事例名称 |
嵐の中貨物船の激突でサンシャイン・スカイウェイ橋が崩壊 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1980年05月09日 |
事例発生地 |
米国フロリダ州タンパ湾 |
事例発生場所 |
タンパ湾に架けられた橋 |
事例概要 |
タンパ湾に架かるサンシャイン・スカイウェイは、設計や建設角度に問題があり、船が橋脚に接触するなどの小さな事故やひび割れ発生などがありながら、対策が取られていなかった。嵐の日、視界が悪く、橋の存在に寸前まで気づかなかった貨物船がサンシャイン・スカイウェイのくいに激突し、約360mに渡って橋が落ちた。その後、橋を通過する車、バスが海へと落ちた。 |
事象 |
嵐の中を運搬船サミット・ベンチャー号がタンパ湾に入ろうとする際、視界が悪くサンシャイン・スカイウェイの南行きのくいに激突し、約360mに渡って橋が落下した。視界が悪いため、通行中の車やバスが橋の事故に気が付かず、海の中に落下してしまった。バス1台、車7台が落下し、35名が死亡。1名が負傷。さらにもう一台の車は橋が落ちている場所のわずかに手前で車を止めることができ、搭乗者3名は這って安全な場所に避難した。 |
経過 |
長さ約180mの貨物船がタンパ湾に向かった。出発時の午前6:25には小雨であったが、7時を過ぎると嵐になり、強風と大雨の中、視界が制限されながらも浮標.を目安に航海を続けた。7:33、視界が悪い中、時速16kmで進んでいると、突然橋が目前に現れた。急に停止することができず、この貨物船はサンシャイン・スカイウェイの南行きのくいに激突し、約360mに渡る片持ち梁およびスパンが45m下の海へ崩れ落ちた。視界の悪い中、橋が崩れていることを知らず、23名の乗客を乗せたシカゴからマイアミへ向かうグレイハウンドバス1台、7台の車が通過し、海の中へ落ちた。35名が死亡し、1名が負傷した。 |
原因 |
嵐の中で視界が悪く、橋が見えなかった。また、橋の設計に欠陥があり、橋の角度が船の通路に対して直角ではなかったため、橋の下を船が通過するのが困難であった。橋には安全デバイスなどが使われていなかった。小さな事故が事前に起きているにも関わらず、対策が取られていなかった。 |
対処 |
船長はすぐに湾岸警備隊に連絡し、援助を要請し、サンシャイン・スカイウェイを通行止めにするよう連絡した。 |
対策 |
新しい橋が建設され、1987年に開通した。この新しい橋は海上約54mにあり、大型船もナビゲートが容易に行えるような角度に設計され、さらに安全デバイスを設置し、予測できる船との接触に対応できるようにした。船が橋を崩壊する事故が起きた際には、非常事態警報システムが作動し、状況を利用者に通報できるシステムも取り入れられた。 |
知識化 |
小さな事故は大きな事故を予言しているので、事故が小さいものであるからと無視し、対策をとらずにいると、大きな事故を招く。 |
背景 |
この橋の開通直前に南行きスパンの橋脚に小さなひび割れが発見されたため、開通が1971年まで延期された。このひび割れは、橋脚が充分な深さまで埋められておらず、底に達していなかったためであった。これに対して何の対策もとられなかった。1972年1月には、離れてしまったはしけが橋脚に激突し、小さな損傷を与えている。1972年6月には、ハリケーン・アグネスにより土手道に侵食が生じた。1980年2月16日には、ギリシャの貨物船がスカイウェイの橋脚のサポートに衝突している。同年2月16日には船が橋の中心のくいにあたり、約3mの大きさのコンクリート部分が欠けた。このような事故が発生していながらも、船が安全に通過できるだけの充分なライトが用意されているとし、対策がとられていなかった。 |
後日談 |
1996年12月に深い霧のため54台の車が衝突するという事故がこの橋で起こった。霧のため視界が悪い中を高速で走る車が事故を起こし、玉突き状態になった。この事故では1名が死亡、25名が負傷した。 |
よもやま話 |
この橋が開通する前にこの橋の名前のコンテストが行われ、「サンシャイン・スカイウェイ」という名前に決定した。この橋が開通するまでは約80kmの道のりの41号線でタンパ湾の周囲を回るか、フェリーを使う必要があったので、この橋は住民の交通の便を向上した。この事故で橋から海中に落ちたが命を取り留めたA氏は、新しい橋が完成した際に、最初の利用者として招待された。その際、亡くなった人たちに敬意を示すために、35本の花を橋の上から海へ流した。また、古い橋は1991年に崩壊されたが、その土手道は残され、魚吊りの場となっている。 |
当事者ヒアリング |
この事故の生存者であるA氏は、車を運転していると突然目の前に橋の破壊部分と船が現れ、船の名前も読み取れるほどであったという。「もうだめだ」と思い、車のブレーキを踏んだが車は海の中へ落ちた。車は船主にあたり、海へ落ちた。一瞬意識を失ったがすぐに意識を取り戻し、運転席の窓をあけて脱出し、橋に衝突した船の乗組員に助けられたという。 |
データベース登録の 動機 |
タンパ湾に架かるこの橋は美しさでも知られているが、その背景にこのような悲しい事故があったことを人々に知らせるとともに、小さな事故発生は大きな事故が起こる前触れである可能性があることを人々に理解してもらいたいと思った。 |
シナリオ |
主シナリオ
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企画不良、戦略・企画不良、試験計画不良、調査・検討の不足、環境調査不足、不注意、注意・用心不足、取り扱い不適、環境変化への対応不良、使用環境変化、自然的条件変化、嵐、破損、劣化、破損、破壊・損傷、割れ発生・成長、破損、大規模破損、崩壊、身体的被害、死亡
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情報源 |
http://www.rushw.com/skyway/
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死者数 |
35 |
負傷者数 |
1 |
物的被害 |
橋, バス1台, 車7台, 貨物船の一部 |
社会への影響 |
通勤にこの橋を利用する人々に衝撃を与えた。この橋が通れない間、通勤者は約80kmの遠回りをするか、フェリーを利用しなければならなくなった。 |
分野 |
機械
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データ作成者 |
タカミハマダニ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)
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