事例名称 |
塩化ビニルモノマ製造装置事故 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1973年10月28日 |
事例発生地 |
新潟県直江津市 |
事例発生場所 |
信越化学(株)直江津工場 |
機器 |
ストレーナ /バルブ /材料/本体:鋳鉄、弁座:SUS420J1,弁体:SUS420J2/寸法3インチ |
事例概要 |
モノマー用のストレーナの清掃作業中、入り口側の3インチバルブから粗モノマーが漏れるので、これを止めようとしてバルブを無理に閉めようとしたところバルブのボンネットが破損、約3.5tの粗モノマーが流出し、不幸にも流出ガスが爆轟をおこして工場の大半を焼失するとともに周辺の地域住民に大変な恐怖感を与えた。 |
事象 |
破損したバルブの観察結果、弁体側のシール面に微細なアバタ状の腐食とともに深さ約0.3mmおよび0.8mmの孔食が生成していて、特に後者はシール面の全幅を貫通する幅1.5~2.5mmの溝を生成していた。弁座側のシール面にも深さ0.8mmの孔食が見られ、これらによりバルブを閉めても漏れが止らないことがわかった。塩ビモノマーの原液は多少とも水分が共存すると加水分解により微量の塩酸が生成し、マルテンサイト系のステンレス鋼に孔食を発生させることが確認された。 |
経過 |
塩ビモノマーに含まれる微量の水分によって加水分解反応が起こり微量の塩酸が生成、これによりバルブのシール面にすきま腐食的に孔食が発生、シール面の全幅を貫通する溝を生成して漏れに至った。これを止めようとして不用意に増し締めしバルブを破壊してしまった。 |
原因 |
孔食 |
対策 |
(1)バルブのシール面の材質を耐塩酸性にすぐれる含Moの高級ステンレス鋼に変更する。 (2)メンテナンス基準を見なおし、バルブの機能不全時の増し締めなど安易な対症療法を排し、その原因にさかのぼって適切に対応することを徹底させる。 |
知識化 |
バルブのシール不良のようなよく見られる不具合が重大事故に継がることを認識する。 |
シナリオ |
主シナリオ
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誤判断、状況に対する誤判断、バルブ洩れ原因を締付け不足と誤判断、使用、保守・修理、バルブ増し締め、工具による過大な締付け力負荷(推定)、破損、破壊・損傷、バルブボンネット破損、粗モノマー大量流出、二次災害、環境破壊、流出ガス爆轟、工場焼失、周辺住民恐怖感
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情報源 |
化学工業の腐食災害、防錆管理、井上威恭、’74-6、p.9.
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備考 |
WLP関連教材 ・プラント機器と安全-運転管理/配管とバルブの安全 |
分野 |
材料
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データ作成者 |
鈴木 紹夫 (すずき技術士事務所)
小林 英男 (東京工業大学)
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