失敗事例

事例名称 建物構造のアンバランスによる校舎崩壊事故
代表図
事例発生日付 2002年03月23日
事例発生地 レバノン ベイルート
事例発生場所 ベイルート中心部 マズラ崖道
事例概要 レバノンの首都 ベイルートの中心部で7階建ての校舎が修復中に倒壊し、現場作業員1人を含む、4人が死亡した。倒壊のあった付近は店やレストランなどが並ぶ商業地区で土曜日などは人の通りも多く、にぎやかな場所。倒壊した建物は学校として使われていたが、土曜日だったため授業はされておらず、多数の犠牲者を出すという最悪の事態はまぬがれた。テロの可能性も否定されている。
事象 レバノンの首都 ベイルートのマズラ崖道で、学校として使われ、現在修復中の建物が倒壊し、現場作業員1人、通りを走行中の車を運転していた男性1人、崩れ落ちた建物の下敷きになった車に乗っていた女性2人の計4人の死亡が確認された。事故現場となったのは3月27日、28日に開催されるアラブサミットの会場、シティセンターホテルから約3キロの所。通りは店、レストランが建ち並ぶ活気のあふれる商業地域で、事故直後はテロの可能性も取り沙汰されたが、その後その可能性は否定された。土曜日だったため、授業は行われておらず、多数の犠牲者は出なかった。
経過 レバノンの首都 ベイルートで7階建ての校舎建物の倒壊事故があったのは2002年3月23日、現地時間の12:30ごろ。「はじめは小さな地震かと思った。」と近所の店の店員が言うように、校舎はまるで食器棚でも揺れるように横揺れしていた。そして、その後轟くような音をたてて崩れ落ち、辺りは一変、瓦礫の山と化した。周辺の建物は、1975年から1990年の内戦、1982年のイスラエルの侵略の際の激しい爆撃によるダメージを受けているものがあり、倒壊した校舎も例外でなく、修復作業が行われていた。当日は土曜日で、授業は行われていなかったため生徒達は被害にあわずにすんだが、事故当時、15人の作業員が修復作業にかかっており、その内の1人がこの事故で死亡した。そして、建物が崩れ落ちたその時に通りかかった車の運転手の男性、瓦礫の下敷きになった車に乗っていた女性2人が死亡した。ちょうど、27日、28日にアラブサミットが予定されており、その会場となったシティセンターホテルも事故現場から約3キロと近かったため、テロの可能性も取り沙汰されたがその後否定された。
原因 倒壊した校舎建物の下2階部分までは1960年代に、サンドストーン(砥石)を用いて建造されたが、しっかりとした基礎(土台)部分がなかったか、あるいは鉄筋の支柱がないまま建てられたと思われる。その後、3階から7階部分は鉄筋コンクリートを使って後から付け足しされた形で造られ事故当日に至った。下の古い造りの上に重くのしかかったコンクリートの5階分は、ビルの構造上、正しい計算をされて造られているとは言えず、建物構造のアンバランスで歪みが生じ、この倒壊事故が起こったと思われる。その間、ベイルートでは内戦などがあり、爆撃により建物はかなりのダメージを受け、老朽化が進んでいたこともまた事故の一因になったと考えられる。市は築後30年を経過した建物について修復の許可を出していたが、建物自体が修復作業に耐えうる物だったかどうかは疑わしい。
対処 事故直後、エミール大統領は検察当局に事故の詳細、原因を調査し、必要措置をとるように依頼した。検察当局はベイルート自治体、開発復興議会などを召集し、周辺の既存の建物について安全性の確認をした。民間防衛対策班・赤十字・軍隊・警察・消防隊・レスキュー隊が生存者の確認・救済、倒壊した校舎の瓦礫の撤去、被害者4人の遺体の収容にあたった。
対策 運輸・公共事業委員会は事故後の緊急会議の後、内務省に救援活動の改善策案の編成を要求。さらに、既存のビルが修復に耐えうるかどうかの厳しい調査に基づいて修復許可を出すよう提案した。そして、自治体に対しても、ビルの安全性を定期的に調査する委員会の設置を呼びかけた。
知識化 商業地域など人の集まる場所では、このような事故が起こると被害が予想以上に拡大することがある。自治体などの機関は、ビルの老朽化のチェック、構造の見直し等、随時すすめて行くことが必要。
背景 事故のあったマズラ崖道付近は1975年から1990年の内戦、1982年のイスラエル軍の侵略時の激しい爆撃によりダメージを受けた建物があり、倒壊した建物もダメージを受け廃校になっていたものを再び学校として再開し、最近修復作業に取りかかったところだった。
後日談 事故当時、ビルの修復にあたっていた作業員が15人いたことがわかった。ベイルート フリーメーソン連合は、現場で作業をする者たちの安全管理を怠った、建設会社に対し、法的手段に訴えることを発表した。
よもやま話 ベイルートの多くの建物は内戦時に相当なダメージを受けてはいるが、構造が原因で倒壊するのはまれでだといわれている。しかし、2000年11月6人の死者、20名以上のけが人を出したナーメでの4階建てアパート二棟の倒壊、1999年2月にはベイルートの東 カハレ村では4人の死亡者を出した住宅の倒壊事故も起こっている。
データベース登録の
動機
古い物をそのまま使い続け、残すことはいいことではあるが、安全にかつ有効的に使い続けるためにはそれなりの手入れが必要で、この様な事故を起こさないために政府機関、自治体が率先して動くための資料になると思うから。
シナリオ
主シナリオ 誤判断、狭い視野、規格不良、価値観不良、安全意識不良、安全対策不足、非定常行為、変更、設計変更、破損、劣化、脆性、破損、大規模破損、崩壊、身体的被害、死亡
情報源 http://www.redding.com/news/apafternoonupdate/past
/20020323aptop071.shtml
http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/middle_east/1889460.stm
死者数 4
負傷者数 2
物的被害 倒壊した校舎、付近の建物などの破損
分野 機械
データ作成者 ジュンコイノウエ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)