失敗事例

事例名称 高温硫化物腐食は直管部で起こりやすいことがある
代表図
機器 石油精製常圧蒸留装置
事例概要 常圧蒸留装置主精留塔から抜き出される重質軽油配管が温度338℃、圧力0.09MPaで運転中、腐食が急に激しくなった。同じ炭素鋼でもエルボは直管部よりも腐食が軽微であった。硫化鉄被膜が部分的に剥離しており、その部位の滑らかな均一減肉が激しい。
事象 腐食部近傍の付着物の分析の結果、Fe、Sが検出され、硫化物が主成分であった。EDXで、強固に固着したスケールからのみSi、Al、Ca、Oが検出された。原油中の全酸価は0.2mg-KOH以下でナフテン酸腐食が問題となる0.5mg-KOHより低い。また、流速は0.6m/s以下である。
経過 エルボに隣接する直管部の方が減肉量が大きい。この原因は、鋼中に含有されるSi量に依存し、エルボではSi含有量の高い材料が使用されていたために減肉が小さかった。
原因 高温硫化物腐食による減肉
対策 炭素鋼中のSi含有量が高温硫化物腐食の耐食性に有効である。高温硫化物腐食環境が苛酷になった場合、腐食速度が増大するのはまず直管部である。このために流速の影響を受けやすいエルボだけでなく直管部も検査する必要がある。
知識化 高温硫化物腐食は流速の影響を受けやすいエルボだけでなく、隣接の直管部も検査する対象とすべきである。
シナリオ
主シナリオ 無知、知識不足、経験不足、誤判断、狭い視野、未経験・不慣れ、製作、ハード製作、直管部、Si量、破損、減肉、高温硫化物腐食
情報源 鳥羽和宏:石油学会第32回装置研究討論会、p55(2001)
マルチメディアファイル 図2.常圧蒸留装置主蒸留塔周りの概略フロー
図3.腐食部サンプル半割
図4.腐食部の拡大写真
図5.Si含有量と腐食率の相関
分野 材料
データ作成者 橋本 哲之祐 (元千代田化工建設(株))
小林 英男 (東京工業大学)