失敗事例

事例名称 JR東海道・山陽新幹線のブレーキディスク固定ボルトの破損
代表図
事例発生日付 2002年03月01日
事例発生地 東京都
事例発生場所 東京駅
機器 ブレーキディスク固定ボルト
事例概要 2002年3月1日に、JR東海道・山陽新幹線の東京駅発 新大阪駅行きの「のぞみ」で、車輪にブレーキディスクを固定するボルトの1本が折れているのが見つかった。ボルトは、過去10年間に116本が破損している。JR東海とJR西日本は、これまで3度、ボルトの材質などを変える改善措置をとったが、事故はなくなっていない。
事象 2002年3月1日に、JR東海道・山陽新幹線の東京駅発 新大阪駅行きの「のぞみ」で、車輪にブレーキディスクを固定する12本のボルトのうちの1本が折れているのが見つかった。
ボルトは直径30 mm、長さ170 mm、質量800 gのCr合金鋼製で、12本でブレーキディスクを車輪に固定している。1車両のブレーキディスク数は8基、ボルトの総数は96本である。
経過 JR東海道・山陽新幹線で、車輪にブレーキディスクを固定しているボルトが、過去10年間で116本折れていたことがわかった。JR東海とJR西日本は、これまで3度、ボルトの材質などを変える改善措置をとったが、事故はなくなっていない。
両社はコスト削減を目指して2002年4月以降、車両の点検周期を長くする方針を決めた。ボルト破損については、「安全走行に問題はない。」としているが、国土交通省鉄道局は点検周期延長に難色を示している。
2001年5月には、静岡県内を走行中の東京駅発 新大阪駅行き「ひかり」のボルトからはずれたナットが、約10 m離れた民家へ飛んだ事故が発生した。
JR東海とJR西日本は1997年に、特殊加工して強度を増したボルトに交換した。2000年には、ボルトの軸に凹凸を作り、加わる力を分散させた。さらに、2001年に、座金の形を変えた。それでも、2002年3月1日に、東京駅発 新大阪駅行きの「のぞみ」のボルト1本が折れているのが見つかった。
開業時の「ひかり」の最高速度は210 km / 時であった。現在の「のぞみ」の最高速度は300 km / 時に上がっており、ボルトに加わる力が増していることなどが原因に考えられるが、詳しいことはわかっていない。
国土交通省鉄道局は、「規則は緩和したが、鉄道は安全確保が大前提だ。本当に大丈夫なのかという疑問がぬぐえない。」としている。
東海道、山陽新幹線で問題になっているブレーキディスクの取り付けボルトの破損が、長野新幹線でも起きていたことが2002年5月1日、分かった。破損したボルトは2本だが、JR東日本によると、同じタイプのボルトは、東北、上越、山形、秋田を含めた5新幹線の約1100両で約10万本を使用している。同社は7月下旬から順次、強度を高めたボルトへの取り換えを決めた。
同社によると、1997年10月の開業から約1年4ヵ月後の1999年2月、長野市内の車両基地で、8号車の3軸目の車輪でディスクに12本あるボルトのうち1本が欠落しているのが通常の検査で見つかった。落ちたボルトは発見されなかった。2002年2月には、全体的な検査を行う宮城県内の車両基地で、長野新幹線の4号車のボルト1本がネジ山の部分で折れているのが見つかった。ボルトの一部はディスクに残っており、残りは車体のカバーの中から見つかった。
同社は1999年の破損後、ボルトの表面処理や熱処理の改善、ナットの形状を変えるなどの再発防止策を実施した。だが、2回目の破損は、その対策済みの部分で起きた。新たにボルトのネジ山部分の太さを24 mmから26 mmにして強度を高めることにした。
新幹線のブレーキディスクのボルトは、JR東海の車両で101本、JR西日本の車両で16本破損している。
原因 不明
対処 不明
対策 ○ 特殊加工で強度増大
○ ボルトの軸に凹凸の加工
○ 座金の形状変更
知識化 同じ事故の繰返し
シナリオ
主シナリオ 調査・検討の不足、事前検討不足、製作、ハード製作、機械・機器の製造、ボルト製造、使用、運転・使用、機械の運転・操縦、新幹線、ブレーキディスク、固定ボルト、破損、破壊・損傷、ボルト破損、使用、保守・修理、点検、点検周期延長、起こり得る被害、潜在危険
情報源 (1)東海道山陽新幹線ボルト破損止まらず、朝日新聞、2002年4月4日(木)
(2)ボルト破損長野新幹線も、朝日新聞、2002年5月2日(木)
死者数 0
負傷者数 0
マルチメディアファイル 図1.東海道・山陽新幹線のブレーキディスクとボルト
分野 材料
データ作成者 小林 英男 (東京工業大学)