事例名称 |
サニタリー仕様の乳製品貯槽に生じた外面応力腐食割れ |
代表図 |
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機器 |
貯槽/缶体外面(保温材側)/SUS304/内容量12KL |
事例概要 |
内外面バフ仕上げの標記貯槽に使用開始後3.5年で割れを生じた。割れは底部鏡板のスピニング加工部およびその溶接部に多かったが母材部にも不規則に生じていた。この貯槽はガラスウールで保温されており、その外面は同じ材質の薄板のカバーが溶接され完全に密閉されていた。過去2回、このカバーの溶接線に施工不良による切り欠きを起点とし、殺菌時の繰り返し熱応力による疲労割れを生じ溶接補修されていた。 |
事象 |
(1)使用条件:Cl- 1730ppm、pH4の発酵乳製品、常温。1回/日、15分間、0.18MPaの蒸気殺菌。 (2)外観観察:槽内面には特別の腐食は見られない。保温カバーを外し点検、外面からの割れを発見。保温材下部に約20Lの水が溜まっていることを発見。 (3)浸透探傷:外面の割れを確認。 (4)保温材側に溜まっていた水を分析:Cl- 約500ppmを検出。 (5)以上より外面SCCと結論。 原因:保温カバー上部溶接線が割れたとき洗浄水が保温材側に入り込み、密閉構造のため保温材側下部に溜まった。蒸気殺菌時の高温で溜まった洗浄水中のCl-が濃縮、蓄積し、割れに至った。保温カバーの割れは溶接ビードの溶け込み不足、およびサニタリー加工の際のビードカットとバフ研磨による肉厚不足が割れ貫通を早めた。 |
原因 |
応力腐食割れ |
対策 |
保温材カバーの溶接施工管理を強化し完全溶け込みを確保し、保温材側の欠陥発生を防ぐ。また万一の場合に備え、原因となった保温材側に水が溜まらないよう下部に水抜きの孔をあけた。これは同時に保温材側の密閉状態を開放し、殺菌時に起こる繰り返し膨張、収縮による熱応力の発生を防止する結果も生む。 |
知識化 |
材料選定および施工管理においてプロセス側のみではなく外面側の環境条件をも読みこむことが重要。 |
シナリオ |
主シナリオ
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手順の不遵守、手順無視、施工手順無視、製作、ハード製作、機械・機器の製作、保温材カバー、溶接開先加工不備、溶けこみ不足、外面グラインダー研削、肉厚不足、破損、破壊・損傷、疲労、保温材へ洗浄水洩れこみ、高温加熱殺菌操作、塩化物濃縮、破損、破壊・損傷、応力腐食割れ、ステンレス鋼、缶体漏洩
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情報源 |
北村義治、鈴木紹夫:サニタリー仕様の乳製品貯槽に生じた外面応力腐食割れ、「防蝕技術」、p.202, 地人書館(1997)
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マルチメディアファイル |
図1.フォールトツリー図 サニタリー仕様の乳製品貯槽に生じた外面応力腐食割れ
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図2.イベントツリー図 サニタリー仕様の乳製品貯槽に生じた外面応力腐食割れ
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分野 |
材料
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データ作成者 |
鈴木 紹夫 (すずき技術士事務所)
小林 英男 (東京工業大学)
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