事例名称 |
離陸上昇中のDC-10のエンジン脱落による墜落事故 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1979年05月25日 |
事例発生地 |
シカゴ、オヘア空港 |
事例発生場所 |
アメリカン航空DC-10型機 |
事例概要 |
シカゴ発ロスアンジェルス行きアメリカン航空DC-10型機が、離陸後2分足らずで第1エンジンが脱落したため制御困難となり、姿勢を維持できず空港近くに墜落し乗員乗客271名全員死亡した。 |
事象 |
航空機が離陸上昇時のクリティカルな時間帯に第1エンジンがパイロン部分(エンジン懸下装置)を含め脱落し、それに伴ってスラットの一部が引き込まれ、空力特性が左右非対称となりバランスを失って墜落したものであるが、エンジンの脱落は取付ボルトの疲労破壊によるものであった。同型機のすべてのエンジン取付部を検査した結果、同様のき裂を有する機体が何機か報告されたが、それらは共通して特定の整備会社によってエンジン取外し取付けが行われていたものであった。 |
経過 |
エンジン着脱作業を調べた結果、作業手順として先ずエンジンを取り外し、その後パイロンを外すことが指示されていたにもかかわらず、フォークリフトを利用してエンジンを取付けたままパイロンを外すというエンジン整備マニュアルを無視した手抜き作業を行っていたり、フォークリフトで作業を行っている最中に長時間現場を離れるなどの杜撰な作業体制であったことがわかった。その間に油圧が下がりリフトが下がってエンジン支持部に設計以上の大きなモーメントが作用したりフォークリフトで突き上げて主翼金具を傷つけるなどの粗雑さも認められた。 |
原因 |
図1は当該整備会社が整備した機体に認められたパイロン後方隔壁の水平フランジ部のき裂について示したものである。整備マニュアルを遵守しなかったことによる人為的ミスが事故の原因であった。 |
対策 |
エンジンオーバーホール・整備に際しては、マニュアル遵守の徹底 |
知識化 |
(1) 整備員教育の徹底 (2) 企業組織の安全モラルの啓発 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、管理不良、作業管理不良、手順の不遵守、手順無視、操作手順無視、不注意、注意・用心不足、作業者不注意、取扱不適、不良行為、倫理道徳違反、利潤追求優先、定常操作、手順不遵守、エンジン整備、定常動作、不注意動作、作業の中断、破損、変形、塑性変形、エンジンのパイロン、破損、破壊・損傷、疲労、パイロンの破壊、破損、大規模破損、エンジン脱落、墜落、組織の損失、社会的損失、信用失墜
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死者数 |
271 |
負傷者数 |
0 |
マルチメディアファイル |
図1.パイロン後部隔壁の大変形による破損部分
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図2.離陸上昇中のDC-10のエンジン脱落による墜落事故イベントツリー図
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図3.離陸上昇中のDC-10のエンジン脱落による墜落事故フォールトツリー図
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分野 |
材料
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データ作成者 |
寺田 博之 ((財)航空宇宙技術振興財団)
小林 英男 (東京工業大学)
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