機体として定評がある。日本航空自衛隊でも、B-IVをベースにした軍用汎用機(U-4多用途支援機)を採用、5機の調達を実施。ターボプロップ機だったB-Iをジェット化したB-II、ジェット化に伴う欠点を改良したB-IIIに次ぐ世代の機体である。B-IVは、III型に比べ延長された胴体や翼端にウイングレットが取り付けられた主翼、構造材の改良による重量軽減と搭載燃料増加などにより大型ビジネスジェット機のベストセラーとなっている。 |
データベース登録の 動機 |
日本と比較すると、騒音規制のための空港閉鎖時間が午後6時58分と早く、その規制が機長のプレッシャーと関係のある事故だったので選択した。 |
シナリオ |
主シナリオ
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誤判断、状況に対する誤判断、誤判断、誤認知、定常動作、誤動作、環境変化への対応不良、使用環境変化、自然的条件変化、雪、破損、大規模破損、衝突、身体的被害、死亡、不良行為、倫理道徳違反
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情報源 |
http://www.ntsb.gov/publictn/2002/AAB0203.htm
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死者数 |
18 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
機体、乗客および乗員の貴金属、持ち物など数々の物品。 |
分野 |
機械
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データ作成者 |
エツタイノ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)
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