失敗事例

事例名称 浸食したツイン橋が嵐のために崩壊、7名死亡
代表図
事例発生日付 1995年03月10日
事例発生地 米国カリフォルニア州コーリンガ近郊アロヨ・パサジェロ貯水池
事例発生場所 貯水池
事例概要 1995年3月10日午前4時15分、米国カリフォルニア州コーリンガ近郊アロヨ・パサジェロ貯水池の上に位置するツイン橋が嵐のため崩壊し、洪水が発生した。橋の上を車で通行中の7人が死亡した。橋の基盤が浸食作用で痛んでいたことが事故原因。ツイン橋は州間高速道路5番の一部であったため、その高速道路が通行止めになり、ビジネスが滞ってしまった。Catrans(カリフォルニア州運輸省)は、高速道路再開のため、鉄道用車両台車を利用して代用の橋を一時的に建設。
事象 事故前日(1995年3月9日)からカリフォルニア州は嵐に見舞われ、雨が激しく降っていた。3月10日午前4時15分、アロヨ・パサジェロ貯水池にかかっている州間高速道路5番ツイン橋が崩壊し、大規模な洪水を併発。3月14日に雨がやみ、事態はようやくおさまる。
経過 1995年3月9日から11日にかけて、カリフォルニア州は嵐に襲われ、激しい雨が降り続いた。アロヨ・パサジェロ貯水池は雨季の冬を除けば枯れていて砂底が見えることが多い。だが、連日の激しく降りそそぐ雨のため、3月10日午前4時15分、ツイン橋が崩壊し、橋の上を通行中の車が被害にまきこまれ、7人が死亡した。その後、貯水池の水はあふれ始め、午後8時30分には毎秒391立法メートルの洪水となって周囲を襲った。洪水は3月11日まで続き、14日になってようやく雨もやみ、堤防および橋の本格的な補修工事が始まった。
原因 橋の基盤部分の浸食作用が原因。嵐のため橋の浸食されていた部分が悪化し、崩壊を招いた。日頃からメンテナンスをきちんとしていれば、橋の崩壊は免れたかもしれない。
対処 ツイン橋の崩壊により州間高速道路5番が通行止めになってしまい、Catransは高速道路再開に頭を痛めた。幸い、Catransのメンテナンス施設が事故現場から80Kmのところにあり、そこにあった鉄道用車両台車を一時的な橋の代用にすることにした。その他、貯水池堤防の補修工事等に従事。
対策 米国水資源省は、アロヨ・パサジェロ貯水池の施設、用水システム、メンテナンス等を検査。従来の用水システムは、嵐時の雨量および土砂に耐えうる設計ではなかったとして、基準を改めた。また、全体的なメンテナンス強化を徹底。
知識化 事故が起きてからでは遅い。メンテナンスの徹底が必要。
背景 橋の代用に鉄道用車両台車を使用するのは、1995年3月10日に崩壊したツイン橋が初めてではない。カリフォルニア州ロサンゼルス近郊でノースリッジ地震(1994年1月)が発生した時に、ローレンス・リブモア国立研究所のW. H. ワトンバーグ氏の発案で初めて適用された。ノースリッジ地震によって崩壊した橋の代用として鉄道用車両台車を使用した。
後日談 代用の橋は、事故からわずか8日後の1995年3月18日午前5時10分に開通したが、それから20時間後に沈み始めた。デッキのグレーティング・システムが大量の交通量に耐えられなかったのだ。Catransはすぐに橋を閉鎖し、デッキの表面に厚さ25mmの板をはり、その上からアスファルトを敷いて補強。1995年3月20日午後12時30分に橋を再開したが、その後は何も問題は起きなかった。
データベース登録の
動機
崩壊した橋の代用に鉄道用車両台車を利用しためずらしい事例なので選択した。
シナリオ
主シナリオ 組織運営不良、管理不良、組織運営不良、運営の硬直化、品管制度不備、環境変化への対応不良、使用環境変化、自然的条件変化、嵐、破損、減肉、腐食、破損、大規模破損、崩壊、身体的被害、死亡、組織の損失、経済的損失
情報源 http://www.tfhrc.gov/pubrds/fall95/p95a2.htm
http://wwwswpao.water.ca.gov/publications/bulletin/95/view/text/cha12.htm
死者数 7
負傷者数 0
物的被害 橋、ビジネス、農場、住宅、自然(洪水による被害も含む)。
社会への影響 鉄道用車両台車を使用して一時的な橋を建築するこができるのだ、という認識が広まった。
備考 ツイン橋建設当初の金額はわからないが、今回の鉄道用車両台車を使用した一時的な橋の建設費用見積もりは約22.8万米ドルだった。これは、最終的な橋の復旧まで高速道路を迂回する損害を考慮すれば、5万米ドルの節約になるという。
分野 機械
データ作成者 エツタイノ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)