失敗事例

事例名称 設計ミス等による鉄道橋の崩壊で75人が死亡
代表図
事例発生日付 1879年12月28日
事例発生地 英国スコットランド州ダンディ市テイ湾
事例発生場所
事例概要 1879年12月28日午後7時15分、英国スコットランド州ダンディ市にあるテイ橋が、嵐に伴う強風のため崩壊し、橋を走行していた機関車6車両および乗客75人がテイ湾に落ち、全員が死亡した。事故の原因は、風圧や風荷重を考慮に入れていなかった設計者トーマス・バウチの設計ミスおよびメンテナンス不足であることが明らかになり、この事故をきっかけにして、橋を設計する時に風が与える影響を考慮するようになった。
事象 1878年に英国スコットランド州ダンディ市のテイ湾をわたる橋として建設されたテイ橋は、建設完了からわずか19か月後の1879年12月28日に崩壊。嵐による強風に橋が耐えられる構造になっていなかったことが主な原因。事故当日午後7時15分、橋を走行中のA社製鉄道機関車が橋の中ほどで客車5両、貨車1両、および乗客75人を乗せたまま、完全に落橋。
経過 1878年にテイ橋は、英国スコットランド州ダンディ市のテイ湾をわたる橋として建設された。総計85径間の錬鉄製ラティストラス鉄道橋であるテイ橋は全長3Kmあり、当時最大の建造物として評判であった。設計者トーマス・バウチは、その偉業をほめたたえられ、ビクトリア女王から爵位を授かる。だが、建設完了からわずか19か月後に、テイ橋は崩壊。事故当日の1879年12月28日、スコットランドは嵐に襲われ、風速30m/秒の強風がテイ湾上を吹き荒れていた。午後7時15分、定刻通りにやってきたA社製鉄道の機関車がテイ橋の中ほどで、突然、橋ごと崩れ落ちた。テイ橋中心部のほぼ1km(85径間のうち13径間連続トラス部)が、機関車客車5両、貨車1両、および乗客75人を乗せたまま落橋。
原因 原因は設計者トーマス・バウチの設計ミスおよび橋のメンテナンス不足で、以下はその詳細。1.橋の対角材が強風に耐えられる構造になっていなかった。2.設計者バウチは風荷重を10lb/sq.ftとしてテイ橋を設計したが、その値は明らかに見積もり不足であった。3.質の悪い鉄が使用されており、寒さのためひび割れていた。4.対角材を留めるパーツがはずれていた。
対処 事故調査委員会が設立され、事故原因が徹底調査された。設計ミスが明白になり、テイ橋設計者のバウチは、当時建設中のフォース鉄道橋プロジェクトからはずされ、テイ橋が崩壊してから10か月後に死亡。
対策 テイ橋崩壊を機に、風圧および風荷重の橋への影響が認識され、風に対して安全で快適な橋を作るための設計方法が研究されるようになった。
知識化 事故が起きてからでは遅い。設計のダブルチェックおよびメンテナンスの徹底が必要。
背景 19世紀半ば、イギリスは鉄道網が網の目のように全土にのびていった時代だった。鉄道会社は自社の鉄道を少しでも延長しようとやっきになった。その鉄道敷設の一番の難所が川や深く入り込んだ湾であり、鉄道会社は利益のため争って鉄道橋を架けようとしていた。そのような時代に、テイ湾をまたぐテイ橋は完成された。
後日談 テイ橋の事故を教訓にして建設されたのがフォース鉄道橋だった。スコットランドのフォース湾に架けられたこの橋は鋼鉄で作られ、「カンチレバー・トラス」という構造形式を採用して1890年に完成した。全長2530m、中央径間521mの橋を二つ組み合わせて建設されたフォース鉄道橋は、中央径間の長さで世界一の橋となり、1917年、カナダのケベック鉄道橋ができるまで首位の座を保持。 テイ橋の落橋事故の後だけに、安全には十分注意が払われ、この橋に使用された鋼材は1000トン、リベットの総数は650万個と、使用された材料・部品も膨大な量となった。完成後、巨大な怪物が足をふんばったような姿から「鋼の恐竜」という名称で親しまれた。頑丈に作られた橋だけに、100年以上たった今日でも列車が通り、鉄道橋として使用されている。
データベース登録の
動機
歴史的建造物の崩壊事故なので選択した。
シナリオ
主シナリオ 計画・設計、計画不良、不注意、注意・用心不足、企画者不注意、計算間違い、環境変化への対応不良、使用環境変化、自然的条件変化、嵐、組織運営不良、管理不良、破損、破壊・損傷、割れ発生・成長、破壊、破損、大規模破損、崩壊、破損、大規模破損、脱線、身体的被害、死亡、コンクリートと鉄筋
情報源 http://filebox.vt.edu/users/aschaeff/tay/tay.html
http://www.tts1.demon.co.uk/tay.html
http://www.kajima.co.jp/gallery/const_museum/hashi/history
/03/main3.html#003
死者数 75
負傷者数 0
物的被害 橋、機関車、機関車内の貨物、乗客の貴金属および荷物等。
社会への影響 イギリスの産業革命を象徴する橋が建設後わずか19か月で崩壊したことに人々はショックを受けた。
分野 機械
データ作成者 エツタイノ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)