事例名称 |
ユナイテッド航空DC-10型機のエンジンディスク破壊に伴うスーゲートウェイ空港へのクラッシュランディング事故 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1989年07月19日 |
事例発生地 |
アイオワ州スーシティ付近 |
事例発生場所 |
ユナイテッド航空DC-10型機第2エンジン第1段ファンディスク |
事例概要 |
ステープルトン発シカゴ経由フィラデルフィア行きのユナイテッド航空のDC-10がアイオワ州スーシティ近くを巡航中、尾部第2エンジンの第一段ファンディスクが破壊して油圧系がすべて不作動となったため、スーゲートウェイ空港に緊急着陸を試みたが滑走路上にクラッシュランディングし炎上したため乗員乗客296名のうち111名が死亡した。(飛行中の航空機が油圧系統の破壊により制御不能に陥った点においては1985年の日航機事故とその後の状況は酷似していたが、乗客として搭乗していた訓練査察官の資格を有するパイロットの助力が得られたことや、故障の状態を的確に把握して適切な対応が行われたことなどの幸運も手伝って日航機の生存率が0.8%程度であったのに対して、本例では62.5%の高い生存率が得られている。) |
事象 |
エンジン破壊現場近くのトウモロコシ畑から回収された第2エンジンの検証の結果、第一段ファンディスクがシャフトと接しているボア部にディスク製造過程における鍛造時の硬いアルファチタン介在物から発生した疲労き裂の進展によって破壊したものであることが明らかになった。鍛造欠陥はその後ショットピーニング加工によってキャビティ(空隙)に発展しき裂へと成長していったものであった。 |
経過 |
ファンディスクはGeneral Electric社で1972年に製造後、41,009時間、15,503回の飛行サイクルを経験していた。図1は破壊したCF-6エンジンファンディスクを示したものである。 ディスクの破断面には以前の蛍光探傷法で検査した際に用いられた浸透液によると見られる変色した領域が長さ12.1mmにわたって認められた。き裂の発生点及び進展して行った様子を図2に示した。 事故の直前の探傷検査は14,743飛行サイクル(事故の760サイクル前:1988年2月)においてユナイテッド航空によって実施されたものであるが、疲労き裂が見逃されて事故に至った。 |
原因 |
・製品の完成時にマクロエッチング検査をしていれば介在物から発生したキャビティ(空隙)は検出されていた可能性が高い(検査のタイミングの問題)。 ・1988年2月の検査で見落とされた可能性については、 (1) ディスクをワイヤで吊り上げて検査した際に欠陥がワイヤの陰に入った。(検査作業の不注意・手抜き) (2) 普段欠陥が発見される可能性がある場所(ブレードの埋込部など)ではなかったので見逃した。(馴れ・予断) (3) 検査時における浸透剤・現像剤などの適用不良のために欠陥と認知しなかった。(検査の技量不足) |
対策 |
欠陥検査における二重チェック体制の確立 |
知識化 |
検査におけるヒューマンエラーの排除の手法 |
シナリオ |
主シナリオ
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不注意、注意・用心不足、作業者注意不足、組織運営不良、管理不良、作業管理不良、誤対応行為、自己保身、看過、使用、保守・修理、検査、欠陥検出不良、破損、破壊・損傷、疲労、ディスク破壊、破損、大規模破損、油圧制御系破壊、クラッシュランディング
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死者数 |
111 |
マルチメディアファイル |
図1.破壊したCF-6エンジンの第一段ファンディスク
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図2.破壊の起点となったボア部の鍛造欠陥
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図3.ユナイテッド航空DC-10型機のエンジンディスク破壊に伴うスーゲートウェイ空港へのクラッシュランディング事故イベントツリー図
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図4.ユナイテッド航空DC-10型機のエンジンディスク破壊に伴うスーゲートウェイ空港へのクラッシュランディング事故フォールトツリー図
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分野 |
材料
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データ作成者 |
寺田 博之 ((財)航空宇宙技術振興財団)
小林 英男 (東京工業大学)
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