失敗事例

事例名称 ナフサ搬送ポンプインペラの固形スラリーによるエロージョン・コロージョン損傷
代表図
機器 ナフサ搬送ポンプ、口径Φ150
事例概要 スラリーを含有する高温ナフサを搬送する中型ポンプにおいて、炭素鋼製インペラが2ヶ月間と言う短期間にインペラ羽根がなくなるほど激しく減肉した(図2)。減肉速度は18mm/年に相当する。ポンプの炭素鋼製軸材も同様に激しく減肉した。しかし、スラリーが強く接触しないポンプ構造なので、その減肉速度は2mm/年以下である。
事象 (1)インペラ付着スケールを分析するとFe、S, Cl, NH4, CNが検出された。その結果、取扱いナフサの腐食性は強いと判断される。
(2)また、使用液温は160℃と高い点も腐食速度が増大した要因と推定される。
(3)本ナフサ中には2g/L程度のスラリーが含有されている。
経過 (1)一般に、ガソリン、重油などの精製された鉱物油中では、炭素鋼の腐食速度は極めて小さい。したがって、従来より炭素鋼製ポンプが問題なく長期間使用されてきた。
(2)しかし、本使用環境中には上記の腐食性成分が存在するとともに、大量のスラリーが含有されている。その結果、固形物が高速で接触するインペラに激しいエロージョン・コロージョン損傷が生じたものと思われる。
原因 固形物が高速で接触するインペラに、炭素鋼を使用したことが、エロージョン・コロージョン損傷が生じた原因である。
対処 取扱い液が強腐食性で、かつ固形物を含む場合には、ポンプインペラ材料として炭素鋼または鋳鉄に代えて、耐食性および耐エロージョン性に優れるステンレス鋼を使用する。
知識化 取扱い液の腐食性が不明な場合の腐食速度は、液組成とともに含有固形物についても配慮が必要である。
シナリオ
主シナリオ 無知、知識不足、経験不足、調査・検討の不足、環境調査不足、使用環境調査不足、材料選定の誤り、製作、ハード製作、機械・機器の製造、ナフサ搬送ポンプインペラ、炭素鋼、不良現象、熱流体現象、流体現象、固形スラリーの含有、破損、減肉、エロージョン・コロージョン
情報源 (1)尾崎敏範:事例で探すステンレス鋼選び、工業調査会、p.95(2004)
マルチメディアファイル 図2.スラリーを含有する高温ナフサ中における炭素鋼製インペラの腐食減肉状況
分野 材料
データ作成者 尾崎 敏範 (元(株)日立製作所)
小林 英男 (東京工業大学)