事例名称 |
バイオプラント培養槽のサンプリングノズル付け根の割れ損傷 |
代表図 |
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機器 |
SUS316製培養槽 |
事例概要 |
バイオプラント培養槽のサンプリングノズル溶接部に割れ損傷が発生した。数基ある槽について超音波検査を実施したところ、他にも同じ位置に割れ損傷が生じていた槽があった。 |
事象 |
き裂部破面の調査により、割れが疲労破壊であること、ストライエーション〈縞模様〉のカウントにより応力繰返し数が数100回程度の低サイクル疲労であることを突きとめた。さらに、疲労破壊をもたらした応力源を明らかにするために、実機にストレンゲージを貼り、実操業サイクルを与え、その挙動を調査した。その結果、運転サイクルで生ずる熱応力が意外に高いこと〈平均85kg/mm2〉がわかった。この応力値で求めた槽材料の低サイクル繰返し数は、実機の熱サイクル数〈600回〉および破面観察から求めた応力繰返し数〈320~650回〉と合致することが確かめられた。 |
経過 |
培養工程の滅菌〈加熱〉-冷却―培養〈保温〉の運転サイクルで繰返されて生じる熱応力(熱歪)が、溶接構造の不備と重畳して、予想外に大きな応力〈歪〉をノズル取り付け部に生じさせていた。この応力繰返し作用の結果、ノズル取り付け部に低サイクル疲労を生じさせた。 |
原因 |
培養工程の運転サイクルで繰返し生じる熱応力が、ノズル取付け溶接部に作用して、発生した低サイクル疲労破壊である。 |
対処 |
ノズル付け根部に生ずる熱応力を軽減させる、構造的改善を検討した。 |
対策 |
培養工程でノズル付け根に大きな熱応力を発生させていた保温材外装板とノズルとの溶接固定を止めて、ルーズ化する構造設計改造を行った。それ以降割れの発生は根絶した。 |
知識化 |
運転サイクルで生ずる熱応力は、予想外に大きいことがある。溶接部はとくに形状的にも、応力感受性が高い。 |
後日談 |
この対策後、このプラントはきわめて好調な高負荷運転を続ける活況期を迎えた。 |
シナリオ |
主シナリオ
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無知、知識不足、過去情報不足、使用、運転・使用、過負荷、温度サイクル、ステンレス鋼、ノズル、破損、破壊・損傷、熱疲労、破壊・破断
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情報源 |
大久保勝夫:日本材料学会腐食防食部門委員会資料、No.195, Vol.35, Part 6 (1996)
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分野 |
材料
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データ作成者 |
武川 哲也 (元住友化学(株))
小林 英男 (東京工業大学)
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