事例名称 |
SUS304縦型熱交換器の鋭敏化と粒界腐食割れ |
代表図 |
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機器 |
縦型熱交換器/伝熱管/SUS304 |
事例概要 |
有機薬品を製造するプラントで生じた排ガスを処理するための、縦型熱交換器伝熱管に生じた問題である。この熱交換器のシェル側 (伝熱管外面) は窒素が主体で微量の硫化物を含んだ高温ガス環境であり、入口の50℃から出口では450℃まで昇温される。SUS304伝熱管に使用開始して約3.5年で、970本のうち60本余りに漏れが確認された。 |
事象 |
損傷した伝熱管を調査した結果、管外面より貫孔していた。粒界腐食割れは、スラッジが堆積していた下管板の近くに集中していた。管の肉厚全面にわたり、粒界に炭化物の析出が見られた。スラッジを純水に溶出させて分析した結果、pH3.8 を示し、溶出した塩素イオン濃度はスラッジ重量に対して2000 ppm, 硫酸イオン濃度は7000 ppmであった。また、電気化学的再活性化率(EPR値) を測定した結果、最大で 44.0% を示し、著しく鋭敏化が進んでいた。 (1)縦型熱交換器のシェル側にタール分がスラッジ化して堆積する。 (2)SUS304伝熱管は、使用温度600~700℃ に加熱されて著しく鋭敏化する。 (3)定常運転時に、塩化物や硫酸塩含みのスラッジが溶融状態となって、伝熱管に粒界腐食割れを生じさせる。 |
原因 |
粒界腐食割れ |
対策 |
(1)固定管板型熱交換器から、洗浄しやすい構造の遊動頭型に変更 (2)材質面から、極低炭素安定型ステンレス鋼 (SUS347系 SUMITOIMO347AP) に変更対策を講じて2年経過した時点では、腐食問題は回避できていることが確認された。 |
知識化 |
使用温度 600~700℃でSUS304ステンレス鋼が鋭敏化することはわかっていた筈である。しかし、腐食性が弱く、十分耐用できる環境であると判断して、SUS304ステンレス鋼を適用したところに甘さがあった。 |
シナリオ |
主シナリオ
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無知、知識不足、思い込み、使用、運転・使用、機器・物質の使用、熱交換器、伝熱管、ステンレス鋼、材質選択の不適切、不良現象、熱流体現象、熱流体の堆積、鋭敏化、破損、減肉、粒界腐食割れ、肉厚貫通、漏洩
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情報源 |
越野一也;ステンレス鋼の高温環境での使用実績と腐食対策、日本材料学会腐食防食部門委員会資料 No.202、 Vol.37、 Part 1Jan. 20, 1998
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マルチメディアファイル |
図1.フォールトツリー図 SUS304縦型熱交換器の鋭敏化と粒界腐食割れ
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図2.イベントツリー図 SUS304縦型熱交換器の鋭敏化と粒界腐食割れ
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分野 |
材料
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データ作成者 |
武川 哲也 (元住友化学(株))
小林 英男 (東京工業大学)
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