失敗事例

事例名称 強風による発電所冷却タワーの崩壊
代表図
事例発生日付 1961年10月31日
事例発生地 イギリス、フェリーブリッジ
事例発生場所 冷却タワー
事例概要 イギリスのフェリーブリッジ、発電所の冷却タワー8棟のうち3棟が、激しい強風を受けて倒壊。残り5棟も亀裂が入る等の損傷を受けた。幸いにも死傷者や他の被害はなかった。後に、冷却タワーの設計に疑問がもたれ、耐風力構造がイギリスの強風に適応していない事がわかった。
事象 1965年11月1日、イギリスのフェリーブリッジ、発電所の冷却タワー8棟のうち風下に並ぶ3棟が、朝から吹き荒れていた強風の中、突然の激しい強風を横から受け、亀裂が入り、崩壊し始めたところを吹き飛ばされた。1時間内で3棟が次々と崩壊していった。3棟はコンクリート土台を残すのみで全壊。他の5棟も亀裂が入る等の損傷を受けた。幸い死傷者もなく、他への被害もなかった。
経過 1965年11月1日、イギリス、ヨークシャー地方フェリーブリッジ、発電所内に二列縦隊で建てられた8棟の冷却タワー付近では、朝から強風が吹き荒れ、特に風下側の棟は、乱気流の影響で更に激しく風を受けていた。突然風速85マイルの激しい突風を横から受け、風下側のタワーに亀裂が入り始めた。午前10時30分に1Bタワー、午前10時40分に1Aタワー、午前11時20分に2Aタワーが、次々と崩壊し、吹き飛ばされた。この3棟は土台コンクリート部分を残すのみで全壊。他の5棟も亀裂が入る等の損傷を受けた。調査の結果、この冷却タワーの設計で耐風力構造に問題がある事が発覚した。
原因 激しい強風を横から受けた事が直接の原因である。しかし調査の結果、タワー最上部分の耐風力がイギリスの一般強度の19%も下廻っていた事。タワー構造の耐風速度は、単に過去の一分間の平均値によるもので、実際はその何倍もの突風が吹く事は計算されていなかった事。風の影響を受けやすい建築部位を強化保護する等の対策が取られていなかった事。タワー群による風下に対しての乱気流を計算にいれていなかった事。これら4項目の失敗理由から、冷却タワーの耐風力構造に問題があった事が判明。イギリスの強風を軽視したタワーの構造設計が崩壊の最大原因とされた
対処 誰も予測していなかった突然の事態であり、亀裂が入り始めてから一時間も立たないうちに崩壊していったため、何の対処もできないような状態であった。しかし、幸いにも死傷者も他への被害もなく、タワー3棟の単独崩壊のみで済んだ。
対策 今後も冷却タワーの設計には、耐風力構造は欠かせないものである。強風対策を軽視し、崩壊原因となった最大失敗4項目を教訓に、今回の耐風力構造で犯した間違い、計算ミス等を繰返さない事が今後の課題とされた。また、その地域の気候、天気等の特性の詳細データーを元に正しく計算した耐風力測定値を計りだす事も重要な事とした。
知識化 強風による天災かと思われたが、構造ミスによる人災の要因が大きい事が判明。人災は忘れた頃に繰返すと言う、同じミスを繰返してはならない。
背景 1962年に建設された冷却タワー8棟は、高さ375フィート、以前の設計より外郭直径を大きくとった設計で、2列に並列、間隔は通常より狭く建てられていた。
後日談 調査委員会は、人間の試みのおろかな過ちとし、どの会社でも誰の責任でもないとした。
シナリオ
主シナリオ 企画不良、戦略・企画不良、試験計画不良、調査・検討の不足、環境調査不足、環境変化への対応不良、使用環境変化、自然的条件変化、嵐、計画・設計、計画不良、破損、破壊・損傷、材料強度不足、破断、破損、大規模破損、崩壊
情報源 http://www.cen.bris.ac.uk/civil/staff/dib/casehist99/ferrybridge.htm
http://www.knottingley.org/history/tales_and_events.htm
死者数 0
負傷者数 0
物的被害 冷却タワー3棟全壊。5棟損傷。
分野 機械
データ作成者 マユミビンクス (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)