事例名称 |
空冷式熱交換器のチューブ破損・火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
2000年02月 |
事例発生地 |
北海道 |
機器 |
重油直接脱硫装置 |
事例概要 |
製油所で重油直接脱硫装置の通常運転を行っていたところ,高温高圧分離槽の出口側に取り付けられた空冷式熱交換器付近より火災が発生した. |
事象 |
(1)フォールトツリー解析の結果 ○ 図2 破壊形態,破壊のメカニズムとプロセスに着目したフォールトツリー図 重油中の硫黄,塩素,及び窒素から生成される硫化アンモニウム及び塩化アンモニウムの析出を防止するために蒸留水を断続的に注入するため,フィンチューブ中は気液混合状態になっている.往路においてフィンチューブ内で洗浄水に溶解した塩化アンモニウムが,復路において管板からの伝熱(約120℃)により内部流体(80℃~40℃)が再加熱された.その温度上昇により液体中の塩化アンモニウムが蒸発し塩酸が生成し酸性環境下においてエロージョン/コロージョン(E/C)を起こしフィンチューブが破損した. ○ 図3 機器の設計と製作における不適切に着目したフォールトツリー図 フィンチューブ破損は復路の最上段において生じた.2パスの角型ヘッダーは上段が約120℃,下段が約40℃であり往路のフィンチューブで下部からの冷却空気により内部溶液は約120℃から約80℃にまで冷却される.さらに復路において約40℃まで冷却を行うが,復路最上段が高温角型ヘッダーから伝熱を受け温度が上昇した.水溶液の再加熱が起こった.原因は角型ヘッダー,フィンチューブ間の構造設計,また空冷機構設計の不適切による. さらに冷却用空気がフィンチューブ両端において十分に循環できないことも端部で温度上昇を起こす一つの要因となった. ○ 図4 機器の負荷履歴,環境と材料に着目したフォールトツリー図 当該装置は国外の技術であったため,我国での環境に合わせて運転していた.具体的には仕様設定より空冷ファンの動力を下げて使用していた.その結果,管の間を流れる冷却空気の流速分布は変わり,隅の部分には風が届かなかったことも液温を上昇させた原因だと考えられる.国外の技術を国内で使用する際には環境の差異を考慮し,仕様設定を変更してもよいか検証する必要がある. (2)イベントツリー解析の結果 ○ 図5 酸性下の混合流によるエロージョン/コロージョン損傷のイベントツリー図 角型ヘッダー,フィンチューブ間において高温部と低温部が断熱できていない上に冷却用ファンの出力が弱かったために,熱伝導により復路フィンチューブ最上段の出口付近において管板を通じて内部溶液温度が上昇し内溶液中のNH4Clが反応しHClが生成し腐食環境を生んだ.また復路フィンチューブは上段に行くほど流量が少なくなっており,これはHCl濃度を高くし結果的にE/Cを引き起こした. |
経過 |
当該装置は事故の15ヶ月前に処理能力を約10%増強している |
原因 |
(1)処理能力を約10%増強して運転したため,流速が速くなっていた. (2)フィンチューブの最上段では流量が少なく,気相の比が大きかったため流速が速くなった. (3)破損部が端の管であるために,冷却空気で冷却しにくい箇所であった. (4)高温角型ヘッダーに隣接しているために,熱伝導によって加熱されている. (5)高濃度塩酸水溶液が流れている. (6)仕様設定条件を変更したこと. |
対策 |
(1)角型ヘッダーの高温部と低温部の熱伝導を防ぐ. (2)管内流体の流動解析をすることによって腐食されやすい箇所を検討し、点検する. (3)仕様設定条件を変更する際に支障がないかを検討する. |
知識化 |
他社技術を採用するとき環境の差異を考慮すること「アセスメント」 |
シナリオ |
主シナリオ
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無知、知識不足、思い込み、計画・設計、計画不良、設計不良、熱交換器のフィンチューブ、空冷機構の不適切、使用、運転・使用、機械の運転・操縦、仕様設定条件の変更、不良現象、熱流体現象、熱現象、温度上昇、酸性環境の生成、破損、減肉、エロージョン・コロージョン、肉厚貫通、漏洩、二次災害、損壊、火災
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情報源 |
高圧ガス保安協会
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
マルチメディアファイル |
図1.空冷式熱交換器の構造
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図2.破壊形態、破壊のメカニズムとプロセスに着目したフォールトツリー図
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図3.機器の設計と製作における不適切に着目したフォールトツリー図
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図4.機器の負荷履歴、環境と材料に着目したフォールトツリー図
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図5.酸性下の混合流によるエロージョン/コロージョン損傷のイベントツリー図
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分野 |
材料
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データ作成者 |
小林 英男 (東京工業大学)
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