事例名称 |
疲労による石油パイプラインの破裂事故 |
代表図 |
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事例発生日付 |
2000年01月27日 |
事例発生地 |
ケンタッキー州、ウィンチェスター付近 |
事例発生場所 |
A社、未加工石油パイプライン(オーエンズボロとキャトルツバーグ間) |
事例概要 |
2000年1月27日の12時12分(中部標準時)、Aパイプライン会社、ケンタッキー州ウィンチェスター近郊の直径24インチのパイプラインの一部が破裂した。この事故により、約11,644バレル(およそ489,000ガロン)の未加工の石油が、事故現場の近くのゴルフ・コースやツーマイル・クリークに流れ出た。事故の原因は、不規則に上下するパイプ内部の圧力が、ある一定のパイプの壁に変形作用をもたらし、パイプに出来ていた窪みが、疲労により破裂したものと思われる。1997年1月のA社が行ったライン内部の検査データーに、この破裂部分に異型(窪みと推定されている)があることが発見されていたが、この時点において、発見された窪みは修理規定に満たないことから、パイプは掘り起こされず又修理も行われなかった。パイプ管理者と作業監督者が、パイプの破裂時、作業活動の停止時、破裂部分をパイプラインから隔離する際に、適時な認識が出来ていなかった為、近郊の土地等に多大な影響を与えた。 |
事象 |
2000年1月27日の12時12分(中部標準時)、Aパイプライン会社、ケンタッキー州ウィンチェスター近郊の直径24インチのパイプラインの一部が破裂した。この事故により、約11,644バレル(およそ489,000ガロン)の未加工の石油が、事故近郊のゴルフコースやツーマイル・クリークに流れ出た。 |
経過 |
2000年1月27日の朝、事故を起こしたパイプラインは、以前から予定されていたキャトルツバーグ・ターミナルの保全のために作業を停止していた。パイプラインは、午前6時59分から作業を停止し、11時12分、パイプラインが通常作業にもどる為に、オーエンズボロの主要なバルブは、フィンドレイ(オハイオ州)作業所のパイプ管理者によって開口された。その2分後パイプラインは通常作業を開始。11時30分頃、パイプラインの漏出を管理するモニター(PLM)から警報が鳴り、監査管理とデーター取得の画面(SCADA)が点滅し始めた。この警報は、液体の流入出が均等でないことを示し、パイプ管理者は、バランスを正常にもどす為、設定部の圧力と流入出量に注意を払った。その後付加のポンプの作業再開を続行した。11時52分SCADAシステムのスクリーンが”正常”となり、警報は解除された。正午12時頃PLMの警報が再び鳴り出し、2時間ラインと4時間ラインのパラメーターのバランスが均等でないことを表示した。12時12分、マラソン・アシュランド・テーツ・クリークとプレストン・ステーション間でパイプラインが破裂した。12時37分、パイプ管理者は、事故を起こしたパイプラインに沿ったポンプ・ステーションの圧力が規定以上に低いのと、キャトルツバーグの流入出量の管理が出来ず、システムを停止し、1時頃、キャツルバーグ下流のバルブは閉じられた。1時28分、オーエンズボロの単一のポンプがパイプラインに圧力を加える為に作業を開始、約1,000バレルの未加工の石油を流したが、圧力は一向に上がらなかった。2時5分パイプラインは作業を停止。2時20分頃、事故の起こった下流の土地所有者から、フィンドレイ作業所に、石油が流れ出ているとの電話があった。その後、プレストンとテーツ・クリーク・ステーションの主要ラインの台材のバルブは、パイプ管理者によって自動的に閉じられた。又、3時30分にA社の従業員4人によって、石油漏出部分の近くにある手動式主要バルブが、閉じられた。 |
原因 |
事故の原因は、不規則に上下するパイプ内部の圧力がある一定のパイプの壁に変形作用をもたらし、パイプに出来ていた窪みが、疲労により破裂したものと思われる。A社が行った、1997年1月のライン内部の検査のデーターに、この破裂部分に異型(窪みと推定されている)があることが発見されていたが、この時点において、発見された窪みは修理規定に満たないことから、パイプは掘り起こされず、修理は行われなかった。又、パイプ管理者と作業監督者が、パイプの破裂時、作業活動の停止時、破裂部分をパイプラインから隔離する際に、適切な認識が出来ていなかった為、近郊の土地等に多大な影響を与えることとなった。 |
対処 |
午後12時37分、パイプ管理者は、事故を起こしたパイプラインに沿ったポンプ・ステーションの圧力が規定以上に低いのと、キャトルツバーグの流入出量の管理が出来ず、システムを停止した。1時頃、キャトルツバーグ下流のバルブは閉じられ、1時28分、オーエンズボロの単一のポンプがパイプラインに圧力を加える為に作業を開始し、約1,000バレルの未加工の石油を流したが、圧力が上がらなかった。2時5分パイプラインは作業を停止。2時20分プレストンとテーツ・クリーク・ステーションの主要ラインの台材のバルブは、パイプ管理者によって自動的に閉鎖され、3時30分にA社の従業員4人によって、漏出部分近くの手動式主要バルブが、閉じられた。 |
対策 |
米国州行政府運輸局、研究・特別プログラム管理課では、A社に対して、社会と環境を守るため、24インチ・パイプライインに必要な矯正対策を取るよう義務づけている。この矯正対策には、20%の圧力減少作業、内部最大作業圧力の分析、パイプのテストや修理、又は、大きな欠陥の見られる部分の作業計画を作成、実行する等の要求が含まれている。 |
知識化 |
今回の事故は、パイプ管理者と作業監督者が、異常が起きた時(PLMアラームが鳴った時点)に的確な判断を下していたら、被害を最小限に食い止めることが出来たと思う為、A社では、異常時の特別処置等の手順書やトレーニングを従業員に行う必要があると思われる。又、1997年に行われているライン内部の検査で、問題のパイプラインの窪みが発見されているにも関わらず、修理規定に満たないとし、修理はされていなかったことから、A社の修理規定の基準を再検討する必要があると思われる。 |
背景 |
1997年1月のライン内部の検査のデーターで、今回破裂したパイプに異型があることが発見され、その異型は窪みであると推測されていた。この時点において、発見された窪みは修理規定に満たないことから、パイプは掘り起こされず、修理は行われなかった。 |
後日談 |
A社は、問題を迅速に発見、又、発見時に効果のある対策が取れる様、2段階に及ぶシュミレーション・トレーニングを管理者に行い、2001年1月には、4人の管理者がこのトレーニングを完了している。 |
よもやま話 |
この事故は被害者を出さなかったものの、2000年12月13日の時点で、A社は、約$7,100,000を事故関連に費やしたと報告している。 |
データベース登録の 動機 |
パイプの事故は、その土地の住民や環境に多大な影響を及ぼすので、どんな事故が起こり、被害がどのらいだったのか、興味があった。 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、運営の硬直化、品管制度不備、無知、知識不足、過去情報不足、使用、運転・使用、不良現象、機械現象、振動、繰返し応力、破損、変形、塑性変形、破損、破壊・損傷、物質疲労、破損、破壊・損傷、破裂、二次災害、環境破壊、漏洩
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情報源 |
http://www.ntsb.gov/publictn/2001/PAB0102.htm
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全経済損失 |
7100000 |
分野 |
機械
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データ作成者 |
ヤエココン (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)
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