事例名称 |
敦賀発電所2号機化学体積制御系配管からの一次冷却水漏えい |
代表図 |
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事例発生日付 |
1996年12月24日 |
事例発生地 |
福井県敦賀市 |
事例発生場所 |
日本原子力発電株式会社 敦賀発電所2号機 |
機器 |
化学体積制御系抽出配管エルボ |
事例概要 |
エルボ製造段階においてエルボ内表面に不純物(亜鉛)が付着したため低融点金属割れが発生し、その後き裂が徐々に進行し貫通に至り漏えいした。 |
事象 |
(1) 図2 破壊形態、破壊のメカニズムとプロセスに着目したフォールトツリー図 エルボ製造時に亜鉛が付着し低融点金属割れが発生したエルボを使用したために起動停止・運転圧力によりき裂が成長し貫通・漏えいに至った。 (2) 図3 設計・製造における不適切・不良に着目したフォールトツリー図 エルボ製造時に偶然亜鉛が付着したままエルボ製造のための熱間での曲げ加工を実施したため亜鉛による低融点金属割れが生じた。このエルボ内面の検査が行われなかったことから発電所に施行され供用されることとなった。 (3) 図4 機器の負荷履歴・環境と材料に着目したフォールトツリー図 機器の負荷履歴、環境及び材料に着目し検討を行ったが漏えいのトリガーとなる問題点はなかった。 (4) 図5 漏えいに至るまでのイベントツリー図 エルボ製造時に偶然亜鉛が短管内表面に付着したまま熱間での曲げ加工を実施したことから亜鉛による低融点金属割れが発生した。これを検査しないまま施行され供用されたためにき裂が配管を貫通・漏えいに至った。 |
経過 |
定格出力にて運転中、原子炉格納容器内の巡視点検中に化学体積制御系等からホウ酸水の漏えいを発見。原子炉を手動停止した。 |
原因 |
(1) 当該エルボの製造過程において、加熱炉よりエルボ製造用の短管を取り出す際作業場内塗装部に存在する亜鉛がカギ棒を介して短管内側に付着した。その後、熱間での曲げ加工時に短管内面に付着した亜鉛による低融点金属割れが発生した。 (2) この状態で工場出荷・現地据え付けが行われ耐圧試験やその後の起動・停止に伴う内圧上昇及び熱膨張による応力サイクル等を受けて割れ先端部での疲労き裂が徐々に進展し貫通・漏えいに至った。 |
対処 |
(1)亜鉛は、異物・不純物管理として熱間加工場での使用を禁止することが重要 (2)低融点金属による割れが発生することの教育が重要 (3)エルボ加工後の内面検査の充実 |
対策 |
(1) 漏えいエルボ部の取り替え (2) 類似エルボ(同時に製造されたエルボ)の点検 |
知識化 |
亜鉛は低融点であることから製品製造時や溶接時に注意を払うこと。 【追補;2010年3月】 本件は製造上の初歩的なミスによる失敗であり、関連するミスの存在が懸念されるため、このようなときには当時の開発・製造プロセスの総点検を行うことが必要である(これを行えば、1999年7月12日の事故は未然に防ぐことができた可能性がある)。 |
後日談 |
【追補;2010年3月】 本件事故から約2年半後の1999年7月12日、化学体積制御系再生熱交換器連絡配管エルボに、高サイクル熱疲労で貫通き裂が発生し一次冷却水が漏洩するという事故が発生した。この原因は、安易な流用設計とされている。詳細は本失敗知識データベースの、「敦賀原子力発電所2号機化学体積制御系再生熱交換器連絡配管からの一次冷却水漏洩」に記載されている。 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、管理不良、作業管理不良、亜鉛使用環境、不注意、注意・用心不足、作業不注意、亜鉛付着、製作、ハード製作、機械・機器の製造、配管エルボ、ステンレス鋼、熱間加工、破損、破壊・損傷、亜鉛脆化割れ、使用、運転・使用、機器・物質の使用、破損、破壊・損傷、疲労、き裂、肉厚貫通、漏洩
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情報源 |
通商産業省資源エネルギー庁日本原子力発電(株)敦賀発電所2号機原子炉格納容器内漏えいに伴う原子炉手動停止について(化学体積制御系配管からの一次冷却水漏えい) 【追補;2010年3月】 日本原子力発電株式会社取締役社長鷲見禎彦 「敦賀発電所2号機一次冷却水漏えい事故に係る再発防止対策の実施について」
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
マルチメディアファイル |
図1.漏えい箇所及び漏えい破面スケッチ
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図2.破壊形態、破壊のメカニズムとプロセスに着目したフォールトツリー図
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図3.設計・製造における不適切・不良に着目したフォールトツリー図
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図4.機器の負荷履歴・環境と材料に着目したフォールトツリー図
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図5.漏えいに至るまでのイベントツリー図
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分野 |
材料
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データ作成者 |
村上 弘良 (日本原子力発電(株))
小林 英男 (東京工業大学)
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