事例名称 |
燃料用重油タンク配管フレキシブルホースの破損による重油の漏洩 |
代表図 |
|
事例発生日付 |
1989年03月14日 |
事例発生地 |
神奈川県 川崎市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
川崎で重油払い出し配管から重油が洩れたとの119番通報があった。消防署員が駆けつけたところ、当該事業所のボイラー用の燃料配管の払い出し配管元弁に繋がるフレキシブルホースが破損し、重油が漏洩し、さらにその一部が海上に流出した。原因はフレキシブルホースの選定が悪く長すぎるものを使用し、さらにその取り付けも正対していないので、部分的に大きな引っ張り応力が掛かり、破断したものと考えられた。また、海上への流出はタンクヤード内の側溝にひび割れがあったことから、そこから地中に洩れたものと推定された。 |
事象 |
スチームボイラーの燃料用重油の供給配管のタンクヤード内のフレキシブルホースが破損し、重油が漏洩した。漏洩した重油はさらに運河に流れ出した。図2参照 |
プロセス |
使用 |
物質 |
重油(fuel oil) |
事故の種類 |
漏洩 |
経過 |
1989年3月12日21:00 スチームボイラーを稼動させ重油タンクから燃料油の送油を開始した。 3月13日 送油タンクの切り替えを行った。 3月14日09:00 構内巡回実施中に重油タンク払い出し配管フレキシブルホース付近から重油が漏洩しているのを発見した。 さらに出動した消防署員が現場調査の結果、重油が排水口より運河に流出しているのを発見した。 |
原因 |
1.フレキシブルホースの取り付け方が正しくなかった。取り付けフランジの面間距離1,385mmのところに1,690mmのフレキシブルホースが取り付けられ、さらに取り付け軸方向に直線でなく、傾いて取り付けられていた。そのため金具溶接部に何らかの応力が集中し、ブレードの破損とベローズにせん断応力が発生し、亀裂開口した。 2.流出した重油は亀裂の入ったタンクヤード内の側溝から滲み出し、地中を通って雨水排水溝に入り、運河に流れだしたものと推定され た。 |
対処 |
重油の送油を停止した。運河にオイルフェンスの展張を行い、吸着マットおよび油処理剤により流出油の処理を行った。 |
対策 |
1.フレキシブルホースの取り付け方法の見直しと、他タンク周辺配管への水平展開を行う。 2.防油堤から運河への重油の流出については必要な対策をとる。 |
知識化 |
1.大は小を兼ねない。大きすぎる部品などの選択はバランスを逸し、失敗に継がることがままある。 2.1回の失敗だけで、そのまま事故に直結するとは限らない。その後のフォローを適切に行えれば、事故を防げる。この例では、間違った設計施工により、設備が一応出来上がっても、普段の運転管理、設備管理で十分な注意力と 正しい設備のあり方(この例の場合、適正なホースの長さと取付け方法)を知っていれば、是正措置を講じて最終的な失敗を起こさないようにできた。 |
背景 |
1.フランジの面間距離に応じた適正な長さのホースを選択しなかった設計ミスと、取り付けフランジが正対するようには取り付けられていなかった工事上のミスが表面的な原因である。そのようなミスを生じさせた技術陣のどこに問題があったか、また、そのような設備を預かって運転していた運転側の管理者や監督者が、その危険に何故気がつかなかったか、改善をしなかったか。そのあたりの管理のあり方が基本的な問題であろう。 2.通常ならフレキシブルホースの選定、取り付けといった単純な作業でも、設計者や施工者の個人の判断に任せると、誤りを起こすことがある。そのためにもスタンダードがあり、守る必要がある。 3.運河に流出したのは、タンクヤード内に撤去された配管用の側溝が残っていて、そのコンクリートに亀裂があったためである。防油堤内は全てコンクリート打ちされていたが、そこだけを見落としたか、対応しなかったかの何れかと考えられ、組織の問題か運転担当者の技能低下かと推定できる。 |
よもやま話 |
☆ タンクヤード内の側溝に割れがあることを見落としたことは、組織の問題か担当者の技能低下ではないかと事故基本要因では指摘した。実はタンクヤードの側溝の割れは一目見て分かるこの例は珍しく、意外に発見は難しい。晴天時は乾いており、洩れから割れは発見できない。雨天で雨水が溜まったときに、その側溝内の水深を何度も注意深く点検しない限り、先ず発見は無理だろう。 ☆ 危険物タンクの防油堤内は法的にはコンクリートで覆う必要はない。この例の場合、割れ目から洩れた油が地中の埋設物に沿って流れたか、水の通り道ができていたのであろう。なお、普通防油堤内には地中埋設物は作らない。 |
データベース登録の 動機 |
運転担当にも明らかに分かる設計、施工のミスを見落とし、改善を怠たり、事故に至った例。 |
シナリオ |
主シナリオ
|
組織運営不良、運営の硬直化、教育・訓練不足、無知、知識不足、勉強・経験ともに不足、価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、計画・設計、計画不良、設計不良、破損、破壊・損傷、亀裂、二次災害、損壊、漏洩、二次災害、環境破壊、海上汚染
|
|
情報源 |
川崎市消防局予防部保安課、川崎市コンビナート安全対策委員会資料(1989)
|
物的被害 |
フレキシブルホース破損 |
被害金額 |
17万9200円(川崎市コンビナート安全対策委員会資料) |
社会への影響 |
運河へ流出 |
マルチメディアファイル |
図2.破断部写真
|
分野 |
化学物質・プラント
|
データ作成者 |
小林 光夫 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻、オフィスK)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
|