事例名称 |
水素ボンベ運搬トレーラーと小型トラックの衝突による火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
2001年05月01日 |
事例発生地 |
米国オクラホマ州ラモナから約3km南 |
事例発生場所 |
国道75号線上 |
事例概要 |
小型トラックが国道上でコントロールを失い、圧縮水素をつめたボンベを運搬中のトラクター・セミトレーラーの走行路に出現し、衝突した。トラクターは転倒し、ボンベが損傷して水素が漏れ、火災が発生した。ボンベは水平にして積み込まれており、正しく固定されておらず、衝撃に対する保護対策が行われていなかった。小型トラックがコントロールを失った理由は不明。 |
事象 |
小型トラックとセミトレーラーを引くトラクターが衝突事故を起こし、トレーラーは転倒。セミトレーラーに積まれていた圧縮水素が詰め込まれたボンベが破損し、水素が漏れ、火災が発生した。トラクターの運転手は死亡し、小型トラックの運転手は重傷を負った。 |
経過 |
可燃性の圧縮水素をつめたボンベ10本を水平にして積んだセミトレーラーを引くトラクターが、国道75号線の左側の車線を時速約65-70マイル(時速104kmから112km)で北に向かって走行していた。同じく北に向かい、右側の車線を走行していた小型トラックがゆっくりと左側の車線に入り、他の車に衝突しそうになり、右側の車線に戻った際、右側路肩の一方通行表示に接触し、再度路上に戻った際に左車線に入り、トラクターの前に進入したため、トラクターの右側前方が小型トラックに衝突した。トラクターは国道上で転倒し、その後路肩へ落ち、さらに90mほど進んだ後に停止した。セミトレーラーはトラクターに接続したままであったが、セミトラクターは横倒しになり、トラクターは完全に逆さ状態になった。積まれていたボンベ一本は外れ、約16m離れた場所へ転がり、他のボンベ、弁、パイプ、取り付け具なども破損し、水素が漏れ始めた。水素は点火し、セミトレーラーの後部を焼いた。小型トラックも路肩に落ち、フェンスに衝突し、燃料供給線が破損し、小型トラックも火災となった。トラクターの運転手は死亡し、小型トラックの運転手は重傷を負った。 |
原因 |
小型トラックとトレーラーの衝突は、小型トラックがコントロールを失ったためであるが、なぜ小型トラックの運転手がコントロールを失ったのかははっきりしていない。この運転手は糖尿病を患っており、各種の薬を使用しているが、事故前の本人の記憶が定かでないため、薬が影響したかどうかは判明していない。事故直後の検査では、血糖値は正常であった。天候は良好で、事故に起因していない。さらに、この衝突が火災に及んだのは、ボンペ、弁、パイプ、取り付け部などが正しく固定されていなかったため、さらにボンベが充分に衝撃などから保護されていなかったためである。トレーラーの運転手は、正常に運転していたが、突然現れた小型トラックは避けられなかった。 |
対処 |
オクラホマ州ワシントン郡の非常対応センターでは、何人からも事故の連絡を受け、ラモナの消防隊が出動。その間、目撃者は小型トラックから運転手を救助した。救急車がその運転手を病院へ運んだ。運搬されていたボンベ会社の社員が偶然その事故現場をとおりかかり、会社役員に連絡し、会社役員も事故現場に出動。水素が事故に関係しているため、他の消防隊も出動。有毒物処理隊も出動。ボンベに水をかけながらボンベの温度をさげ、その間、人々を非難させた。トラクターの運転手は車内から出られない状態であったが、消防隊が救出した。病院に運ばれたが死亡。 |
対策 |
交通保安局は、調査の結果次の提案を行った。有毒物のボンベを水平にして運搬する場合の運搬方法、固定方法等を詳しく定義し、規則とする。またどの方面から衝撃を得ても破損や漏れが起こらないように保護することを義務付ける。 |
知識化 |
たとえ自分が正しい行動をとっていても、周囲の影響から事故に関わることがある。常に最悪の状況に備えて、事故を防ぐ手段をとっておくことが必要である。 |
背景 |
ボンベを水平にして運ぶ際の規則が詳しく設定されていなかった。 |
当事者ヒアリング |
小型トラックの運転者は、「トレーラーが私にぶつかってこなければ、私は車のコントロールを失わなかった。」と語ったが、目撃者の証言や小型トラックが一方通行表示に接触していることから、この発言は立証できなかった。 |
データベース登録の 動機 |
いかに自分は注意を払い行動していても、他人の失敗により事故に巻き込まれることもあるので、その際にも災害を最小にできるようにしておく必要性があることを人々に再認識してもらいたかった。例をあげると、自分では安全運転をする自信があっても、他人の不注意でぶつかられる可能性があるので、常にシートベルト着用するなど、事故が起きても被害を最小にするよう努める。 |
シナリオ |
主シナリオ
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不注意、注意・用心不足、取り扱い不適、破損、大規模破損、衝突、組織運営不良、運営の硬直化、品管制度不備、不良現象、機械現象、相互運動部、外れる、組合不良、水素、不良現象、化学現象、発火、身体的被害、死亡、身体的被害、負傷
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情報源 |
http://www.ntsb.gov/publictn/2002/HZM0202.htm
http://www.ntsb.gov/publictn/2002/HZM0202.pdf
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死者数 |
1 |
負傷者数 |
1 |
物的被害 |
小型トラック、セミトレーラーとそれを引くトラクター、水素およびボンベ、一方通行表示、小型トラックが衝突したフェンス。 |
被害金額 |
155000ドル(約1900万円)。これは物的損害、事故後の清掃、収入の損失の推定合計。 |
全経済損失 |
上記金額および、被害者への賠償金(不明)、 |
社会への影響 |
その近辺の5世帯が避難させられた。国道75号線は12時間通行止めになり、住民に不便を与えた。 |
備考 |
水素は無色無臭で、可燃性が高く、周囲のどのような温度でも発火するおそれがある。無色の炎を出し、空気より軽いので空中で上昇する。 |
分野 |
機械
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データ作成者 |
タカミハマダニ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)
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