失敗事例

事例名称 接着剤の熱分解によるプレート熱交換器のすきま腐食と応力腐食割れ
代表図
機器 プレート熱交換器/ガスケット溝部/SUS304
事例概要 植物油を0.2MPa蒸気で90℃まで加熱する上記熱交換器のガスケット溝部に使用開始後10年ですきま腐食が発生、これを起点とするSCCにより漏れが生じた。1年前の点検では全く異常がなかった。
事象 腐食は蒸気側、油側の別なく、ガスケット溝の接着剤塗布側に限られ、単にガスケットと接触する反対側は全く異常がなかった。このため接着剤が不適切だったことが疑われ調査した結果、1年前の点検時、メーカー指定のニトリルゴム系の接着剤が手元になく、手近かにあった塩化ゴム系の汎用接着剤を使用したことが判明した。
接着剤中の塩化ゴムが熱分解により塩化物イオンが生成し、これと加熱時の高温条件からすきま腐食が発生、これを起点として締めつけによる応力により応力腐食割れが生じ、割れた。
原因 すきま腐食
対策 プレート熱交換器のガスケット用接着剤は組み立て中の仮止め的役割しか果たしていないので軽視されがちである。プレート熱交換器のメンテナンス時のマニュアルを見なおし、接着剤が材料腐食へ大きな影響を及ぼすことを明記し注意を喚起した。
知識化 材料が直面する環境条件として、運転時のみならず非定常のあらゆる条件を読みこむことの重要性が理解された。
シナリオ
主シナリオ 無知、知識不足、過去情報不足、使用、保守・修理、部品交換、ガスケット用接着剤、塩化ゴム系汎用接着剤の流用、使用、運転・使用、高温流体、不良現象、化学現象、接着剤劣化、塩化物イオン生成、破損、破壊・損傷、すきま腐食、応力腐食割れ
情報源 北村義治、鈴木紹夫:接着剤の熱分解によるプレート熱交換器のすきま腐食、「防蝕技術」、p205、地人書館(1997)
マルチメディアファイル 図1.フォールトツリー図 接着剤の熱分解によるプレート熱交換器のすきま腐食と応力腐食割れ
図2.イベントツリー図 接着剤の熱分解によるプレート熱交換器のすきま腐食と応力腐食割れ
備考 プレート熱交換器のガスケットを固定する新しい方法として、ガスケット溝の形状をはめ込み型とし機械的に固定して接着剤を使用しない方法も開発されている。
分野 材料
データ作成者 鈴木 紹夫 (すずき技術士事務所)
小林 英男 (東京工業大学)