事例名称 |
工場内の簡易ガソリンタンクからのガソリンの溢流 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1995年09月06日 |
事例発生地 |
神奈川県 川崎市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
危険物自家用給油取扱所の計量器付の簡易タンクの不適切な在槽管理により、ドラム缶からガソリンを補充中にタンク通気管からオーバーフローした。 |
事象 |
危険物自家用給油取扱所の簡易ガソリンタンク(計量器付き)にドラム缶)からガソリンを補充していたところ通気口から溢流した。 |
プロセス |
使用 |
物質 |
ガソリン(gasoline) |
事故の種類 |
漏洩 |
経過 |
1995年9月5日 簡易タンクの在槽を管理している協力会社従業員が簡易タンク3基のうち2基が空の連絡を受け、翌日補充する手続き(充填依頼書の作成)を取った。 9月6日朝 別の協力会社の従業員が補充作業の指示を受け、ドラム缶4本 800Lのガソリンを準備し、タンク2基への補充を開始した。一方のタンクにドラム缶2本400Lを補充後、もう一方のタンクにほぼ400Lを補充し終えそうなところで、通気口からオーバーフローした。 |
原因 |
タンク在槽を最終確認せずに補充を発注し、さらに、補充の作業者が液面を確認せずに補充したのでオーバーフローした。図2参照 |
対処 |
補充用のポンプを止め、洩れた油を吸着シートで拭き取った。 |
対策 |
1.充填依頼書の内容、充填量の規定を変更した。 2.補充作業中は液面計を監視し、400Lに到達したら、補充作業を中止する。 3.作業者、保安監督者に作業実施時の義務、責務等の保安教育を実施する。 |
知識化 |
1.帯で管理するものは注意を要する。その帯の中でも、上端と下端さらに中間部分では意味が異なる場合がある。この事故の場合のFULL帯に例をとれば、最下端は安全容量一杯と考えられ、最上端はまさにタンクの物理的限界と考えられる。 2.工場の中心、中核的な装置に比べ、周辺部の簡易な装置には注意が行き届きにくい。大型の工場から見れば僅かと考えられる、数L、数十Lの量でも事故の可能性は同じである。設備が小さいだけに安全装置など不十分であることが多い。要注意である。 |
背景 |
1.作業指示の不適切さがあった。。補充量が常に400Lであるのは適切ではない。図2の液面計の指示を見るとEMPTYおよびFULL表示とも巾があり、その最上端、最下端から判断すると300L強の補充しかできない。FULLの最下端の意味がはっきりしていないが、安全容量の限界と考えればこれ以上のレベルまで補充すべきではなかった。 2.設備面では、危険を知らせる、あるいは未然に防止する装備がない。人間の注意力だけを頼んでいる設備である。 3.人的な面では、教育あるいはマニュアル面で不備があった可能性がある。液面がEMPTY帯(ゾーン)のどの位置まで下がったら、発注する・補充する、またその時の補充量をどう決めるか等明確に規定されていなかった可能性がある。 |
よもやま話 |
大型工場の周辺装置で簡易なものは、協力会社に管理・運営とも委託しているケースが多いと考えられる。一般論であるが、このような協力会社あるいはそこの従業員の技術レベルは、委託側の工場あるいは従業員に比べ低いことが多い。委託した側の指示に従って、受託側は作業を行っている。装置の持っている意味、能力、安全設備、作業方法など委託側が十分な情報を与え、時には訓練教育を受託側管理者とともに行う義務があるだろう。 |
データベース登録の 動機 |
簡易型タンクでも危険物施設で管理の基準は同じでなければならない例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、無知、知識不足、勉学不足、組織運営不良、運営の硬直化、教育・訓練不足、計画・設計、計画不良、設計不良、不良現象、機械現象、タンク溢流
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情報源 |
川崎市消防局予防部保安課、川崎市コンビナート安全対策委員会資料(1995)
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物的被害 |
ガソリン約0.2L |
マルチメディアファイル |
図2.タンク構造図
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
小林 光夫 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻、オフィスK)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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