事例名称 |
船尾構造物の溶接部強度不足による落下事故 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1986年09月 |
事例発生場所 |
造船工場 |
機器 |
船尾構造物溶接用受けピース |
事例概要 |
船体の後端部に船尾構造物とラダーホーンが一体となったものを溶接する作業で,その位置を固定し,重量をサポートするためにラダーホーン部の両側に溶接した一対の受けピースが,その重さ及び偏心荷重に耐えられずに溶接部が破壊し構造物が転落した. |
事象 |
船尾構造物とラダーホーンが一体となったもの(事故後の計測で質量:180t)を船体後部に溶接する作業で,溶接が終了するまでの位置決めのためにラダーホーン(厚さ(幅):約1000mm,奥行(前後方向):約1500mmで,船尾構造物から下へ約5000mm延びた部分)の両側(左舷側及び右舷側)に受けピース(厚さ:30mm,縦:300mmの鋼鈑製)が溶接されており,この受けピースをパイプサポート(油圧シリンダー)で荷重を支える工法である.300tガントリークレーンで船尾構造物をつって受けピースの部分をパイプサポートにのせ,まず,船尾構造物と船体との溶接部を仮止め溶接(4箇所)を行ったのち,玉掛けワイヤロープを緩めた瞬間,最初に右舷側の受けピースの溶接部が破壊して構造物が転落した. |
原因 |
玉掛けワイヤロープを緩める前に仮止め溶接を行っているが,構造物の重量を受けるほどのものではないため,船尾構造物の全重量が受けピースにかかったものと仮定し,両側の受けピースに均等に荷重がかかったとして計算しても母材強度を上回る応力となり,受けピースの強度評価が十分でなかったことが直接原因である.さらに,右舷側受けピースの溶接脚長が図面指示の約70%(図指:15mmに対して,10.8mm)であったこと,左右の受けピースの間隔が狭いため,船尾構造物の僅かな傾斜及び重心の狂いが,左右の荷重分担に大きな影響を持つことが重なったと考えることができる. |
対策 |
・ 図体が大きい構造物を支える工法を取る場合には,幅の広い部分で支える作業標準とする. ・ 治具等の計画に際して,個々の作業について個別に強度計算を行うこと. |
シナリオ |
主シナリオ
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調査・検討の不足、事前検討不足、作業・工程検討不足、受けピース溶接部応力過大、不注意、理解不足、リスク認識不足、偏心荷重、計画・設計、計画不良、治具の設計不良、溶接部強度不足、破損、破壊・損傷、破壊・破断、受けピース溶接部破壊、身体的被害、死亡、事故死、身体的被害、負傷、重傷
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情報源 |
産業安全研究所
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死者数 |
3 |
分野 |
材料
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データ作成者 |
河島 邦寿 (元(社)日本クレーン協会)
小林 英男 (東京工業大学)
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