失敗事例

事例名称 燃料切れによるA社航空052便の墜落事故
代表図
事例発生日付 1990年01月15日
事例発生地 アメリカ ニューヨーク州コープ・ネック
事例発生場所 住宅地の林
事例概要 A社航空(本社:コロンビア)A便、B社製B型機が、ニューヨークのジョン・エフ・ケネディー空港に着陸進入中、空港の北約24Kmのニューヨーク州コープ・ネックに墜落し、乗客乗員158名のうち73名が死亡する大惨事となった。
事象 1990年1月25日午後9時34分頃、コロンビアのボゴタから、メデリンを経由してニューヨークに向かっていたA社航空(本社:コロンビア)A便B社製B型機が、ニューヨークのジョン・エフ・ケネディー空港に着陸進入中、空港の北約24Kmのニューヨーク州コープ・ネックに墜落した。事故機には運航乗務員3名、客室乗務員6名、乗客149名の計158名が搭乗していたが、乗員8名、乗客65名の73名が死亡し、81名が重傷を負い、4名が軽傷を負った。
経過 1990年1月25日21時34分、A社航空A便(B社製B型機)が悪天候の中、1時間17分にわたるホールディング中に代替空港のボストン・ローガン空港までの必要燃料を使い果たし向かうことが出来なくなった。事故機は悪天候のため、墜落の2時間半前から3度にわたり合計1時間17分間にも及ぶ空中待機をしており、パイロットも燃料切れの危険性を十分認識していたにもかかわらず、緊急事態を宣言しなかったために、2度目の着陸試行の際に燃料が切れ、エンジンが全てフレームアウトし墜落した。
原因 緊急事態を宣言しなかった原因としては、エマージェンシーとプライオリティを同義語と考えていたクルーの英語力の不足が挙げられているが、交信を担当していた副操縦士は、燃料の窮状を強く主張するのをためらっており、NTSBは副操縦士の交信内容について完全に分裂していると述べている。副操縦士以外には事故機のパイロットの中に英語が分かる者はいなかった。その他パイロットに対する要因だけをあげると「(1)もう一度のアプローチの燃料はあるだろう。(2)燃料残が少なくてもすぐにはフレームアウトしないだろう。(3)エマージェンシーを宣言して着陸すればFAAが燃料の残量を計算するがその時燃料に余裕があれば他の航空会社やFAAに迷惑をかけてしまうので、プロの誇りが宣言することを躊躇させた。(4)パイロットの英語力が限られたもので、表現が曖昧な意味になってしまい、管制に対し緊急事態の状況が明確に伝えられなかった。(5)キャプテンとコ・パイロットとのクルー・コーディネイションが悪く意志疎通が破綻してしまった。(6)ATC用語の使用に一貫性がなかったため、パイロットは単に「代替のボストンまでの燃料はもうない」とか「燃料がなくなりそうだ」とかの表現で緊急事態を管制に伝えたが、管制側は「エマージェンシー」という言葉をパイロットが使用しなかったため優先扱いの措置を取らなかった」などが考えられる。
対処 管制塔に遠まわしな表現ではなく、的確にエマージェンシーであることを伝えるべきであった。
対策 訓練の見直し、クルーとディスパッチャーとの連携、ATC用語の使用の一貫性を整え、言語の違うものでも緊急時のやり取りが明確にできるシステムをかんがえなければならない。
知識化 多くの人の命を預かる飛行機の乗り組み員は運転能力だけでなく、多くの人が現在共通語と考える英語を理解できるものを採用するべきである。
よもやま話 この事故によりB社製B型機とB社製C型機の全損事故は通算100件となった。
シナリオ
主シナリオ 無知、知識不足、過去情報不足、教育・訓練不足、価値観不良、異文化、規範の違い、価値観不良、安全意識不良、安全対策不足、使用、運転・使用、手順、非定常操作、緊急操作、進路変更、非定常操作、緊急操作、停止、緊急停止、破損、大規模破損、墜落
情報源 http://www004.upp.so-net.ne.jp/civil_aviation/cadb/wadr/accident/19900125a.htm
http://www.ganet97.com/monthlynews/back1097/flightsafety.htm
死者数 73
負傷者数 85
分野 機械
データ作成者 ユミコホンマ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)