失敗事例

事例名称 溶接欠陥等によるガソリン・パイプ破損事故
代表図
事例発生日付 2000年03月09日
事例発生地 テキサス州、グリーンビル(ダラスから約45マイル北東)
事例発生場所 A社のガソリン・パイプライン
事例概要 2000年3月9日の午後10時20分頃(中部標準時)、A会社のパイプ・ラインが破裂した。10時49分頃パイプ管理者は、全てのラインの評価を行う為作業を停止した。この事故でガソリンが、数百フィート、イースト・カド・クリークまで放出し、その翌日には、15マイル(7マイル上流のタワコニ湖まで)にわたって放流した。この事故の原因は、事故以前からあったと思われる縦列の合わせ目の先端の溶接部分の欠陥が、腐食と疲労によって、パイプの破裂を招いたものとされている。それに加え、パイプの塗装が不完全な状態であったことも、今回の事故に寄与したと思われる。
事象 2000年3月9日の午後10時20分頃(中部標準時)、A社のパイプ・ラインが破裂した。10時49分頃パイプ管理者は、全てのラインの評価をする為作業を停止した。この事故でガソリンが、数百フィート、イースト・カド・クリークまで放出、その翌日には、15マイル(7マイル上流のタワコニ湖まで)にわたって放流した。
経過 2000年3月9日の午後10時20分頃(中部標準時)、A社のパイプ・ラインが破裂した。その直後に、グリーンビルのポンプ所の2単位のパイプが、自動的に作業を停止した。事故後約2分後、パイプ管理者は別のポンプにて、作業を開始すると同時に、グリーンビルのポンプ所では、作業員が自動作業停止の原因追求に取りかかった。その約2分後、このポンプも自動的に作業を停止した為、パイプ管理者は、そのラインの作業を停止した。約13分後(10時49分頃)パイプ管理者は全ラインの評価をするため、全ての作業を停止。この時点で、ガソリンが、数百フィート、イースト・カド・クリークまで放出していた。10時59分にA社は、破裂した部分のパイプ・ラインを分離した。翌日午前1時30分、A社の従業員によって、破損パイプを更に隔離するため、主要なバルブを手作業によって閉じられた。事故の翌日の朝には、ガソリンをせき止める為の3つのダムが作られた。この時点でガソリンは2.5マイルに渡って放流。ダム完成後、雨が降り始め、ダムが崩壊し、ガソリンは15マイル(7マイル上流のタワコニ湖)まで放流した。
原因 この事故の原因は、事故以前からあったと思われる縦列の合わせ目の先端の溶接部分の欠陥が、腐食と疲労によって、パイプの破裂を招いたものとされている。それに加え、パイプの塗装が不完全な状態であったことも、今回の事故に貢献したと思われる。
対処 事後直後、問題のパイプ・ラインは自動的に作業を停止し、事後約30分後に、全てのパイプ・ラインは作業を停止し、全ラインの評価が行われた。又、パイプの破裂によって放流したガソリンをせきとめる為のダムが作られた。
対策 事故を起こしたパイプ・ラインが再設置される前に、A社は、パイプのテスト計画を米国州行政府運輸局、研究・特別プログラム管理課に提出。その課においてテスト計画が検討され、許可が出された。このテスト計画には、修理の際の手順設定、事故をおこしたパイプの作業圧力を20%に低減する事、再整理と作業開始の際の手順設定、事故のあったパイプ・ラインの再調査等が含んでいた。又、ライン内部のテストも行われ、数カ所修理が行われた。
知識化 今回事故が起こったパイプラインは、事故が起こる3年前にライン内部の検査が行われ、その時点で特に異常は発見されていなかった。今回の事故原因、以前からあったと思われる縦列の合わせ目の先端の溶接部分の欠陥を発見出来る様な、デバイスをパイプライン内部の検査に使用する必要があると思う。又、パイプの表面(特に塗装の腐食等)を定期的に検査する必要もあると思われる。今回の事故で事故周辺の住民の水の供給源である湖にガソリンが放流していることから、事故が起こった際に、周辺の住民や環境に対し被害を最小限に食い止める為の処置の手順書の作成を各会社に義務付け、それを政府機関に提出させ、検討、承認される必要があると思われる。
背景 この事故の原因となったラインは、カナダのB社で1970年に製造されたもので、パイプ・ラインは同年の1970年に建設されている。パイプの塗装は、このラインが建設中に行われていた。1997年にライン内部を検査する”スマート・ピッグ”が、この問題のパイプラインを通過し、ライイン内部の検査が行われていた。その時にA社の標準に満たないパイプラインは、掘り出され、評価され、修理されていた。この検査では、今回事故が起こった部分については、何の報告も出されていないことから、視覚による検査は行われていなかった。
後日談 2000年12月15日政府は、A社に対し、事故前の圧力でパイプ・ラインの作業を行うことを許可している。
よもやま話 このタワコニ湖は、ダラスとその近郊の市町村の水の主供給源であり、事後の検査でガソリンの成分である、MTBEがその湖から発見された。
データベース登録の
動機
ガソリン・パイプの事故は、その土地の住民や環境に多大な影響を及ぼすので、どんな事故が起こり、被害がどのくらいだったのか、興味があった。
シナリオ
主シナリオ 不注意、注意・用心不足、保守時の不注意、企画不良、戦略・企画不良、試験計画不良、製作、ハード製作、溶接、継ぎ目、破損、破壊・損傷、割れ発生・成長、破損、破壊・損傷、延性、破裂、二次災害、損壊、漏洩、汚染
情報源 http://www.ntsb.gov/publictn/2001/PAB0103.htm
全経済損失 18000000
分野 機械
データ作成者 ヤエココン (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)