事例名称 |
水蒸気改質炉触媒反応管のクリープ損傷 |
代表図 |
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機器 |
水蒸気改質炉触媒反応管 |
事例概要 |
初期のアンモニアプラントの水蒸気改質炉触媒反応管に、内面鋳肌のままで用いていたHK40 遠心鋳造管が、9700時間経過の時点で、内面欠陥を起点としてクリープ損傷により軸方向の貫通割れを生じた。 |
事象 |
貫通割れを生じた反応管(外径125mm,肉厚21mm, 0.4C-25Cr-20Ni)は、直径方向対称の位置に深い割れを生じており、10mm近い管の偏円度(外径偏差)が認められた。ミクロ組織観察では、割れ周辺に炭化物の粗大化と浸炭が認められたが、それ以外は微細炭化物が一様に分布する健全な組織を示し、ミクロボイドは存在しなかった。貫通割れは、鋳造欠陥を起点としていた。起点の内面鋳造欠陥深さと偏円度との間には相関性が認められた。 |
経過 |
直径方向対称の位置に深い鋳造欠陥を伴うHK40 遠心鋳造管を含っむものが使用されており、そのうち欠陥の大きな管が、内面出口温度790 ℃、内圧34 kg/cm2 で9700 hr 経過した時点で欠陥起点のクリープ破壊により、貫通割れを生じた。内圧による応力は1 kg/mm2 で応力支配型のクリープ損傷であった。 |
原因 |
内面鋳造欠陥が深くなければ、クリープ損傷は生じない。深い内面鋳造欠陥が、貫通割れの原因である。 |
対策 |
内面鋳造欠陥深さと管の偏円度(外径偏差)の関係を求め、偏円度の測定により 5 mm 以上を抜管更新した。多少の鋳造欠陥の存在はクリープ強度に影響せず、62,000 hr 経過で寿命と判断して、全面更新した。更新に際しては、強度変化と対応させたミクロ組織変化(二次炭化物の分布状況、一次炭化物周辺の無析出物域(deplet zone)、一次炭化物の塊状化、ミクロボイドの出現状況など)を判断基準とした。 |
知識化 |
受入検査不十分で、深い内面鋳造欠陥を有したままの粗悪管を使用に供したことで、欠陥起点のクリープ破壊をもたらした。特に、はじめて使用する材質については、念入りな材質確性検査が必要である。 |
よもやま話 |
改質炉反応管のクリープ損傷に関する事例は、枚挙にいとまがないほど公表されている。また、有限寿命で使用に供されている関係上、寿命予測に関する方法も数多く報告されている。ここでは、異常な損傷の一例を紹介した。 |
シナリオ |
主シナリオ
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無知、知識不足、過去情報不足、手順の不遵守、手順無視、受入検査不遵守、使用、運転・使用、水蒸気改質炉触媒反応管、HK40遠心鋳造管、内面鋳造欠陥、破損、破壊・損傷、クリープ、貫通割れ
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情報源 |
(1)武川哲也、石丸裕:化学工学協会、「高温反応系における機器と配管の材料と保守」に関するシンポジウム要旨集、5,23 (1980)
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分野 |
材料
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データ作成者 |
武川 哲也 (元住友化学(株))
小林 英男 (東京工業大学)
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