事例名称 |
小田急小田原線レール破断 |
代表図 |
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事例発生日付 |
2001年12月17日 |
事例発生地 |
神奈川県川崎市多摩区 |
事例発生場所 |
小田急小田原線向ヶ丘遊園-生田駅間の生田駅付近の踏切 |
機器 |
線路レール |
事例概要 |
12月17日朝、小田急小田原線生田駅付近の踏切で、線路レールが破断し、同線は一時運転を見合せ、7万人の利用者に影響が出た。 破断した箇所は溶接部で、近々に交換する予定を理由に、4年に1回の検査を実施していなかったことが原因である。 |
事象 |
12月17日朝、川崎市多摩区の小田急小田原線生田駅付近の踏切で、線路にき裂が入っているのが見つかった。同線は向ヶ丘遊園-新百合ヶ丘駅間で一時運転を見合わせ、それ以外の区間で折り返し運転を行った。JRや別の私鉄、バスなどによる振り替え輸送を実施したが、朝の通勤・通学客ら少なくとも約7万人に影響が出た。 小田急電鉄によると、同日午前5時34分ごろ、向ヶ丘遊園-生田駅間で信号が赤表示となっていたため、新宿発小田原行きの下り各駅停車が停止した。その後も信号が変わらないため、社内規定に基づき、後続列車も現場で一時停止したうえで、目視で安全を確認しながら運転を続けた。 その後、午前8時7分ごろ、保線係員が生田駅付近の踏切でレールにほぼ垂直にき裂が入っているのを発見した。このため、午前8時10分に全線で運転を停止した。 同8時24分からは向ヶ丘遊園-新百合ヶ丘駅間の上下線のみ見合わせとし、レールの両側から鉄板をあてて補強する仮補修を行った。運転は午前9時55分に再開されたが、本格的なレール交換は終電後に行う。 調べでは、下り線レールの1本が破断して、ほぼ真横に15mmほどのすき間ができていた。これにより線路を使った回路に電気が流れなくなり、信号が赤のままになったらしい。小田急電鉄で詳しい原因を調べているが、き裂は人為的なものではない模様だ。 小田急電鉄広報部によると「7万人」という影響人員数は、運転を見合わせた午前8時10分から午前9時55分の間に向ヶ丘遊園-生田駅間で列車を利用したと推定される乗客数だという。1996年の交通量調査をもとにしている。実際にはほかの区間でもダイヤは大幅に乱れているため、影響のあった利用者はこの数を相当上回るとみられる。 |
経過 |
事故の影響を以下に示す。 ○ 新宿駅 通勤客や観光客らが集まる新宿駅。駅員は、朝からハンドマイクを手に「ダイヤが大幅に乱れています。特急の運転再開は午後になります」と繰り返す。利用者らは駅員を囲み「ロマンスカーはだめなのか」などと説明を求めた。 特急・ロマンスカーで箱根に向かう予定だった東京都品川区の理容業(55)は「午後から箱根で研修会がある。車を出してもらおうと思ってます。徐行運転の列車よりは速いでしょう」と話した。 運転再開直後の午前10時前、到着列車から出て来たサラリーマンらが、駅員から遅延証明書をひったくるようにして改札を抜けて行った。 ○ 町田駅 町田駅では、午前8時20分ごろ上下線とも止まった。改札口や構内では、復旧状況や振り替え輸送について、駅員らが説明に追われた。 相模原市の会社員(37)は「仕事の待ち合わせに遅れて困っている。振り替え輸送で行ったほうがいいのか判断がつかない」と話した。 ○ 新百合ヶ丘駅 新百合ヶ丘駅では、乗客数百人がプラットホームの内外で電車の運転の再開を待った。小田急はバス17台を出して同駅と向ヶ丘遊園駅間で代替輸送した。午前10時前、電車の運行が復旧すると、職場や学校に急ぐ人たちが改札口に殺到し、身動きの取れない混雑になった。 約1時間待たされたという川崎市麻生区上麻生の会社員(52)は「こんなことは初めて。待つしかなかった」。 |
原因 |
小田急線でレールが破断して一時不通となった問題で、小田急電鉄は12月18日、破断した部分と同様の溶接をしていたレールの一斉点検を行う方針を決めた。 溶接場所は4年に1度の定期検査をする内規になっているが、破断場所は近くレールを交換することを理由に検査をしていなかった。同社は交換時期が近い場合は検査をしない運用方針はあったが、今後は交換予定があっても検査することにした。 |
対処 |
同社によると、レールが破断した川崎市多摩区の踏切付近は、レールを現場で溶接して長くつなげている。溶接部分は、内部が劣化していないか確認するため、4年に1回の超音波検査を内規で定めている。今回破断した部分の前回検査は1997年1月だったが、レールが古くなって2002年2月までに交換する予定だったことから「近々に高度の更新をする場合は、それで代用する」という運用で検査をしなかった。 同社では同様の溶接方法を行った東京都世田谷区の経堂駅でも2000年2月に破断が起きていたが、一斉点検などの再発防止策はとっていなかった。 |
対策 |
検査の内規と運用を見直し、再発防止策を立てる必要がある。 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、使用、保守・修理、検査不良、レール、破損、破壊・損傷、破壊・破断、社会の被害、社会機能不全、インフラ機能不全、運転見合わせ
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情報源 |
(1) 小田急、線路破断で混乱、朝日新聞(夕刊)、2001年12月17日(月) (2) レール一斉点検へ、朝日新聞(夕刊)、2001年12月18日(火)
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
マルチメディアファイル |
図1.破断したレール
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分野 |
材料
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データ作成者 |
小林 英男 (東京工業大学)
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